複雑・ファジー小説
- Re: 天使の翼 ( No.46 )
- 日時: 2016/02/16 23:00
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
翠の館に着いた時は日が沈んでいた。
俺は翠の館の警備をしている大柄な男に声を掛けた。
「おい、そこのおっさん。翠の館に入れさせてくれ」
「おい...お前はバカか。そんな見るからに怪しい奴、入れるわけがないだろ」
それもそうだな。よし、水晶玉を見せるか。
そう思いながら、腰に当てていた水晶玉を男に見せた。
「俺はグリーン様にこの水晶玉を渡すためにここに来た」
「なに!?でかしたな、水晶玉を預かろう」
男が水晶玉を触ろうとしたので俺は男の手を剣の鞘で叩いた。
「な!?何をする貴様!まさか!?アイント様を殺そうとする不届き者か!?成敗してくれる!」
男が槍を持ち、俺に襲い掛かってくる。
俺は攻撃を避けながら申し訳なさそうに喋る。
「ごめんなおっさん、この水晶玉は直接渡さないとアイントさんとやらが助言をくれないんだよ 」
そういいながら剣を抜かずに鞘のまま男の頭を殴る。
「うげぇ!?」
男は情けない声を出しながら倒れる。
すまねえな、おっさん。
「さぁ、行くか」
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
ムファン達に見守られながら館に入っていった。
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館は予想通り豪華だった。
赤い絨毯にとても明るいシャンデリア、そしてアイントの座る椅子はまるで玉座のようだった。
しかし、座ってる当の本人が死にかけの老婆のようだった。
「なんじゃ...あんたは...」
「俺はメルフィンと言います。初めまして、アイント・グリーンさん」
俺は丁寧に挨拶をする。
しかし、当のアイントが警戒するような顔をしている。
「門番はどうした...確か奴は王都神聖戦で本戦出場の実力者...寝ていたのか...」
王都神聖戦本選出場か...
王都神聖戦というのは王都で一年に一度だけ開催されている大会で予選ベスト8でも王の兵士としてそれなりに優遇され予選ベスト4は破格の待遇を受けるらしい。
本選出場の人はアイント専属兵士のように安定した仕事を手に入れることができ
二位や三位は一度で兵士長の座を手に入れられるらしい。
そして優勝者はこの世の全てを手にいれられるほどの地位に着けるらしい。
そんな大会に本選出場の実力の持ち主なのかあのおっさん...あんま強く感じなかったけど...
「あの人なら倒しました。今は館の玄関前で寝てますよ」
「それで...お主はどんな用じゃ」
アイントがひどく疑いながら言う。
「グリーン様にこれを渡そうかと」
そういいながら俺は水晶玉を手に取りアイントに見せる。
それを見せた途端、アイントは驚き声を震わせながら俺に質問した。
「お主!それはどこに!?」
「村の外れにある井戸の底に沈んでありました」
「そうか...そういえばあそこに水を飲みにいった以降、水晶玉が無くなっていたわ...ほれ、その水晶玉を返してくれ」
アイントが俺の手から水晶玉を取ろうとしたので思わずその手から逃げるように水晶玉を上げ、アイントに届かないようにする。
「お...お主!何をする!水晶玉を返せ!」
「返しますがその前に約束をしてください」
「な、なんじゃ!何でもするから水晶玉を返してくれ!」
「俺には行方不明の母が居ます。その母の行方を探してください。」
「いいじゃろう!だから返してくれ!」
「分かりました」
俺はそう言った後に水晶玉をアイントに返す。
「よし!お主の母の場所は若い頃絶世の美女だったワシに任せるのじゃ!」
若い頃絶世の美女って...
そう思ったがそれは置いておこう。
今はそんなことより母の居場所の方が重要だ。
「出たぞ!お主の母の居場所は!」
「ーーじゃ!」
俺はそう言われた途端、耳を疑った。
なぜなら、普通ならありえないところに母はいたからだ。
「王城って...本当ですか?」