複雑・ファジー小説

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.62 )
日時: 2017/01/09 13:47
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

「以下の理由により、俺は死にたいんだ……。まあ、実際死ぬ事が出来ないからどうしようもないけど……」

俺は、自分の能力を、陸田と土田に話した。

土田は話す。

「へぇ〜。あり?陸田さん、何、泣いているんすか?気持ち悪いっすよ〜!」

泣きながら陸田は話す。

「いや……。五十嵐君。君は何か困っている事はあるか?力になりたいんだ!」

困っている事は死ねない事だが……。とりあえず、陸田に話しかける。

「え〜と……。困っている事は、死に場所を何処にするか、ですかね……」

泣きながら陸田は話す。

「質問を変えよう。生きる為に欠かせない衣食住で困った事は無いか?住む所が無いとか、飯もろくに食えてないとか。学費が払えないとか」

生きる為?いやいや、俺は死のうとしているんだ。そう、死のうとしているはずなんだ……。

泣いている陸田は続けて話す。

「私は、君を救いたいんだ。困った事があるなら言ってくれ。住む所を提供してあげるし、飯も、提供してあげる。学費も私が全額負担してあげる!さあ、私を信じて共に生きようじゃないか!だって、信じる者は救われるのだから!」

俺は、陸田さんの話を聞く事にした。だが、信用している訳ではなく、俺は陸田さんにお世話される気も無い。
陸田さんの話には、何か裏があると思う。

でも、もし陸田さんが俺の不運等を受け入れる人なら……生きる希望が生まれるかもしれない。

その涙は偽りなのか、真実なのか……。

土田さんが話す。

「まあ、生きるのが地獄と思うか天国と思うかは、自分次第っすからね。それじゃ、家に帰って寝ま〜す!」

土田さんは喫茶店を後にした。

俺は陸田さんに問いかける。

「それで、確か、貴方がしてくれるんですか?本当に……学費全額負担、食事の提供、住む所の提供等」

陸田さんは話す。

「ああ、勿論だ。学費はこの喫茶店でバイトで働けば払えるだろ。食事は、この喫茶店のまかない。住む所はこの喫茶店の三階建ての二階部分。服は、実験台で死んだ奴の服を提供してやる」

俺は話す。

「あの……。予想と違ったんですけど……」

陸田さんは話す。

「これで不満を持つなら、君の心は今、貧しいと言う事だ。今の君の心の中は、『死』と言う色で染められている。私は、生きる喜びを噛み締めて欲しいんだ。『生』と言う色を感じて、何に対しても生きていると感じる事が重要だ!」

生きる喜び。そういえば、超能力を手に入れてから俺は、死ぬ事しか考えていなかった。もしかして、陸田さんはこの事を俺に教えたかったのか?しかし、例え、そうだとしても、俺は陸田さんを信用出来ない。お世話になる気も無い。と言うかお世話になったら、此処で住まないといけない。

突然、制服を着た女子が階段から下りてくる。そして、陸田さんに向かって話す。

「あの……。今日も殺してくれる人を探しに外出したいので一緒に……?ってお客さん……!?」

そう言って、彼女は階段をそそくさと駆け上がった。

俺は話す。

「今、思ったんですけど、あの子って陸田さんの娘さんか何かですか?」

陸田さんは話す。

「いや……。彼女は君と同じ様に……いや、それ以上に心が『死』に染まってしまっている女性だ。君と同じ条件を彼女は受け入れて、ここで居候させている。名前は、七里 嘉だ」

俺以上に死に染まっている?俺以上のマイナスの方向の超能力があるのか?と言うよりも、赤の他人の中年と少女が一緒の所に住んでていいのか?そして、俺も此処に居候したら彼女と一つ屋根の下で寝るのか?……危険な香りしかしないぞ。しかし、この様な事は今後一切俺の不運人生で有る訳が無い。……この出来事は幸運と考えるべきか?!

俺は決めた。此処に居候する。陸田さんや、七里さんには信用も何も無いが、今の生活よりは生きている実感は湧くはずだ。そして、久々に舞い降りたこの幸運、逃す訳にはいかない……!

そして、俺は貧民層街に引っ越し、喫茶店で共に住む事になった。嘗て、こんなに非日常的な事は無かった。

実際、心の中では、まだ不信感や、死にたい気持ちが蠢いている。

まあ、結局何処にいようが生き地獄だ。俺を待っているのは、絶望しかないのなら、少しでも生きていると実感している方がマシだ。希望を感じている方がマシだ。