複雑・ファジー小説

Re: 当たる馬には鹿が足りない ( No.1 )
日時: 2019/02/10 02:33
名前: 羅知 (ID: u5ppepCU)

prologue〜当たる馬には××が足りない〜 


 私立貴氏高校1年B組の馬場満月(ばばみずき)は、極度の当て馬体質である。
彼自身は己のその性質をいたって真っ当なものであると考えているが、彼のその性質は常人の域をとうに超えている。
彼の想い人へのアプローチは凄まじい。花束を渡したり、ガードマンという名のストーカー行為をしたり、ラブレターといって、十数枚にも及ぶ謎の暗号を下駄箱においたりと、細かいものを含めればそのアプローチは千を軽く超える。
これでは彼の想い人も困りものだろう。
 しかし彼のこういった数々のアプローチは、彼の想い人にとっては良い方向に、彼にとっては裏目に”必ず”作用する。彼のアプローチは決まって所謂”もどかしい奴ら”や”くっつきそうな奴ら”にとって、素晴らしすぎるアクシデントとなりーー

「ま、た、フラれたっーー!!」

ーー彼の失恋へと繋がっていくのだ。その確率驚異の100%。
 
 しかしながら、彼がこの学校に来たのは、ほんの一ヶ月前。
この”彼”の存在を知らない奴はいないが、かつての”彼”のことを知る者はいない。

かつて”彼”の隣りにいた”彼女”のことを知る者は誰もいないのだ。


 この物語は、当たる馬というには、鹿が足りない。
実に馬鹿馬鹿しい物語だ。

ーーーー馬鹿馬鹿しくて、痛々しい物語だ。




+馬場 満月+ ばば みずき
貴氏高校1年B組に属す。驚異の当て馬。厨二病がかっている。
転校以前のことを知る者は誰もいない。主人公。

Re: 当たる馬には鹿が足りない ( No.2 )
日時: 2019/02/10 02:32
名前: 羅知 (ID: u5ppepCU)
参照: http://http://blogs.yahoo.co.jp/ilovesekai/63729417.html

【第一馬 人類万事塞翁が馬】


「ああっ!!また俺の、この暗黒の波動に耐え切れず一人の少女が俺の元から去ってしまった、か……」
「おい馬場。お前の発言で僕の耳が腐るから普通に言え」
「悲しいなあ……、濃尾君慰めてくれないか」
「よしよし」

 コイツーー馬場満月の周りでは、こんな風景が毎日繰り返されている。





ほぼ一ヶ月、彼はこの学校へ転入した。






「このクラスに今日から転入させてもらう馬場満月だ!!みんな仲良くしてくれ!!」

転入初日彼はそう言って黒板に自分の名前を達筆な字で大きく書いた。 そしてクラスの皆の方を向いてにっこりと笑った。彼のそんな柔和な態度にクラスの皆はすぐに彼と打ち解けた。少し変わっていて、いちいちオーバーな反応が目立つ彼はまるでテレビに出てくるコメディアンのようで"転校生"はあっという間に"人気者"となった。

正直言って、"どうでもよかった"。

僕は当時学級委員で、学級委員の立場として彼にこの学校のことを教えたり、案内等を任されたがやっぱり"どうでもよい"のには変わらなかった。僕は学校の"情報屋"だ。僕にとって"価値"のあるもの。それは僕の"興味"を沸かせられるものだ。馬場満月は、その点ただの"転校生"でしかなかった。

否。

彼の"笑顔"には、若干の苛立ちを感じてはいたけれど。
しかしその"印象"は、がらりと変わる。

 


コイツが転入して、二週間程経った頃だ。

 

「ああ、また一人の少女が俺の元から去った、か…」

という言葉を二週間で二十回近く聞いてる事に気が付いた時には、自分の耳を疑ってしまった。

(アイツ、一日に何回フラれてんだ……?)

