複雑・ファジー小説
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界 ( No.80 )
- 日時: 2016/04/03 21:20
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
アンデッドは首をはねられても生きるくせに心臓をひとつきすれば息絶えるらしい。
それはなぜなのか未だに分かってないし分かりたくもない。
ただ一つ言えることは、母さんはもう完全に死んだってことだけだ。
あれからの作業は淡々としていた。
首を切り落としたアンデッドは心臓を刺して行動停止させ、首のあるアンデッドはムファンの土魔法で目くらましして心臓を刺す。
これを繰り返し、アンデッドは全滅。
念のため、家の外に出て、一定の場所に集め、日光が出て消滅するのを待った。
外は大雨だったがいずれ止むだろうと直感で分かった。なぜかは分からないけど
ちなみに、母さんに噛まれた傷は体力と魔力が回復したカイさんに解毒魔法を使ってもらい、無事、回復した。傷が浅かったのが幸いだったのだろうか。
母さんの遺体は父さんの墓と同じところに埋めておいた。
父さんの墓は幼いころに何度も来た。
母さんが何回も掃除しているのか他と比べてとても綺麗だったな。
まあ、もうそれを掃除する人はいないんだけどね... ...
「母さん、父さんと一緒に安らかに眠ってください。いつになるか分からないけど俺も行くよ。」
そう言い終えた後、日が昇っているのと雨が止んでいるのに気づいた。
おそらく、アンデッの肉体は消滅しただろう。
こう墓標を前にすると、人は簡単に死んでしまうということが実感させられる。
今はピンピンしているムファンやカイさん、ユシャンもいずれは死んでしまうのかと思うと少し怖くなってしまう。
「俺は臆病者だな... ...」
そう呟き、家のある方向に歩いていった。
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家に帰るとアンデッドの死体は日光で消滅したのかもう跡形も無くなっていた。
それとユシャンが目をさましていた。
「おはよう、ユシャン」
「おはよう!お兄ちゃん!」
ユシャンは起きたばかりだと言うのに元気過ぎる。
まあ、悪くはない。
次にカイさんが俺に近づいてきた。
「メルフィン君、お帰り。いきなりですまないが報告がある。妖精が帰ってきた」
「それは本当ですか?つまり、ファインの行き先が分かったと」
「もちろんだ。さあ、行こうか」
そうカイさんは手のひらから妖精をだし、妖精は東の方向に向かっていく。
俺たちもそれに続こうとするが、ムファンが俺の裾を掴む。
「ん? どうしたムファン」
「メル... ...無理しなくて、いいんだよ?」
無理?俺は無理なんかしてない。
だって、母さんが死んでも、俺はまだ大丈夫だ。
そんな、苦しむことなんか... ...苦しむことなんか... ...
気づいたら俺は涙を流していた。
「ほら、無理してるじゃん」
「無理なんか、して... ...ねえよ」
俺は平気そうに言うが、ムファンには本当の気持ちがバレていた。
「ごめん... ...ムファン、カイさん、ユシャン... ...俺、役立たずだな... ...」
俺は膝をつき、みんなに謝罪するがムファンは俺を抱き、ただ無言で支えてくれた。