複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.45 )
日時: 2016/02/16 22:58
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

八話「翠の館」


井戸は村の目立たないところにポツンとたっていた。
井戸はひび割れ、苔が生えており誰も使ってないようだ。

「やはり、最近の水魔法の汎用性が高くなってるから井戸は必要なくなっているのかもね」

カイさんが言うには水魔法は水分補給にも使えるレベルにまでいってるらしい。
確かにここ数年で魔法というのは水魔法だけでなく全属性が日常的に使える者が多い。
その代わり、人間がこれまで編み出してきた文化が失われている気がする。
これも時代の変化なのかもしれない。まあ、今はそんなこと考えているところではない。
さっさと井戸の底に行き、水晶玉を取らなければ

「じゃあ、俺が井戸の底に行ってくる」

「え?、私の魔法ならこの井戸の水を枯らして水晶玉を掬い上げることも可能だけど?」

ムファンは井戸の水を全て無くす気だがダメだ。
井戸にも生物が住み着いてるだろうしその水を無くしたら生物のすみ場所が消えてしまう。

「いや、いいよ。そんなことしなくても充分さ」

「本当に?」

「ああ、じゃあ行ってくる」

そういって俺は井戸の底に潜り込む。
井戸の中はとても暗かった。まるで、使われなくなったことを悲しんでいるかのように...

「...あった!」

そんな暗い井戸の中に一つだけ光輝く物を見つけた。

「これが水晶玉か...」

見た感じの一言は美しい...だ。
透き通るような透明感にこの暗い水を照らす光...とてもこの世の物とは思えない。
そろそろ息も苦しいしさっさと持ち帰って井戸から上がるか。

「...ふぅ」

水晶玉を手に取り井戸から出るため上がる。
さあ、行くか...

「...はぁ!メル!」

井戸に上がると真っ先にムファンが俺に寄ってきた。

「またせたな、これが水晶玉さ...」

手に持った水晶玉をムファン達に見せるとみんなが驚きとても感動した表情を見せた。

「占い師が持っている水晶玉でこんなにも美しい物は見たことないよ!」

「綺麗!お兄ちゃんもっと見せて!」

「こういう美しい水晶玉があるならあんなにも素晴らしい占いを出来たのも納得がいくわ!」

みんな口を開けばこの水晶玉を褒め称えた。
しかし、その気持ちは大いに分かる。俺だって今はその気持ちを持っているのだから。

「とにかく、翠の館に急ごう!」

辺りが暗くなってきている中、俺達は翠の館に向かって走り出した。