気になって調べてみると、驚くべき事が分かった。
コイツが告白して、そしてフラれてきた女子達は、必ず別の噂されていた男子と付き合っているのだ。それもコイツが告白してから一週間以内に。
一体どんな奴なのだろうと思った。学校随一の情報網を持っている僕以上に早く、だれよりも早く”くっつきそうな二人”を”くっつける”コイツは。


(……まあ、只の”馬鹿”だったんだけど)

 ”コイツ”はただただ惚れやすいだけだ。そしてよく当たる馬なぶん。
それは、コイツに近付いて、腐れ縁のように同じクラスになって、普通に一緒に馬鹿やって、こうやって昼食一緒に食べて、コイツの”親友”といえるポジションについて。早六月。
よく分かった。

「あはは…濃尾君ありがとな。元気出た」

「…つーかお前。よくそんな馬鹿みたいに当たってられるな。そんあ当たってたら、リアルな馬だったら死んでるぞ」

「?……言ってる意味が分からないが…俺は死なないぞ?」

”コイツ”の馬鹿さ加減には、いい加減腹が立つ。僕が言ってるのはそういう事じゃなくて。

「…お前、そんなにフラれまくってんのに、傷つかねーのって聞いてんだよ。クソ野郎」

僕がそう言うと”コイツ”は一瞬真顔になり、そして噴き出して笑った。

「心配してくれていたのか?濃尾君は分かりにくいからな…もう少し優しく言ってくれないと俺だって分からないぞ?」

「別にそんなんじゃ」

「それに、大丈夫だ」

「……」

「傷付いた分だけ人は強くなれる。それにその傷だっていつかは治る。
…濃尾君、心配してくれてありがとな」


(分かってたよ…。”コイツ”がそういう人間だって)

 だからこそ僕はコイツが心配で堪らない。
この学校の情報屋たる僕は、人の事を知らないと安心できない。むしろそんな性格だからこそ僕はこの学校随一の情報屋になったのだから。
だけどコイツは別だ。僕はコイツのことはほとんど知らない。コイツが転校してきたその日から僕はコイツのことを調べ続けてきたけれど、前いた学校、家族関係、何県に住んでいたかさえ〝過去”のことは全然分かっていないのだ。
 ふとした瞬間コイツと一緒にいると安心する。だけど心のどこかで不安になる。
ーーーこれが全部”ウソ”だったら、と。
安心できるのに安心できない。こんな感覚は初めてでとてもーーーー

コイツの腕には白い包帯が二重、三重にもグルグル巻きにされている。
きっと、多分、僕がこんな風に思うのは”あの日”の出来事が要因しているのだろう。
ーー”あんな姿”を見てしまったから。



降り始めた雨を見ながら、僕は一ヶ月前の”あの日”を思い出す。


Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.3 )
日時: 2017/08/19 15:40
名前: 羅知 (ID: bCe2zMsP)

 七か月前の”あの日”も今日と同じように雨が降っていた。ざあざあと自分に降りかかってくる風雨から逃げるように僕は倉庫に入る。
この時僕は体育祭の実行委員をしていて、物を運ぶために倉庫にいかなければならなかったので図らずとも目的は達成したのだがーーーこの雨だ。

どうやって戻ろうか。

「……濃尾君か?」

ふと名前を呼ばれ、倉庫の奥の方を覗くと”馬場満月”はいた。
雨宿り仲間を見つけた事が嬉しかったようでにっこりと笑って。

「その声は……馬場満月…だったっけ?…僕の名前、覚えてたんだ?」

対する僕も笑顔で対応する。彼とは違い完全な作り笑顔で。
”人には基本笑顔で接して、一線に踏み込みながら、踏み込ませない”この十六年間で学んだ処世術だ。この”笑顔”で僕は情報を集め、そして売りさばいてきた。なのにーーーーー

「勿論だ!!大事な仲間達の名前を忘れる訳ないだろう?」

ーーコイツの”笑顔”の前では、僕の”偽物の笑顔”は霞んでしまう。
その”笑顔”を見て、歪みそうになる口元を抑えながら内心毒ずく。

(愛とか、恋とか、友情とか。なんてしょうもないものに、コイツは”全力でいるんだ?…本ッ当に”気色悪い”……)


 そう、この時点では僕はこの”馬場満月”という男が大嫌いだった。


 "愛情友情至上主義の博愛者"----それが僕が馬場満月のことを調べる中でついた"印象"だった。興味がなくあまりコイツのことを知らなかった時には分からなかったけれど、コイツの"ソレ"は他の人間と一線を越えて"異常"だ。

例えば、数日前のことだ。

明らかに"目立っていた"コイツは、やはり"悪目立ち"もしてしまっていたようで、素行の悪い上級生数人に囲まれていた。どうやら、その数人の一人の彼女?に告白してしまったらしい。その話が事実かどうかは分からない。ただ明らかに目立っているコイツをソイツらが殴りたがっていたのは分かった。
周りの人間が心配して見守る中、コイツはいつものように馬鹿みたいに笑ってその上級生共へ言った。

