複雑・ファジー小説

Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.72 )
日時: 2016/04/04 14:56
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

十四話「日の届かぬ場所」

 あれから二年の月日がたった。
 俺達は冒険者稼業を休み、現在は故郷で静かに暮らしている。
 
 翼を失ったからなのか俺はもう差別されなくなった。
 だが、母さんは翼を切っても封印する前に再生するので翼を抜くことはできない。
 そのため、未だに村で差別を受けている。
 あれからユシャンは俺の家に居候という形で住むことになった。
 娘の欲しかった母さんは天にも昇る気持ちだったんだろう。
 カイさんは村の廃屋に住みだした。
 村の人々からは何故か恐れられていたが、村の近くの森に沸いた魔物を退治したらあっさり受け入れられた。
 チョロいな村人達。
 ムファンは火の最上級魔法を扱えるようになった。
 先日、森に最上級魔法を放ったら危うく森が焼失しそうになった。 
 危なかったな

 そして今はユシャンと共に薪割りをしている。
 正確に言うと俺が剣で薪を割り、ユシャンがそれをみているのだ。
 
 「おい、ユシャン!そろそろ代われよ! お前には斧があるだろ」
 「えー、めんどくさい。 それにわたしの斧だと地面にもひびがはいっちゃうけどいいの?」
 「え... ...まじかよ... ...ならいいや、俺が続ける」

 こんな感じで村は今日も平和だ。
.
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 一時間が経った。
 薪割りはこれで一旦終わり、家に帰るとしよう。  
 そう思い、家に帰ろうとすると、近くの森からカイさんが出てきた。

 「あ、カイさん! また魔物退治ですか? 」
 「ああ、まあね、今日はいつもより魔物が多くてね。 誰かに助太刀してもらおうと思ってね」
 「じゃあ、俺が行きますよ。ユシャン、お前は家に帰ってろ」
 「はーい」

 ユシャンはただ返事をし、家の方向に向かって走っていった。

 「そうかい、それは助かるよ。じゃあ、行こうか、森へ」
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 森にはそこらじゅうに魔物が蔓延っていた。

 「これ、どうするんですか?カイさん」
 
 そう言うとカイさんは困ったように言った。

 「僕の魔法や剣を使っても倒しきれないからね、メルフィン君、技を使って倒してくれないか?」
 「ええ、いいですよ」

 森にいる魔法のほとんどはゴブリンだった。
 はっきり言うと魔法でも弱い分類に入る奴らだ。
 基本的には、無心剣だけで倒せるので余裕といえば余裕なのだが、数がとても多い。
 倒しても倒しても倒しきれない。
 
 「グガアアア!」
 「うるせえよ!」

 ゴブリンが襲いかかってきたので、咄嗟に無心剣を使い、斬り捨てる。
 本当にキリがないな。
 カイさんは大丈夫か?

 「カイさん!大丈夫です... ...え!?」

 カイさんの方を見るととんでもない光景が広がっていた。
 カイさんの周りにいたはずのゴブリンが一匹残らず地に伏しているのだ。
 正確には伏しているのではなく死体となって転がっているのだ。

 「カイさん、一瞬で倒したんですか?」
 「まあね、これで森の四分の一は死滅したかな。さあ、行こうか」

 これだけ倒しても四分の一かよ... ...まあ、ゴブリンは繁殖力が強いらしいし、仕方ないな。
 ん? もしかして繁殖力が強いということはまたすぐに増えるの?
 そうだったらめんどくさいな。
 まあ、そんなことにならないように頼みたいが。
 森を出た途端、とても大きな火の玉が俺にぶつかりそうになってきた。

 「危ねぇ!」
 
 俺は即座に避け、火の玉は後ろにあった木にぶつかり、木は一瞬で、灰になってしまう。
 
 「ごめーん! ちょっと試しに火の上級魔法撃っちゃったらそこまで飛ぶんだもん! 」

 遠くの丘からムファンが走ってくる。
 これでも上級魔法だ。
 最上級魔法だとどれくらいの威力なんだ。
 村が消滅するかもしれない。
 
 「お前、俺が避けれたからいいもののあたってたら一瞬で灰になってたぞ」
 「そうね、ごめん。 あははは!」
  
 笑いながらムファンは謝るが本当にぶつかったら危ないのでやめてほしい。

 「はぁ、本当にやめろよ。 死んだら笑い物になるし」
 「翼があったころも笑い物だったじゃない」
 「それとこれとは別だろ。てか、その頃の話をすんな!」
 「メルフィン君とムファン君、話をするのもいいがそろそろ日が暮れる。 早く帰らないとここらへんに凶暴なモンスターが増えるよ」
 「それもそうですね、行くぞムファン」
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今日は珍しく、パーティメンバーで食事をしようということになり、俺の家に集合ということになった。
 家に帰るとユシャンが俺に向かって飛び込んできた。

 「お帰り!お兄ちゃん!」
 「ああ、ただいまユシャン」
 「メル、お客さんがきてるわよ」

 客?誰だろう?
 そう疑問に思うと、奥から懐かしい仮面が出てきた。

 「久しいね、メルフィン君」
 「ファイン」