複雑・ファジー小説
- Re: 天使の翼 ( No.39 )
- 日時: 2016/01/19 00:38
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
六話「男」
「はぁ、これでも山脈から半分なのよねー」
俺たちが旅に出てからはや五ヶ月、これでもまだ半分なのだ。
おそらく例の集落に到着するのがさらに五ヶ月後、王都につくのは三ヶ月後、合計八ヶ月。
これじゃ、一年たってしまう。
「ま、悩んでも仕方ないか、先を進もう。」
と険しい山道を歩いていると人にぶつかりそうになる。
「あ、すいませ..」
あわてて避けようとするが相手の格好があまりにも奇怪だった。
黒い仮面を被り、赤いマントを羽織っている。
そしてなにより彼からは邪悪な気配が漂っていた。
「なんだ...この禍々しい気配は...様々な場所を旅していたがここまで邪悪なやつは見たことない...」
カイさんが声を震わせながら言う。
それほどまでに邪悪で禍々しい、この世の人間ではないような感覚も味わう。
「君が...メルフィン君だね...天使族の母を持つ生まれてきていけなかった少年...」
この禍々しい気配とは一見異なり、かなり安らぐような優しい声で彼は言う。
「なぜ...俺を知っている!?俺はあんたを知らない。あんたも俺を知らないはずだ。」
「君は古代に失われた魔法を使える人間がいると言えば信じるのかね?」
何を言ってるんだ...意味が分からない。
「まあ、いいや君に一つ良いことを教えようと思ってね...」
そう言うと男は俺に近づいてくる
しかし、その瞬間、何者かが男を斧で斬りつける。
ユシャンだ。
「お兄ちゃんに近づくな!」
凄い頼もしい。
それにしても大きな斧だ。あれを持てるユシャンってどんだけ力持ちなんだ...
そう思ってると同時に男が倒れる。
まず、ほっとした気持ちが出てくる。死んだ訳ではないだろう。
介抱すれば大丈夫だ
と考えていた時、男が急に立ち上がる。
「ふぅー、ビックリして転んじゃったじゃないかー、あー痛いなあ」
ダメージをほとんど受けていない!?
何故だ...普通の人ならあんなの喰らってここまで平気なのはいない...
「なにが、起こったんだ...」
「もしかしたら...物理結界か!?」
「なんですかそれは!?」
物理結界?聞き覚えのない言葉がカイさんの口からでてきたので聞いてみる。
「物理技から身を守るための魔術さ。初級魔法ですぐ覚えれるが、大抵はあまり効果がなくさっきの攻撃を受けてもちょっとダメージ軽減されるだけで、普通の人なら充分倒れるほどの威力の技を喰らってしまう。
君の奥の手を使えばほとんどダメージ軽減されなく倒せるほど弱い...だが奴の結界はそんなやわなものじゃない。おそらく天使族侵攻時代にあった最強の結界だ...あの結界を扱える者なんてもういないと思っていたが...」
絶望
その二文字が頭に思い浮かぶ
だが、母を拐った奴等はこいつよりも強いはず、こいつを倒さないと母を救えるわけがない。
「よし...」
無剣流最強の技、無心王剣を放つしかない。
そう思い剣を構えた。
「すぅ...はぁ!」
剣の威力は真っ直ぐ奴の結界に向かっていく。
そして結界にぶつかり結界が割れ...ていない。
ほんの少し、結界が壊れ、もうほとんど威力のない剣の波動が男の肩に傷をつけただけだ。
「ふーん、この結界を少しだかとはいえ壊すなんてなかなかの剣士だ。誉めてあげるよ。」
なんだ...こいつ反則だよ...こんな守り...
そう思うと更に希望の光が消えていくのを感じた。