複雑・ファジー小説

Re: 天使の翼 ( No.67 )
日時: 2016/03/15 02:04
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

エピローグ「翼が抜け落ち天使は人間となる」

 俺の翼を見て、まず悲鳴をあげたのはどこの誰かもわからぬ女だった。
 そこから。流行病のように人びとが悲鳴を上げ、俺に罵声を浴びせてくる。
 
 「くそう!人食い種族如きが英雄になったつもりか!」

 一人の貴族はそう俺に罵声を浴びせてきた。
 え... ...?人食い種族だって?
 なんだよ... ...さっきまで俺を英雄って褒め称えていたくせに種族が判明したら手のひら返しかよ。
 意味分かんねえよ... ...
 
 「メルフィンよ、私は素直に君を種族とは関係なしに英雄として尊敬している。それに僕は他種族友好派だ。できれば君を助けたい。だが、この状況では無理だ。せめて、君を逃がそう」

 そう言いながら、エカルス王子は俺の手を取りその場から逃げる。
 ムファンたちもそれに続くようにその場を去った。
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 逃げた先は国王の部屋だった。
 エカルス王子はドアを軽く叩き、国王がいるかどうか尋ねた。
 すると、ドアの向こうからは「ああ、もちろんいるぞ」との返事が返ってきたので部屋に入る。
 部屋には国王と匿われていた母さんがいた。

 「下の騒ぎからお主が天使族であることがバレたようだな」
 「その通りです... ...」

 俺はそう答えることしか出来なかった。
 
 「ならば、逃げるしかないな」
 「どうやって?下は貴族たちがいて、逃げられません」
 「ふふ、そういうと思ったよ。このベッドの下を見てみなさい」
 
 ベッドの下を見るとなにやら、大きな穴があった。
 
 「もしかしてこれ... ...ワープゾーンですか!?」
 「その通りだ、昔からいざという時のための非難用にな、それは偶然、お主の集落の大木に移動する。それ使って逃げるのだ」 
 「なぜそこまで?あなたにとって俺は甥というだけですよ?」
 「いや、アイファーに似てるのだ、おぬしがな... ...」

... ...父さんに似てるか... ...どんな人だったんだろうな父さんは

 「そうですか... ...ありがとうございます。陛下... ...いくぞ!みんな!」
 「おう!」

 そう言った後、俺はワープゾーンに飛び込み、それに続くようにムファンたちも飛び込んだ。
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 集落の大木とは幼いころ俺がいつも本を読んでいた場所だった。
 そう言えばここでムファンと出会ったんだな... ...
 そう思いムファンのことを見ると目があってしまった。
 俺と同じことを考えていたのだろう。
 ここに来ると、本当にあのころのつらい日々が脳裏に浮かぶ... ...
 そうだ。この翼があったからだ... ...
 もう誰にも差別されずにすむにはどうすればいい?
 そうだ。
 何で、今まで思いつかなかったんだろう。



 翼を捨てればいい... ...
 
 「なあ、ムファン。この翼、お前の炎魔法で焼いてくれないか?多分、再生するから何かで再生しないようにしてくれ」  
 「メル?何を言ってるの?翼を焼く?」
 「いいから、早く!」
 「う、うん 炎<フレイム>」

 ムファンから放たれた炎が俺の翼を焼いていく、火傷は激しく痛むがこれも幸せを掴むためだと思えば痛みは感じなくなる。
 炎で翼を焼ききったあと、ムファンは封印魔法の文字を背中に書き、俺の翼を再生しないようにした。
 
 「これで、翼は封印魔法の文字が消えない限り、再生しないわ。これで満足?」
 「ああ、満足さ... ...」

 「それじゃ、帰ろうか」

 俺は自分の家に向かってゆっくり歩いた。
 背中はとても軽かった。


四章「完」