複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.28 )
日時: 2015/12/16 22:33
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

夜になった。
約束通りムファンの家に母さんと共に向かう

「あ!いらっしゃい、メル君、リリアさん。」

家に着いたとき最初に挨拶をしてくれたのはムファンの母さんだ。
ムファンはこの母さんに似たのだろう。この人は髪の色は金髪だが、他はムファンに似ている。というかこの人がムファンを産んだんだからムファンが似てるのか。
この人もまた、村長やムファンと同じく俺と母さんを差別せずに接してくれた人だ。

「ご飯、できてるわよ。さあさあ上がって」

「あ、はいお邪魔します。」
言われるがままに家に上がるとそこには普段は口にできないとても豪華な料理が山のようにあった。

「メル君、今日で成人でしょ、ムファンが張り切ってこんなに作っちゃって、お口に合うといいけど。」

「そんな...表現は出来ませんがとても嬉しいです。本当にありがとうございます!」

「ふふっ、いいのよ...あ、ムファンが、帰って来たみたいだね」

ムファンの母さんがドアを開けるとそこにはいつもより上品な服装のムファンがいた。

「ごめんねー、意外と隣町の山が険しくて、このドレス汚さないようにするの大変だったし、メルのプレゼントも案外なくてね。ごめんね」

苦笑いを浮かべながらムファンは言う。

「そんなことないさ、それよりもわざわざ隣町に行くほどそのプレゼントは貴重なものなの?」

疑問に思ったので言う。プレゼントがどれ程なのか気になってくる

「ふふーんそれは後で!」

「えー、まあ、しょうがないか。」

ムファンが帰ってきたのでパーティーを始める。
基本的には食べることだが、こんな豪華な料理ばかり、何から食えばいいかわからないので、とりあえず肉を食べた。

「う、美味い!」

あまりの美味さについ声をあげてしまう。
なんだ、これは...脂身はとても美味いし、生臭くもない...これは何の肉なんだーー!?

「あ、それはグリンフっていう南方にいる魔物の肉だよ。」

え、魔物の肉ってこんなに美味いのますます冒険者になりたくなってきた。

「では!皆さん食事中すいませんが、ここで成人になったメルフィン君の成人祝いのプレゼントを渡したいと思います。かもんムファン!」

村長がムファンを呼び俺の前にたつ、手に持っているのは袋だ。

「はい、どうぞ。メル、プレゼント!」

「ありがとう...」

中を開けてみるとそれには自分が今まで欲しかったものが入っていた。

「これは...冒険者用の本がびっしり!」

中には魔物辞典や迷宮の地図集などのものや、冒険者の心得なども入ってる。

「メル冒険者になりたいんでしょ?それならこれくらいの本も必要かなーって」

「ありがとう...嬉しいよ...」

俺のためにわざわざ、隣町まで言って、これぼとの数の本を...しかもこれくらいの数なら金貨何枚分だ...俺のためにここまでしてくれたのはと思うと自然と涙が出てきた。

「あ!メル泣いてる。メル泣いてるの初めて見たよ。」

「そうねぇ、メルが最後に泣いたのは6歳ぐらいかしら...それから泣いたのは今日が初めてじゃないかしら。」

確かにそうだ。俺は九年ぶりに泣いたのか...そう考えると泣くと言うのも悪くない。

「ああ、本当に嬉しいよ。ありがとう本当に...」

他になんて言えばいいかわからずただ、お礼を言うだけだった。
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数時間後、無事パーティーは終了した。
ムファンの案で今日は村長の家に泊まることになった。
そのため、ムファンと一緒の部屋で寝ることになった。

「15歳おめでとう。メル」

「ありがとう。ムファン」

「思えば私たちが出会ってからもう8年経ったのね...時って残酷ね」

「そうだね、ムファン。あの時と比べて俺達は成長したね」

「そうよ、メルったらあのときは弟みたいで可愛かったのに、今だととてもたくましいもん」

「これも稽古のおかげさ」

「そう...本当に今格好いいよメル」

「ムファンは出会ったときから可愛かったよ」

「ふふっ、ありがとう。それじゃあ、お休みメル」

「お休み、ムファン」

こうして、俺は深い眠りについた。しかし、平穏は翌日、崩壊した。

「大変だ!メル君、リリアさんがどこにもいない!」

「え!?」

この事件で不本意ながらも冒険者として、旅立ち、そして運命の歯車はさらに狂い続けた。