複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.62 )
日時: 2016/03/14 12:05
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

十三話「生と愛」

 「中々やるな... ...」

 男は余裕たっぷりの表情で言った。
 今、俺は奴と剣を交えている。
 勝負は奴が優勢。なぜなら、どちらも一歩も引かない状況ではあるが俺は疲れているのに対し、奴には疲れの色が見えないからだ。

 「ふん!俺は弱者には名を名乗らないことにしているがお前は強者だ。名乗らせていただこう!」

 男はそう言い、名を大声で名乗った。

 「我が名はハルキュエール!王国一の剣士にして、左大臣ゴルランゲスの配下よ!」

 こいつ、神の子供たちではないのか!?
 
 「神の子供たちではないのか?」
 「ああ、私はただのゴルランゲス様の配下、他の種族がどうなろうと私には関係ないからな。だが、しかし、ゴルランゲス様には忠誠を誓っている。だから、ゴルランゲス様に刃向かう貴様は殺さねばならぬのだ」

 っち... ...狂信者ってやつか... ...
 こういうタイプの敵は自分はどうでもいいが主君は守るタイプの奴だ。魔物にもこんなタイプのがいたが、倒しても倒しても、主君を守ろうとして厄介だったな... ...

 「俺が名乗ったんだ。貴様も名乗ってもらうか」

 え?俺も名乗るのか、まあいい。名乗るか

 「俺はメルフィン、見ての通り、冒険者だ。あと、左眼の色で分かるが、神の子だ」

 そうは話すとハルキュエールは驚いたような顔をした。

 「神の子だと!?通りで眼の色が違うと思った... ...つまりは剣士としての才能は常人より長けている。これには警戒せねば... ...」

 ハルキュエールは警戒したのか剣を両手でもち、守りの態勢にはいる。
 守るなら守ればいい、その分、俺が攻撃させてもらう。
 ここで炎剣流はまずい。城も巻き込む可能性がある。ならば、無剣流を使うしかない!

 「はぁ!」

 無剣流上級技 無心剣を繰り出す。この技は無心王剣の下位互換となるのだが、威力は他の流派の究極奥義並みに高いのでいつもはこちらを使っている。

 「な!?無剣流!くそ!氷山!」

 男の前に巨大な氷の塊ができる。
 無心剣は氷の塊を破壊するが、そこで威力はほとんど消える。

 「言い忘れていたが、俺は水剣流最上級流派氷剣流の使い手よ」

 ん?水剣流最上級流派?どっかで聞いたことあるぞ?
 
 「水剣流最上級流派って雷神流じゃないのか?ネールスも言ってたし」

ハルキュエールはネールスという名前に反応したのか急に嫌そうな顔をする。

 「ネールス〜?あのバカはそんな嘘をついていたのか、俺に一度も勝てなかったくせになぁ」
 「お前、ネールスと何かあったのか?」

 そう聞くと奴は「あいつは雑魚のくせに俺にいつも刃向かってた!死んで清々したよ!」と愚痴を言い出した。

 「そのネールスなら俺が殺したんだが」
 「ん?お前が殺めたのか?なら、翼の生えた少年は貴様か!よく見たら貴様の使っている剣も光業剣だな!そうか!お前が殺めたのか!よくやった!」

 なんか褒められた。よっぽど嫌っていたのだろう。

 「だが!貴様は私の敵だ!ネールスを殺したのは感謝するがゴルランゲス様に敵対したのは許さん!殺してくれる!」

 そう言い放ち、奴は剣から青い波動を出した。

 「氷剣!」

 俺はとっさに避ける。波動は地面ぶつかり、地面が氷で覆われる。

 「俺の氷剣流はぶつけた物の温度を【奪う】流派、少しでもぶつかったらそのぶつかった物は温度を奪われ氷になる」

 な!なんて凶悪な流派だ... ...あれに当たらないように技を放ち、敵を倒す... ...難しい... ...
と、考えていると俺はある方法を思いつく

 「なあ、ハルキュエール、この戦いをすぐに決着させる方法があるんだが、それをやらないか?」

 こう、喋るとハルキュエールは食いついてきた。

 「ほう?どんな方法だ」

 そう聞かれると俺は考えた方法を語った。

 「俺とあんたが向かい合う。それで同時に自分の使える最強の技を使う。それでより強い方が弱い方の技を食い破り、技を打った本人を殺めるってわけだ。どうだ?乗るか?」
 「面白い!乗った!」

 そう言い、俺は奴と向かい合う形になった。
 少しの間、静寂の時が流れる。そして、俺が剣を握った瞬間、ハルキュエールも剣を握った。

 「無心王剣!」
 「氷剣流最上級奥義氷王水剣!」

 二つの波動がぶつかる。
 両者共に互角... ...いや
 【無心王剣】の方が威力は高かった。
 無心王剣は青い波動を食い破り、ハルキュエールに向かっていく。

 「くっ!」

 ハルキュエールは剣で無氷王剣を止めようとするが力が及ばず、波動がハルキュエールの腹に貫通する。
 
 「ぐあっ」

 ハルキュエールは大量の血を吐く。
 そして、倒れる。

 「俺の勝ちだぜ、ハルキュエール」
 「そうだな... ...貴様の勝ちだ。ゴルランゲス様... ...申し訳ありません... ...」

 ハルキュエールは今にも泣きそうな目でゴルランゲスに謝罪した。
 そして、目を瞑り、二度と起きることはなかった... ...

 「俺は敵としてのハルキュエールは嫌うが一人の剣士ハルキュエールとしては尊敬するよ。安らかに眠れ、ハルキュエール」

 俺は彼の冥福を心から祈り、歩くことにした。
 後はゴルランゲスただ一人だ... ...
 ゴルランゲスを殺し、母さんを救う!