複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.52 )
日時: 2016/03/07 19:46
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

四章『発見』

十話「王都」

 ピートとの戦いから1ヶ月が過ぎた。
 王都へはあと四歩先だ
  ... ...つまり目の前にあるのだ。
 ここまでの道のりは長かった... ...ドラゴンに遭遇したり巨大蟻の大群と死闘を繰り広げたり... ...まあ、ほぼムファンの魔法の餌食となったが
 それはさて置き、随分立派な門だ。
 倒れたらここにいる四人全員下敷きになるほどの大きさだし、ところどころついている棘のようなものが王の威厳を表現しているのだろう。
 この門は確か二百年前、マトーレ王国の建国と同時に初代王の右腕である大魔法使いテーレが生成魔法を使いそこらにあった石だけでこの門を作り出したという。
 だがそもそもそういう魔法は聞いたことないしあったとしても天使族侵攻時代に失われているだろうから本当は何十年も掛けて作ったに違いない。
 そう考えながら王都に入ろうとすると門番に引き止められた。

「待て、そこの者!ここから先は王都、身分を証明できるものでないといれてはいけないと国王から命令されている!なにか証明できるものはないか?」

 面倒だな... ... だが王都に危険が及ばない為みたいだししょうがないか
 俺は冒険家証明書を提示しながら面倒くさそうにいった。

「これでいいよな?」
「ん?メルフィン、冒険家か?いいぞ」

 門番は冒険家証明書を見たらもうどうでもよくなったのか返事は素っ気ないものだった。まあ、一々、冒険家なんかに構う暇はないよな。

「じゃあ、まずは王都の宿屋を探そう。できれば格安で」
「安いの?ボロいのは嫌よ」
「いや、メルフィン君の言うように宿は安い方がいい。王都の宿屋は安くても質がいいのが多いからな」
「ふーん、カイさんが言うなら信じるわ」

 ムファンも文句を言うなよな... ...金もあまりないんだし仕方ないじゃないか。
 そう心の中で愚痴を言っていると大きな建物に挟まれるようにひっそりと佇んでいる宿屋を見つけた。

「なになに?一人200ゴールド?つまり四人で800ゴールドか。これは安いな」

 いい宿だな。見た目もそう悪くないしみんなに報告するか。
 そう考え、駆け足で三人の元に行き、宿屋を見つけたことを報告した。

「うむ、良い宿だね。普通なら一人500ゴールドなのにそれを200、おそらく冒険家専用なのかもね」

 カイさんが言うにはそういう宿は冒険家をメインに取り込んでいく宿らしい。
 まあ、客には関係ないことだ。さっさと宿に入るか
 宿に入るとやけに酒の臭いが漂ってきた。
 それもそのはず、数十人の荒くれ者が昼間だというのに杯を片手に酒をぐいぐいと飲んでいたのだ。

「酷いわね、酒に溺れた男たちはこんな時間にもかかわらず酒を飲むのね」
「仕方がないさ。冒険家は日々のストレスで酒を飲もうとする。その後酒に嵌まり、どんどん酒を飲むようになる。最終的にはこんな時間から酒を飲むようになるんだ。これは職人でも変わらないさ」
「だとしてもこの臭いだけは勘弁して欲しいですよ」

 臭いから酒の臭いは勘弁してくれ、まあ、今は代金を払うのが先だ。
 男たちを押しのけカウンターに行くが、カウンターの待ち受けの男も酒を飲んでいた。

「すまないけど、この宿に休みたいのだがいいか?」
「あ?いいけど金はあんのかガキ!ここは200ゴールドだ!20じゃねえぞ!200だぞ!」
「知っているよ。ほら、四人分で800だ。」

 そう言い、男の手のひらに金を押し付けその場を去る。

「800?おお!800か!おい!ガキ!てめえの部屋は二回に行ったところの手前だからな!」

 男の怒鳴り声が宿に響く。だが、冒険家は気にもせずに酒を飲み続ける。

「こいつら死因は酒の飲みすぎになるだろうな」
「酒臭い!どうにかして!」
「ユシャン、我慢しろ、ここはそういうところなんだ」
「むぅー」

 ユシャンは不満があるらしく、頬を膨らませるが、ここに一晩泊まり、明日、王城に侵入する。その計画のためなら人に聞かれないように酔っ払いの阿呆が多いこの宿がいいと思うからな。我慢してくれ
 そう思いながら男に言われたとおり二階に上がり、指定された部屋に入る。
 部屋は小さな暖炉が一つあり毛布が四つ転がっている粗末なところだった。

「駄目ね、こんなろくに整備もしない部屋に私たちを入れるなんて」
「だが、我慢するしかないよ。下の男たちの酔っ払いを暴れさせないようにするのが精一杯何だろう」