複雑・ファジー小説

Re: 非日常の日常 ( No.11 )
日時: 2016/01/25 23:24
名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)

「はい、痛いです。なんか身体中がしびれていますって・・・・・・あ! 危ない!」
 私は妖精の腕をぐいっと引っ張った。さっきまで妖精がいたところには斧が地面に突き刺さっている。
「おお、凄い見覚えのある斧だ」
 その斧を投げたやつが言う。とても怒ったような悲しいような目で。
「なぜ、ここにお前がいる!」
「おお、久しいな、エル元気か?」
 テイルは斧を見ながらニヤニヤとする。
「おかげさまで元気だよ。でも、なぜ、ここにお前がいる」
 紫の目の女性はエルというらしい。
「テイル、この人と知り合いなのですか?」
「ああ、300年ぐらい前ぶりだがな、昔の仲間みたいなものだ。それにしても夢大丈夫か?」
 昔の知り合いより私を優先する辺りテイルらしい。ちなみに今の私の状況は白い電流が身体中をバチバチいわせながら走り、顔面蒼白、体を起こしているのがやっとだ。
「大丈夫じゃないです。ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・うっ!」
 脳裏に変なものが浮かんだ。見たことがないような、とてもとても体験したことの無いような、痛み、苦しみ、妬み。
「これは・・・・・・なに?」
「どうした?」
「わかんないです。見覚えの無い光景と痛みが脳裏に浮かんで・・・・・・うっ! 痛い! 痛い痛い痛い痛い!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
 私は叫ぶ。脳裏に浮かぶものを拒絶する。
「思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない!!!!! 嫌! 嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!」
「落ち着け! 落ち着け夢!」
 テイルは叫んでいる私の肩に触れ、揺さぶり、私を正気に戻そうとする。
「夢! 何がみえる? どんな痛みを感じる?」
「っ! ・・・・・・っ! や、山奥で薄暗い部屋でっ・・・・・・和服? を来てる人が誰かを蹴ってっ・・・・・・、ハァハァ・・・・・・」
「っ!」
「なっ」
 それだけを聞いただけでテイルと敵であるエルは目を見開く。私は続ける。
「嗤ってるんです・・・・・私に向けて・・・・・・嗤ってます。そしてほとんどの人は私を人間として見ていなくて・・・・・・人間として私を見てくれる人は“姫様”と“エル”と・・・・・・」
「もういい!!」
 私の言葉を遮ったのは敵のエルの叫びだった。悲鳴だった。
 私が痛みで顔を歪ませてエルは悲しみで顔を歪ませていた。泣いていた。なぜ、泣いているのかは私にはわからないが。エルは言葉を続ける。
「お前を、始めてみたときからある人に似ていると思っていた。変身した姿も、していない姿も、髪と目の色を除けばほぼすべてが酷似していた。そして、お前にはあの妖精が、テイルが、パートナーとしてついていた。これは偶然か? なんだ?」
「偶然だよ。偶然。変身したときに巫女が着ているような服だったのも偶然だよ。全く、エルはなんも進歩してないんだな。なあ、そんなにも、あのとき救えなかったのが悔しいの? なら、なぜ闇に堕ちた。あの娘は、雪はそんなのは望んでなかったのに」
 テイルがエルの言葉を遮って哀れむように見る。“雪”とは誰のことだろうか。
「おい、お前ら、どういうことだ。それ」
 逃げようとしていた3人と一匹はまだそこにいた。ぬいぐるみが続ける。
「こいつは、この、エルってやつは、元々こっち側ってことなのか? それに雪って・・・・・・」
 テイルはため息をつく。そして、答える。
「そうだよ。エルは、元々こっち側の妖精。でも、闇に堕ちた。今は・・・・・・堕天使とかそんな感じの部類になるんだろうね、雪は、初代魔法少女の名前だよ。もう300年も前に死んじゃった女の子だ。たぶん、今夢が思い出しているのはこの子の記憶だよ。あのこはとても凄い体験を毎日させられていたこだからね」
 なるほど。
「夢、大丈夫?」
 テイルが私の方を向き、問いかける。
「はい、大丈夫です。少し、落ち着きました。そして」
 私は心愛達の方を見る。少し凄みを聞かせた声で少しにらみながら、いかにも怒ってますよみたいな感じて言う。
「私を犠牲にしてまで自由になった貴方達にお願いがあるのですが」
 私の凄みというものを見たことがなかった彼女たちは怖じ気づいて「はっはいっ!」と声を揃える。
「私の家に、ある女性がいると思うのですが、その女性をここに連れてきてくれませんか?」
「・・・・・・・・・・・・。は?」
 私とテイル以外の全員が目を点にさせる。因みにテイルはおお、成る程と言って頷いている。
「え? 夢って確か独り暮らしじゃ・・・・・・」
 ここに来て心愛、ゆぬいぐるみでは無い人物が口を出す。それは美海さんだ。美海さんは不思議の国のアリスみたいな格好をしている。
「ちょっと隠さなくてはいけないような人物でしてね。たぶん呑気に寝ていると思うのでたたき起こしてあげてください。セミロングでピンク色の髪をした女性です」
「わかった」
「あ、戻ってこなかったら実力行使であなた方を痛め付けます。もう、あなた方を守る義務はなくなったので、何をしても構いませんからね」
「げっ」
 3人は同時にしまったという顔をする。気付いたってもう遅い。
「では、私はここで全力でこの人を足止めしときますのでよろしくお願いしますよ」
「え? 大丈夫なの? それに私たちを恨んでないの?」
 美海さんは率直な疑問を私に突きつける。私は微笑む。
「恨んでますよ。私はこんなに辛い痛みを味わったのにあなた方はなーんにもならないでピンピンして、やった! 自由だ!! 何て言ってましたからねー。でも、ある程度私のにもおちたのでここは、ウィンウィンということで処理しときましょう」
 すると心愛がふっと笑った。
「あなたはどれだけ優しいのかしら」
「さあ、では、お願いしますよ」
「ええ、あなたも、お願いね」
 心愛の言葉が終わると共に3人は出口へと走り出した。敵であるエルは呆然としていた。