複雑・ファジー小説
- Re: 非日常の日常 ( No.13 )
- 日時: 2016/01/21 20:01
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「んっ・・・・・・」
そんなことをいいながらさっき地面に倒れこんだ肉体は起きあがる。髪の色は銀から黒に、目の色は赤から黒に変わっていた。もうあの娘じゃないか、肉体は口を開く。ニヤリと自信満々の笑みで。人を少し不安にするような笑みで。
「やぁ、久しぶりだな。エル」
「・・・・・・・・・・・・。もう会えないと思ってた」
私は悲しく微笑む。
「我のこと誰だかわかるか?」
「分かる。雪だよね」
ああ、懐かしい。声は少し違うけど、声のトーンはおんなじた。お腹に響くような低い声。人を見下す勢いで自信が溢いている声だ。
「僕は傍観を決め込むとするか」
そう言ってテイルは後ろに下がった。空気を読んだというかこの場合は少し逃げるような感じだ。
「え、テイルお久しぶりー! って来ないのか? てっきり来るのかと思っていたが」
雪が残念そうに眉を下ろす。
「別にそこまで僕は雪になついてなかった」
バッサリ切り捨てるな・・・・・・。この光景は本当に懐かしい。私は1滴だけ涙を流す。ほんの、1滴だけ。
「雪、ごめん、私はあなたの敵になってしまった。だから、あなたを殺す」
勝手に口が動いた。
!? なにこれ。今の私の本心の言葉じゃない。殺したくない。そもそも私は人を殺したくない。
「なんだ? エル、すごい殺る気だな」
雪は私が驚いていることに気づいていないようだ。いま、私はどんな顔をしているのだろう? ニヤニヤと笑っているのだろうか? “操られる”のは嫌だ。助けてよ、気づいてよ。
「でしょ、・・・・・・行け」
また、口が勝手に動く。とても不快だ。そして私の言葉にしたがってさっき私が召喚してしまった獣が、真っ黒いドラゴンがズシンと地面を響かせながら歩く。雪に、向かう。ああ、黒の力には敵わないのか、私は、制御できないのか。惨めだな。
「おお、初っ端からこんな獣か。すごいな、テイル! これは自己防衛だよな! 殺ってもいいんだよな!」
雪がテイルに大声でそう聞く。テイルは面倒くさそうに答える。
「いいよ、ドラゴンをやっつけて」
「やった」
そうして嬉々として雪がドラゴンに向かって走る。ドラゴンはターゲットを雪に絞り混み、火を吹く。当たったら即死の炎。確か1000℃くらい。いや、それよりもっとか。それを雪は魔方陣で囲み氷に変える。案の定氷は重いのでドラゴンは重さに耐えきれず傾く。その隙に雪はどっかから取り出した長さ2メートルはあるであろうなっがい日本刀で斬ってしまった。あっという間だった。さすが初代。動きに無駄が無さすぎる。斬られたドラゴンは氷のように一瞬固まり、パリンと音を立てて壊れ、雪のように分裂し、粉々になり無くなってしまった。
「さすがだね」
私は、正確に言うと誰かに操られている体は楽しそうにワクワクしながらそう言った。
「なあ、エル」
雪は私を睨む。すごい形相だ。
「なぜ黒に染まった、闇に落ちた。姫様は、姫様はどうした」
やっぱりこの質問はするよな。わかってた。
「ははっ! そんなの当たり前でしょ! こっちの方が楽しそうだったからだよ! それに今も楽しいし!」
どこがだよ、今全然楽しくないよ。しかし私は嬉々とした表情で狂ったように楽しそうに笑う。
「あと姫は、殺した。死んだよ」
「なっ!」
これは、本当のことだった。