複雑・ファジー小説
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.74 )
- 日時: 2016/03/25 23:27
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
十五話「復讐の仮面」
「母さんが死んだ!?嘘だ... ...そんな嘘をつくなあああああッ!!」
こいつは嘘をついている... ...母さんが死ぬわけがない!
天使族は長命だ... ...そんなすぐに... ...
「君の母さんは油断しやすいみたいだね。 だから密かに君の母さんの喉に痛みも感じさせないように針を入れ、そのまま僕の魔法でズブリと一発さ」
こいつは何かを喋っていた俺の耳には入ってこなかった。
当たり前だ。
母さんが死んだという事実を認められなかったんだ。
そんな説明、聞いてられなかった。
聞いてて... ...腹の底からなにかが沸き上がってくる。
「知るかよ... ...てめぇ... ...」
俺は感情のままに奴に向かって剣を斬りつける。
だが、ファインは横を向き、物理結界を放ち、攻撃は結界に阻まれる。
「怒りで忘れているようだけど僕は物理結界の壁で守られている。 今の君の攻撃じゃあ、この物理結界は破れないだろうね」
「そんなこと関係ないッ! 俺はお前を倒すのに手段は選ばん! 母さんを返せえ!」
ファインはその言葉一つ一つを聞いては笑い声を上げ、そして満足そうにいった。
「君は母を殺されたことで腹を立てているようだが、所詮は人の命、いつかは消えるものだ。それが少し早く、それもただ人の手によって消えただけだ。 冷静になれ。そして、僕はおとなしく立ち去るから、追わないでくれたまえ」
ファインはそういいながら薄気味悪く笑い、家を出ようとする。
だが、俺は奴に向かってある疑問を投げつけた。
「なんで母さんを殺したんだ?」
そう聞くとファインは急に体の動きを止め、ゆっくりと俺の方を向いてきた。
「それ、いう必要あるのかい?」
「ああ、なんで母さんが死ななければいけなかったのか知りたいし、それに手帳の持ち主とお前が同一人物ってやつも気になる」
ファインは少しの間、頭を掻きながら考えるようにしていたが、やがて頭を掻くのをやめ、俺に向かってこういった。
「天使族を殺したいほど憎んでたら本当に殺しちゃったってところかな?」
「は?なんだよ... ...それ」
俺は理解できなかった。
天使族が憎い?なんで?お前は何もされて... ...いや... ...手帳を書いた人間と同一人物なら... ...
俺は悟ったような顔をしていたのだろうか
ファインは不気味な笑い声を高らかにあげ、俺に向かって静かにこういった。
「おや?分かったかい?僕が手帳の書いた主と同一人物... ...手帳の持ち主フェニは僕だよ。 大切な人を奪われ、激しく憎しみを抱いたら何故か不老不死を手に入れちゃってそこから復讐が始まったってわけ」
「さっき、お前、人の命はいつか消えるものって言ってたよな。 なら、それも運命だと受け入れるべきだろ?」
「それとこれとは別さ。僕は不老不死を手に入れたから仮面を被らなければいけなくなった理由の天使族を憎んでいるだけさ」
こいつ... ...自分の事を棚にあげやがって... ...
「次の僕の目的はコルレ天使国を破壊すること、まあ、君には関係ないだろうから僕はいかせてもらうよ。」
コルレ?ああ、一年前に建国したっていう国か... ...
「そこはどんな国なんだ?名前からしさて天使族がいたりするのか?」
「その通りさ、天使族が人口の七割を占める国さ。突如として現れ、元々あった国を滅ぼし、建国した謎の国、もちろん各国はコルレを滅ぼそうとしたが天使族の堅い守りとマトーレ王国が参加しなかったため敗北、コルレは未だにあそこに居座っている」
「で?お前はそれが憎いのか?天使族がいるから」
「もちろん、あそこには天使族の族長がいるという噂だ。この何百年と経た知識と魔力で、復讐をするのさ!」
ファインは声が裏返るほど大きな声で笑い声を上げる。
「君には関係ないだろ?むしろ、今まであんな目にあったから天使族が憎いだろ?どうだ。僕と共に天使族を滅ぼさないかい?」
「それもいいかもな、俺があんな目にあったのは天使族のせいだからな」
そうだ... ...差別されてきたのも... ...あいつらのせいだ... ...だけどな
「断るよ。俺はお前を殺そうと思う」
俺は強くはっきりと言うとファインが訝しく思ったようで俺になぜと問うように訪ねてきた。
「なぜ?君には関係ない国だ。それが滅びようとも関係ないし、むしろ君には好都合だろ?」
「コルレって国がどうなろうと確かに俺には関係ないし、興味もない。だがな、お前は母さんを殺した。その時点でお前は俺に殺されるかもしれないと思った方がいいぞ。なぜなら、俺はやると決めたら諦めるということは選択肢から除外するからな」
そうはっきり言うと、ファインははぁとため息をつく
「なら、仕方ないね、僕はこれで逃げさせてもらうよ」
「させない!」
ファインが素早く立ち去ろうとするのをユシャンが斧を投げ、ファインの行く手を阻む。
「っち... ...厄介なやつめ... ...ならば仕方ない... ...少し、相手になろうか」