「先輩方も、俺の"アプローチ"を受けたかったのか?」
「「「は???」」」
「恥ずかしがらなくてもいいぞ!!俺の煌めく魅力に惹かれてしまう気持ちは分かるからな!!安心してくれ!!俺は全人類を愛している!!!先輩方にも随時アプローチをかけにいくからな!!!」

その場にいた全員の口が、コイツのその発言でポカンと開いた。何を言っているんだコイツは。誰もがそんな目をしてコイツを見た。あまりに場違いなその発言と、態度に素行不良な上級生共は"気色悪さ"で後ずさってそのまま逃げていった。

結局その騒動は、その先輩達への教師による指導で幕を閉じた。当の本人は分かってるのか分かっていないのか「今度は俺から会いに行くからな!!」なんて快活に笑って、教師に連れてかれる先輩共に手を振っている始末だ。

こんな奴はおかしい。どうして周りの人間は、"明るくて良いやつ"だけでコイツのことを済ませられるんだ?

”驚異の当て馬”であるコイツの体質には興味があったが、あくまで”体質”にだ。個人的な性格については一切馴れ合えない。

愛とか恋とか友情を至上とするコイツの人間性を軽蔑していた。
”驚異の当て馬”であるコイツの体質には興味があったが、あくまで”体質”にだ。個人的な性格については一切馴れ合えない。

と、そんなことをコンマ一秒で考えて。
僕は”馬場満月”と会話する。内心を悟られぬように。

「…はは、ありがと。ところで馬場はどうして此処に?実行委員じゃなかったよね?」

「ああ、俺は…”アプローチ”の準備をしていたんだ。少女達をガッカリさせる訳にはいかないからな」

-----僕はお前の人間性にガッカリだよ、と零れそうになる言葉を飲み込んで、もう一度”笑顔”を繕う。
”この男”はどれだけ僕の”笑顔”を崩させる気だろう。

 この頃から既にコイツは”当て馬”として学校中に知られていた。
当然だろう。何せコイツは転入初日から、”アプローチ”を行っていたのだから。

「…馬場、そんな事してて楽しいの?」

ふと疑問に思った事を聞いてみる。きっと期待するような答えは返ってこないと分かっていながら、それでも。もしかしたら少しは楽しいことが聞けるかもしれない、そんな風に思ってなんとなく僕はコイツに聞いた。

案の定。

「ん?…楽しいかどうかはわからないが、コレは俺にとって生きがい
だからな。生きているからには、人を愛さなければな!!」

(……聞いた僕が馬鹿だった)

分かっていた癖に、無様にも何か違う返答を期待していた自分に絶望して、隠しきれず頭を項垂れる。

そして。



項垂れた頭を上げた先に映ったその。



白い白い包帯に。


------------僕は引き寄せられてしまったのだった。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.4 )
日時: 2019/02/27 06:35
名前: 羅知 (ID: nQ72gOzB)

「馬場、その包帯、何?」

 頭を上げた先の袖から少し見えるその白い白い包帯に、疑問を感じ思わず問う。
何となく”そこだけ違う”と思った。確かにこの男は厨二が入っているけれど、”そういうの”ではないのだ。
いや、そもそもそういう意図なら袖の中に隠している必要はない。もっと分かりやすい部位にする筈なのだ。

ーーそれならば何故隠しているんだ?

(…これは、チャンスかもしれない)
この男の”弱み”を知ることができる。そう思うと胸が高鳴った。
これで、あの”完璧な笑顔”を、歪めさせれる。
僕の、言葉、一つ一つに、”あの顔”が崩れる。
ーーーなんて素晴らしいんだろう!!


「……ねえ馬場、早く答えなーー」


が、その刹那。
僕は自分の考えがあまりにも”甘すぎた”ことを知る。




               「”ヤ メ ロ”」




 初めその声が誰のものか、認識できなかった。

 だけども認識する必要はなかった。

 声の持ち主は、”目の前”にいたのだから。




   ”目の前で僕の首を絞めているのだから”



え   嘘   やめて
      死んじゃう   痛い      痛い                  い                                       き      
  くるし

    い   た         も                               
                     誰か

た    す  けて    ち

        ごめ  ん   なさ    いや  

まだ  し   
 に    たく  誰か                                                   




ーーー死にもの狂いで暴れてもなお”目の前の男”はその首に込める力を緩めなかった。声にならない叫びも、許しを乞う声すら、目の前の男には届かない。
涙も    涎も     汗も    排泄物も             全部が混ざる。

もうなにもかんがえれない   あれ   まっくろい         め    が


   こっ  ち   を むい    た    ?



