複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.50 )
日時: 2016/02/21 23:45
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

「何だこれ... ...」

 起きたら女将さんとユシャンが戦ってた。
 理解できない。なにがあったんだ。
 俺が呆然としているとユシャンが俺に向かって全力で叫んできた。

「お兄ちゃん!この人やっぱり怪しい人だった!お兄ちゃんを殺そうとしてたもん!」

 ...え?俺を殺そうとした?どうして?なんのために?

「バレたら仕方ないわ...私はピート!マトーレ王国最狂の暗殺者!」

「ピート!?まさかあの!?」

 いつの間にかカイさんも目覚めていた。
 あの... ...?

「カイさん!あのってどういう意味ですか!」
「ピートって言うのは王都で今話題の暗殺者だ... ...彼に依頼するとターゲットを必ず殺れると... ...まさか女だったとはね」

 まずい... ...そんな化け物に狙われるなんて想定外だ。
 どうする俺... ...なにかここを突破できる策を考えろ... ...
 まずは剣を取りに行くか.
 俺はベッドの横にある剣を取ろうとした。しかし、その瞬間に何か刃物のようなものが俺の手に刺さった。

「ぐああああっ!」

 焼けるような痛みが全身に広がる。
 これは短剣か?毒が塗ってある。

「あなたに動かれると困るからね。その間麻痺毒で五分の間、静かにしててね」

 麻痺毒... ...くそう、しばらくは動けないか。ここは一旦耐えて攻撃のチャンスを... ...

「まずはお前だメルフィン!お前を先に始末する!」

 狙いは俺か!?だがなんで... ...
 ピートが俺に向かって走ってくる。このままじゃ殺される。動け... ...
 だが体は動かない。
 現実は無情だ。
 いや... ...ピートの背後からユシャンが斧を使って攻撃を試みている。
 成功するか?

「無駄よ」

 ピートは背後から気配を察知し短剣で斧を受け止める。
 ピートも一体どれくらいのパワーがあるんだ?普通ならユシャンの斧を受け止めきれずに斬られてしまうはず。
 暗殺者は特別な訓練でも受けているのか?

「中々のパワーね、並の人間なら私に返り討ちにあって斬り落とされるわね。だけど私はマトーレ王国最強の暗殺者。貴女ごときの斧の攻撃なんか喰らわないわ」
「ばーか!わたしにすぐ倒されるんだから大口を叩かなくてもいいのに!」

 ピートは余裕だと言わんばかりの笑みを浮かべている。一方、ユシャンはピートを馬鹿にしている。
 ユシャンの方はあまり強そうに聞こえないのが残念だ。
 それから数秒間、二人は睨めあい。まずは最初にピートが動いた。
 
「まあ、最初に死にたいなら仕方ないわね。さあ死になさい!」

 ピートは腰に差していた大量の短剣をユシャンに向かって投げつける。
 ユシャンは避けきれるのか?
 
 しかし、ユシャンは「そんなもの!」と斧を地面に向かって降り下ろし、それによって出来た衝撃波で短剣を全て地面に落としてしまう。

「さすがユシャン君だ。衝撃波を作り出して短剣を落とすとは」
「ですが、油断は禁物ですよ。ユシャンの重い斧より奴の軽く大量にある短剣の方が有利なことに変わりはありませんし」

 とりあえず、さっさと麻痺も治らないだろうか。
 これさえ、治ればすぐにあの暗殺者を殺せるのに

「意外と出来るのね、だけど無駄よ!」

 ピートはさらに剣を投げ続ける。
 ユシャンは衝撃波で落とし続けるが遂には耐えきれずに短剣の一つがユシャンの肩に刺さってしまう。

 「うわぁっ!」

 ユシャンは痛みを抑えきれずに肩を押さえるがその間にもピートの放った短剣がユシャンのもとに近づいてきている。

「危ない、ユシャン君!」

 カイさんが、ユシャンの元に向かっていき剣で短剣を跳ね返すが全て返すことは出来ずにユシャンに短剣が刺さっていく。

「うっ!」
「とどめよ!」

 そのまま、ピートがユシャンに止めをさそうと短剣を持ったまま向かう。
 だが、その瞬間ユシャンが動いた。

「引っ掛かったね!この技は近くじゃないと使えないから待ってたのよ!」
「な!?」

 ユシャンは斧を大きく動かす、斧の尖端には煙が出てきている。ピートは避けようとするがもう遅い。ユシャンは技を繰り出す。

「熱爪斧!」

 斧の周りに熱気のようなものが漂いピートに向かてくる。
 ピートは避けきれずに技を喰らい後方に吹き飛ばされる。

「ぐぁ!?」
「勝負あったわ!わたしの勝ち!」
「そんな!?まだよ、まだやれ「あんたの敗けだよ。認めろ」
「!?」

 最後には俺が剣をピートの首元につけ、決着を付ける。
 これで一件落着... ...ではないな、まだ疑問に思うところがたくさんある。
.
.
.
「それで聞きたいんだが俺を殺すように指示したのは誰だ?」

 俺はなるべくドスの聞いたような声で言ったつもりだったが無理だったらしい。ユシャンが笑っている

「... ...現左大臣ゴルランゲスよ」

 やはりか、今、俺を殺そうと考えるのはそいつぐらいだ。

「それで、なんでそいつは俺を殺そうと?」
「アイント・グリーンの予言だそうよ、あなたの特徴と一致した男がゴルランゲスを殺すらしい」

 なるほど、先手必勝って事か。まあ、失敗したがな。

「それで、お前はこれからどうなりたい?」
「殺せ、暗殺に失敗した暗殺者など生きる価値がない」

 あらら、厳しい。だが、殺す気はない。

「じゃあ、この小屋においてけぼりで」
「なっ... ...!?そんな生き恥晒すつもりならいますぐ死にたい!」
「俺を殺そうとした罰だ!これぐらいは味わえ!」
「くっ... ...」

 そのあとの作業は順調だった。
 ピートを縄で縛り放置、小屋に入ってきたやつが変態で酷い目にあわされても俺は知らん。
 そのあとは荷造りをして、ムファンを叩き起こして小屋を出た。
 ムファンはもう少し寝たいと文句を言ったがこの宿が本当はボロい小屋なのだど伝えたら早く行こう!と言い出した。
 俺が一番王都に早く行きたいよ
 そのあとはひたすら歩いている。
 それはさておき、この戦い... ...といっても俺は最後にピートを押さえ付けただけだが... ...まあ、それは置いといて分かったことはゴルランゲスも俺を狙っているって事だ。
 つまり、敵もこちらも双方とも命を狙っている状態となるわけだ。
 それならばこちらが先にゴルランゲスを殺せばいい。簡単なことだ。
 といっている間にも王都に近づいてきている。さあ、ここからが本番だ。

三章「完」