複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.55 )
日時: 2016/03/13 13:47
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)

 待て?父が第二王子だって?そんな荒唐無稽な話、信用できるわけがない。

「冗談はよしてください。天使と王子が結ばれるなんて御伽噺のみ通用する話ですよ」
「冗談ではない、私はそんなつまらんことをいう趣味はない」

 そうは言っても父が第二王子だなんて... ...
 そう思ってるとムファンが「あ!」何かを思い出したかのように大声をあげた。

「どうした、ムファン!」
「確か父さんが昔、メルの父親は偉い人だったって言ってたわ... ...昔は只の役人だと思ってたけどまさかここまでとは... ... 」

「  ... ...」

 驚きで声もでない。父が元第二王子なんだって普通なら夢で見る程度の話だ。

「まあ、まずはある昔話を聞いてくれないか... ...」

 王はそう言い放ち、指をパチンと鳴らす。そうするとどこからともなく吟遊詩人のような女が現れ、ある話を語り出した。
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 昔、あるところに王子様がいました。
 王子様は国王ゲルスィート五世の息子の中では二番目に生まれた人でしたが、王妃の間に生まれた子供だったので王子の中では一番次期国王に近いと言われてもいました。
 王子様には唯一、腹違いでも種違いでもない同じ、腹で生まれ、種が同じな弟がいました。
 その弟の名はヨハン、第三王子のヨハンです。
 王子様はヨハンを可愛がってました。唯一の自分によく似ている弟なのですから。
 しかし、ある日、ヨハンは姿を消しました。王子様はヨハンを探しました。けれど、どこを探してもヨハンはいません。王子様は酷く絶望しました。
 その後、王子様は武芸を磨き、無剣流という流派を教わり、彼は瞬く間にその才能を開花させました。
 そして、戦争に参加し戦場では敵を切り刻んでは捨て、切り刻んでは捨てを繰り返し、彼は人々に恐れられこうよばれました。
 「血だらけ王子」と... ...
 その異名の影響か、彼を王にという発言が強くなりました。
 当時、次期国王候補は二人いました。
 一人は第二王子である王子様、もう一人は第一王子で妾の子、後のゲルスィート六世。
 彼らは仲は良かったのですが、周りの大人達が自分の都合のために二人を対立されたのでした。
 それにうんざりした王子様は城を密かに出て、そのまま行方知れずとなるのでした... ...
 それから数年後、王子様は天使族の女と結婚し、子ができました。
 そして、その三年後に流行病を患い死んでしまいました。
おしまい
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「この話が我が腹違いの弟アイファーの話だ。この唄には王子様といわれるだけで名は出てこなかったがこの王子様がアイファーだ」

 俺はある疑問を投げつける

「その話は本当ですか?」

 そう質問したとき、答えたのは国王ではなく、カイさんだった。

「ああ、本当だ。現にこの話に出てくる第三王子ヨハンは行方不明になり、今もどこにいるのか分からないし、第二王子も出奔して家系図から名を抹消されている。だから王子様としか言われてないのだろう」

 そうか... ...未だに信じられないが、この話は本当なんだな... ...

「ありがとうございました。国王陛下」
「うむ、私も甥の顔を見れて満足だ」

 今までは国王が出した話題だ。今度はこっちの... ...
 
「国王陛下、聞きたいことがあります」
「なんじゃ?」
「俺の母親、リリアのこ... ...」

 俺が母親について聞こうとした時に国王の後ろから何か赤い液体が流れているのに気がついた。

「ば!?ばかな... ...ゴルランゲス... ...貴様... ...!?」
「国王陛下、死んでもらおう」

 いつの間にか国王の後ろには黒い髪を生やし、青い髭を蓄えた男が剣で王の背中を刺していた。

「ひ... ...ひえええ!?」

 真っ先に吟遊詩人の女が逃げようとするが遠くから放たれた矢に心臓を貫かれる。
 即死だろう

「く... ...お前は何者だ!」

男は顔を上げながら自分の名を名乗った。

「現左大臣ゴルランゲス・アルノーテ... ...」
「お前がゴルランゲスか!母さんを返してもらうぞ!」

 そう言い放ち、俺が奴に襲い掛かろうとすると突如、男が上から飛び降り、俺に剣で切りかかろうとしてきた。
 俺は慌てて剣でそれをガードする。

「ちっ... ...何者だおまえは!」

 男は面倒くさそうに喋った。

「もうすぐ死ぬ人間に言う必要はあるのか?」
「なんだと!?」

 こいつ、神の子供たちか!?、まあいい、こいつは殺してゴルランゲスも殺す!そうすれば母さんを... ...!

「ユシャンは王を連れて逃げろ!王はまだ助かる可能性がある!ムファンとカイさんはゴルランゲスを追え!」

「わかった!」

 ユシャンは国王を片手で持ち、下へと逃げる。
 途中、矢に襲われるがなんなく避ける。
 一方、ムファンとカイさんは逃げたゴルランゲスを追う。

 こうして、俺たちと神の子供たちとの戦いが始まった。