複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.31 )
日時: 2015/12/21 21:01
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

三話「そして旅へ」

あのあと、俺はすぐに身支度をし、いつでも旅に出れるような状態になった。
古いマントを着込んでいるのはいつも通りだ。
一方、ムファンはいつもの青いワンピースとなにやら凄い形の杖を持っていた。

「おい...なんだよそれ?」

「これは父さんが昔、凄い魔法使いの冒険家からもらったって言う凄い杖なのよ!なんと!これは普通の魔法の威力を3倍にするらしいの」

「うおお、それは便利だね」

素直にそう思ってしまう。普通の杖ならば1,5倍が限界だ。
それを3倍にするなんて並大抵の杖職人では作れない。
恐らく、作り出した杖職人も名の馳せた魔法使いだったに違いない。

「でもそのワンピースは大丈夫か?そんなので汚れても知らないよ」

「それなら水の魔法と火の魔法の会わせ技で乾かせばいいじゃない、それにこれは最近のお気に入りなの」

「それならいいけど、まあ俺には関係ないや」

「メルも少しはお洒落をした方がいいのよ、そんなボロマント着てないで、もっといいマント買えばいいのに」

「この翼を隠すためだけにそんな大層なもの買うわけにはいかないよ。それになんだかんだ言ってこのマント気に入ってるし」

「もー、メルったら洒落っけがないのよ」

「別にいいじゃん」

と話していると村長とムファンの母が見送りに来た。

「ムファン!行かないでおくれえええ」

「しょうがないのよ...父さん...これもリリアさんとムファン自身のため!可愛い子には旅させろって言葉があるじゃない...それが今なのよ...うぅ」

村長の方は大袈裟に泣いて、ムファン母の方は静かに泣いている。
いやいや、ムファンが戦場に行くわけじゃないんだから...まあ、危険だって事は一緒だけど

「メル君!ムファンをどうか頼むぞおおお」

「わ、分かってますよ。村長の方もそんな泣いてないで娘の一人立ちを祝いましょう!」

「そうじゃ!ムファン!おめでとう!」

なんか今日の村長テンションおかしいな...あ、いつもか

「じゃ、村長、行きますね」

「頑張るのだぞおおお」

「ムファーン!生きて帰ってくるのよおおお」

遂にはムファン母の方も叫び始めた。

「あ、うん...行ってきます...」

ムファンが若干引いてる。無理もないか。

「それじゃ、行くか」

俺とムファンは村をあとにした。

「メル...」

「ん?なに」

「必ずリリアさんを見つけ出そう」

「当たり前さ。」

そうだ母さんを絶対見つけて助ける。ちゃんとした冒険家になるのはそのあとだ。
それまでは母さんを探すことに専念しよう。
終わったら思う存分世界を巡り回ろう。
朝日が背中を照らす中、こうして俺達は旅に出た。

『一章』完