**********************************
「まあ、これくらいでいいだろう」

と、”力を緩める”男ーーーー馬場満月。
しかし、今の”彼”を見て”馬場満月”だという人間は恐らく一人もいないだろう。
火傷してしまう程に冷め切った目。
人間であるか疑ってしまうような無表情。
ーーーーまるで別人だ。

「…なんで首絞められていたのに”笑ってた”んだ。濃尾君。」

人形のようにだらりと腕をぶら下げ、開いたままの口でうわごとを言い続ける、もう焦点も合わなくなった”クラスメイト”に聞く。
返事なんか返ってくるわけないけど。

そう理解しながらも、気になって聞いてしまう。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思った。

「………………本当白くて、細くて----女の子みたいな体だな」

全身を脱がせ、写真を撮る。
この写真で脅せば、”コレ”の事はもう嗅ぎまわらないだろう。


正直言って、一目見たときから"コイツ"のことはあぁ嫌いだ、そう感じた。そんな感情は初めてで、"馬場満月"の中に、そんな感情があることを恥ずかしく思った。そんな感情を目覚めさせたコイツのことが余計に嫌いになった。コイツが離れた所で自分のことをずっと見ているのは知っていた。痛いほどその視線は刺さっていた。気持ち悪かった。自分のことを探ろうとするとその目を抉ってしまいたいとさえ思っていた。コイツの目を見ると、無性に苛つく。嫌悪だけだったらいい。そんな視線ここに来てから何度も浴びているのだから。ただコイツの目は---------


(だからって、ここまでするつもりはなかったんだけどな)


少し痛い目に合わせようと思っただけだった。こんな顔を出して首を絞めるような浅はかな真似するつもりじゃなかった。ただあの目でこの包帯をじっと見られた時、自分の中で何かがぷつり、と切れた。どうしようもなく、自分の中のコイツに対する"嫌悪"が溢れてしまって------まぁ、このくらいしなきゃきっとこの男は黙らなかっただろう。結果オーライだ。

でもうっかり強く絞めすぎてしまった。その首にはくっきりと紅黒い跡が浮かんでいた。真っ白な顔で動かないその姿は死体と相違ない。唯一違うのは、息をして心臓が動いている所だけだ。さっきまで泣き喚いていたのが嘘みたいに静かだ。






ざあざあと雨の音だけが聞こえる。今、ここには俺とコイツの呼吸の音しかしていないめじめとした空気が肌を包んで、首を絞めた俺の手にどうしようもない不快感を感じさせた。







(なんなんだよ、この感情は…………)








あぁじめじめしていて本当にうざったらしい。いっそのこと全てこの雨粒に流してしまえばいい。そう思って体育倉庫のドアを開けようとしたその時。





力強い意思を持った手ががしり、と俺の足首を掴んだ。
                
                
                 

Re: 当たる馬には鹿が足りない【狂気注意】 ( No.5 )
日時: 2017/08/19 17:03
名前: 羅知 (ID: bCe2zMsP)

 先程まで呆けていたとは思えない程、その手の力は強い。ぐいぐいと足に爪が食い込んで、血が出てしまいそうだ。反撃されるのだろう、そう思った。まぁ仕方がない、あんなことしたら誰だって相手を殴りたくなる。写真は撮った。弱みはこちらが握っている。あんな小柄な男の弱々しいパンチなんて、ダメージにもならない。
そう思って、身構えたのに。

 

”彼”は。



「…あは」





と、確かにそう声をだして彼は笑った。
”堪えていたものを吐き出す”ように。

瞬間先程の彼の”表情”を思い出す。
苦しそうにもがく彼が瞬間見せた、”あの”表情。気味の悪い、嫌悪の中に見せたあの--------"何かを期待するような瞳"。見間違いではなかった、勘違いじゃなかった。あの鳥肌が立つような"気持ち悪さ"は!!!

