複雑・ファジー小説
- Re: 非日常の日常 ( No.18 )
- 日時: 2016/02/21 20:44
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「うわお、凄いや」
私がそう呟く。いわゆる自画自賛だ。しかし、いいだろう。その後に誰にも気づかれないようにこう呟いた。
「だけど、全部は戻ってない」
と。私は頭をフル回転させ、さっき思い出した記憶を思い出す。そして、思い出した。
「っち、あいつか」
この言葉は思ったよりも強く言ってしまったようで、
「ん? どうした?」
と、エルが私に問いかけてきた。それを私は、内心慌てながら外見は何もないように、落ち着いているように装って答える。
「いえ、なんでもありませんよ。それより、エルさんこれからどうします?」
「え?」
私が言ったことが少し理解できなかったのか、彼女は首を傾げる。だから私は詳しく説明しようと口を開く。
「何ってりゃあ・・・・・・」
「これからエルが、こっち側につくか、そのままそっち側にいるかってことだ」
と、そこで今まで傍観に徹していたテイルが私の言葉を割った。
「ああ、なるほど・・・・・・」
エルはなにを問われたのか分かったようだ。テイルが言葉を続ける。
「さっき夢が言った通り、お前が殺したと思っていた姫は生きている。体たらくに、だらしなく、ムカつくほどまったりと生きている。これは、まぎれもない事実だ。僕も知ったとは驚いたがな。そして」
テイルはエルの体を、髪の毛をまじまじと見る。
「僕が見た限り、お前は今、完全には闇に染まってない。お前が完全に闇に染まっている時は髪の色が——黒かった。真っ黒だった。でも今、昔の髪の色——金髪がある。それどころか、そっちの割合の部分のほうが多い、ということは、今、お前の体は闇に飲まれるどころか、闇に勝っているということだ。努力次第こっち側に簡単に戻ってこれる。だから——どうする」
テイルは不安そうな顔でエルの顔を見る。そして、エルは困ったように少し声を掠らせるように、叫ぶようにそう言った。
「無理だよ・・・・・・。 無理、いくら操られていたとはいえ、姫様を殺そうとしてしまった。これはまぎれもない事実なんだよ、だから私は——」
「え? 私そんなの全然気にしてないけど?」
と、そこで誰かがエルの声を遮った。その声の主を見て私は安堵の息を出す。
「おお・・・・・・来たか」
「やっほー! エルおっ久しぶりー! 元気ー?」
その女性はニコニコと笑っている。もう少し相手の感情を読んで行動してやれと思うがそんな思いは彼女には到底届いてくれないだろうから何にも言わない。
「え? ひ・・・・・・姫さ・・・・・・ま?」
そう、その声の主はピンク色の腰まである長い髪の毛、透き通るような白い肌、見とれてしまうような美しい顔をしていた。恰好は淡いピンク色のブーツ、白いなぜか私のワンピースを着ていた。私のワンピースを着るな。確かあんたのあっただろ。
エルは硬直している。
この廊下の入口に近いほうを見ると心愛達が走っていた。どうやらアリス——姫さんにおいて行かれたらしい。私たちのところにようやくつくと息を整えながら、ワイシャツに短パンとなんともつまらない格好の姫莉が言った。
「この女の人何なの・・・・・・あんたの部屋でスウェット姿で腹出して寝てたくせに事情話したら光の速さで着替えて外出ちゃうって・・・・・・」
「ああ、お疲れ様です。あの人は姫さんですよ」
私は何でもないことのようにそう話した。
「え? 姫さん? なんの?」
心愛がわけわかんないと吐き捨てるようにそう言う。あれ? 知らないのかな。まあ、知らなかったら聞かないか。
「何って、天界の姫様ですよ。私たちが変身するように頼まれた、妖精さんが住む天界の姫様です」
「「「は・・・・・・はああああああああああああああああああああああああ!?」」」
おお、見事なハモリだ。いや、感心していることではないだろう。というかこの人たちあのぬいぐるみから聞いてなかったのかな? だとしたら本当使えないぬいぐるみだ。
「驚くのもわかりますが、静かにしてください。詳しいことは後でいくらでも話しますから。だから、今はあの人たちを見守ってましょう」
私は強制的に三人を黙らす。そして、エルの奪還作戦が始まった。