 そうこうしてる間にも彼は”笑い続ける”。狂ったように"笑い続ける"。まるで壊れた機械のように、鐘を鳴らした時の残響のようにその声は俺の頭の中に響いてくる。気持ち悪い。気持ち悪い。入ってくるな。そう思っていても、耳を塞いでいたとしても、その声から逃げることは出来ない。

顔は、まだ見えない。だけどもう分かりきっている。


こんなにも笑い声は、響き続けているのだから。



「…なあ、もうやめてくれ」
「あははははははははははッ!!」
「……もう、分かったから」
「あはははははははははははははッ!!!」
「………あやまるから!!!」





呪いのようなその笑い声に耐え切れず、思わず叫ぶ。

雨の音は聞こえない。

止んだのではなく、その笑い声のせいで。

しかし、そんな状態でも俺の精一杯の叫びは届いたらしい。
そこでようやく彼は笑うことを止めた。

真顔でまっすぐこちらをみて首を傾げる。笑い過ぎて涙も出てきていたのだろうか。その目は真っ赤だ。何を言っているのだろう、そのような顔で彼は純粋に、子供が親に質問するかのような純粋さを持ってして俺に言った。




「………なんで?」


 あっさりしたその言葉に拍子抜けした。


のもつかの間。

俺が反論する間もなく彼は次の”言葉”を口にした。

否。

”それ”を”言葉”と呼ぶのは些か甘くみた表現だろう。

それは。


「ボクは馬場に首を絞められて本当に気持ちよかったのになんでそんなコトいうのさ別にボク本当はあと五分くらい首絞められててても平気だったのになーんて嘘嘘流石に死ぬよあと五分も首絞められてたらどう?いまの冗談面白かった?馬場には面白くないよね分かってるよああッその顔本当にイイもっと蔑んでもっと軽蔑してうんさっきはごめんね本当に死ぬかと思って思わず抵抗しちゃった恐怖しちゃった全然死んでもいいのにねむしろ殺して今の馬場なら全然オーケー!!歓迎するよああっ本当素晴らしいよね嫌悪って嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪嫌悪さて今何回嫌悪といったでしょう?」


先程の”呪いの言葉”と何ら変わらない。
むしろ明確にこちらに向けられている分悪意が増してると思った。




嬉しそうに、楽しそうに、悦びに溢れた顔でこちらを見る目。



気が付けばこちらの顔も笑っていた。
あれほど感じていた嫌悪感も、鳥肌立つような寒気も、いつの間にか消えていた。一周まわって全てがどうでもいい。ああコイツは"こう"なんだ。そう理解することで、自分の中にあったそれらはどろどろと溶けていった。




「あは、は、は…………」



今だけは。


笑っていようと思った。


”自分と同じように”壊れてしまった彼と一緒に。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.6 )
日時: 2016/08/06 16:05
名前: 羅知 (ID: HCf49dnt)

****************************************************************

頭が冷えて、冷静になってみると先程の自分の様子を思い出して血の気が引いた。
”また、やってしまった”、と。

 僕ーーーー濃尾日向は”嫌悪”に興奮する特殊嗜好を持っている。
一度、興奮してしまうとその熱はすぐには収まらない。我を失い、理性は砕け、先程のように笑いが止まらなりくなり、異常な程饒舌となる。
 自分ではどうしようもできないのだ。この”衝動”は。

(クソ……高校に行ってからは”成って”なかったんだけどな)


「随分と表情がクルクル変わるな。さっきまでの君は演技だったのか?」

 その声で気付く。自分が先程”馬場満月”に首を絞められていたという衝撃の事実に。

というか”アレ”は本当に”馬場満月”なのだろうか?
姿形は確かに馬場だが、雰囲気と表情がまるで違う。

表情は、さっき自分の首を絞めていたときまったく変わらず冷め切っており、雰囲気は普段の明るいオーラが嘘みたいにない。

「……お前、本当に、馬場?」

「それ以外の誰だと?…君こそ、本当に濃尾君なのか。さっきの”狂人”のような君は一体何者なんだ?」

「………お互い、結構な”モノ”抱えてるみたいだね?」

 僕がそう言うと馬場は心底嫌そうな顔をしながら、こちらを一瞥した。

 ああ、ダメだ。

そんな顔で見られたらーーーーー興奮してしまう。
さっきみたいに、僕が”僕”でなくなってしまう。
ーーーー気持ちいい。その視線が、その蔑ずんだ目が、最高に!!


「−−−もう一回”絞めて”やろうか?」

そんな僕の思考を見透かしたかのように、そう言う馬場。
その言葉に全身が歓喜する。

「本当、に?」

「ああ。けど”条件”があるーーー今日”見たこと”を全て忘れろ。あともう俺の事は詮索するな」

やはりそうきたか。ある程度予測はしていたけどーーーーこんなショッキングな出来事、忘れたくても忘れることができなそうだ。
それにーーーーー

「もしーーーNOと言ったら?」

「そうだなーーーーまあ、首は絞めないし、”コレ”が学校中にばらまかれることになるだろうな」

そう言って、呆けた表情のまま半裸で座っている僕の写真をチラつかせる馬場。
わざとなのか、その表情はいつもの”馬場らしい”笑顔だ。
ーーー目の前の”この男”と”馬場満月”が確かに同一人物だと思い知らされる。

「ははーー断らせるつもりはない、ってことか」

「断るつもりだったのか?」

 牽制するかのように、そう威圧する馬場。
 クラスの中でも高い部類に入る馬場の身長。それに比べ、頭二つ分小さい僕。
体つきだって完璧に負けている。
腕の一本二本折られるかもしれない。”コレ”を言ったら。
ごくり、と生唾を飲み込む。

「いやーーそんな訳ないけど。譲歩させてくれてもよくない?」

「−−−何がお望みだ?」

 意外にも譲歩は可能だったらしい。その返答に少し顔を綻ばせる。
ーーまあ、提案が受け入れられるかどうかは別だが。

「まあ、ちょっとしたコトだよ」



「僕、濃尾日向は”馬場満月”というイメージを守るために全面的に協力しよう。僕の持てる全ての情報をもってフォローしよう。今日あったことは絶対に誰にも喋らないし、詮索もできる限り、最低限におさえよう、なにイメージ保護に必要な最低限の情報だけさ」


「だからさ」



「−−−−お願い二つ聞いて欲しいんだ。一つは”首絞め”をあと一回じゃなくて、週に一回、いや二週間に一回行ってほしい。こう見えてもうら若き男子高校生だから。そこら辺の事情は察してほしい。あともう一つーーーー」




 そこで大きく息を吸う。
心なしか馬場は少し笑っていた。僕の”譲歩”に笑っているのだろうか?


「…”馬場満月の親友”というポジションを僕に贈呈してくれないか。頼む、お前という人間の傍にいたら、きっと、世界がもっと面白くみえるようになる気がするんだ、ねえ、頼むよ」








「”ミズキ”」

 

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.7 )
日時: 2019/02/10 02:36
名前: 羅知 (ID: u5ppepCU)

 その”言葉”に馬場は小さく肩を揺らし僕に問う。
いつの間にか笑顔は消えていた。

「…その、”呼び方”、なんだ?」

「コレ?…やっぱりお前を”馬場満月”っていうのは、ちょっと抵抗があってさ。お前が嫌ならやめるよ?」

「いや…別にいい。……譲歩の話に戻るが…”受け入れよう”」

「ホント!?」


 そう言って喜んだ僕を鼻で笑いながら、話を続ける”ミズキ”。
どこか、あきらめたような、空気が抜けたような乾いた笑い方でこちらを見る。

「そういうことなら、俺も筋を通さなければならない。”ヒナタ”は俺の”親友”になるのだろう?なら」





「これくらいの”ご褒美”はあげなきゃーーーな」



 その瞬間、彼は腕に巻いていた”包帯”をほどいた。先程あそこまで隠していたのにもかかわらず、なんの躊躇もなく。

ああそうか。

彼はコレをするために、”あきらめた”のか。
”僕に包帯の下を見せないこと”を。

こんなにもおかしい僕のために。


「気持ちいいか?……”ヒナタ”!!」


”ミズキ”は首を絞めてくれる。
その”白い白い包帯で”


”ミズキ”は高らかに言う。首を絞めながら。
本当に本当に”優しい”顔で。



「お前は”おかしい”!!どうしようもなく”おかしい”!!…でも、それは俺も”一緒”だ…俺はその”おかしさ”に賭けようと思う…俺はお前を信じるよ……”濃尾日向”ではない”ヒナタ”…」



意識が飛びかけるなか、少しだけ。

彼の”何者でもない”笑顔と、包帯のしたの”ソレ”が見えた。

*******************************

 降りしきる雨の中、遠い”あの日”を思い出す。

 今でも、あの日の出来事を信じられずにいる僕はその”姿”が”ウソ”ではないと信じるために”彼”を揺さぶる。


「…お前、そんなにフラれまくってんのに、”傷つかねー”のって聞いてんだよ、クソ野郎」

 ”傷”という言葉に反応し、真顔になる”彼”。
”ミズキ”の眼がコチラを静かに睨む。


”あの日”包帯のしたに見えたもの”ソレ”はーーーー無数の”傷”だった。
ありすぎて、どれがどの年代にやったのか分からない程の。

 だから、僕は確かめる。その”傷”を使って。


 ”馬場満月”という”コイツ”は馬鹿に違いないーーーーーーーだけど”ミズキ”は違うのだと。
僕だけが知ってる”ミズキ”は違うのだとーーー確かめたいのだ。


 僕たちの”関係”は誰かが見たら、酷く歪で狂っていて不安定なものにみえるかもしれない。

でも誰にも知られていないんだ。

僕だけが知ってるんだ。

だからーーーーいいんだ。


 この不安定な感覚を抱きしめながら、僕は今日も振りしきる雨を見つめる。

また放課後”彼”にあの倉庫部屋で会えることに、歓喜しながら。



++++++++++++++++++++++++++++++++
ーーーー第一馬【人類万事塞翁が馬】 一話【止まない雨】→【病まない編め】



   +馬場満月+ ばばみずき
 貴氏高校1年B組に属す。驚異の当て馬。厨二病がかっている。
転校以前のことを知る者は誰もいない。濃尾日向が親友。主人公。

   *濃尾日向* のうびひなた
 貴氏高校1年B組に属す。学校一の情報屋。愛想もよく、学校の先生生徒からも信頼されている。馬場満月が親友。語り部の一人。

   +ミズキ+
 馬場満月の”もう一つの姿”。二重人格ではない?冷酷で目的のためなら手段は選ばない。”おかしさ”に反応する。語り部の一人。

   *ヒナタ*
 濃尾日向の”もう一つの姿”。二重人格ではない?嫌悪を愛しており、痛めつけられることが好き。”嫌悪”に興奮すると”成る”。語り部の一人。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.8 )
日時: 2016/05/04 15:54
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=564

○報告と挨拶

 現在機械が壊れてめちゃくちゃあせっている羅知です。ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。

 最初のタイトル→本当のタイトルのようにラストでまとめてみたのですがいかがでしょうか。次からは話の最後の部分にまとめの一文をのせたいと思います。
今回はこんな感じです。

 ちじれてしまった糸と糸。縦と横のその糸を、編んでも編んでも出来上がるのは歪な出来損ない。止まない雨など存在しない。病まない編めなど存在しない。

 訳わからないとは思いますが、一応、話のオチ、真相として書いてるつもりです。その下にあったキャラ紹介は毎回少しずつ増やしていく予定です。


 一つ宣伝を。上記のURLでこの話のキャラ募集のスレに飛びます。
いつもよりテンションの高めの羅知が、出迎えておりますので興味が沸いてくれた方はぜひ投下していただけるとありがたいです。
どしどし応募待ってます。

 次回からは、そのスレで投下されたキャラが出てきます。

 それではまた、第一馬の終わりで。
失礼しました。


Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.9 )
日時: 2016/05/01 00:25
名前: 日織 (ID: x2W/Uq33)

はじめまして!
オリキャラを投稿させていただいた者です。
小説読みました。ミズキとヒナタのちょっとヤバイ感じがツボで、とても読んでいてドキドキしました!
次回も楽しみにしてます!

返信 ( No.10 )
日時: 2016/05/01 08:46
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

>>9 えと…、あの…、この小説内ではまともに喋ろうと思ってたんですけど……いいですか?


 羅知「ありがとうッ!!!嬉しいよ本当にッ息ができなくなりそうだよ!!あはははッ!!寂しくて寂しくて死にそうだった…俺の小説なんて誰も見てくれてなんかない…って、もうあきらめれば?…ってずっとずっとずっとずーーーーっと!!!ありがとう、君がいてくれて俺はーーーー本当に幸せだ!!!」


と、感謝を”ヒナタ”風に伝えてみる。はい、ヤバいのが好きなんです。ドキドキして下さったなら幸いです。オリキャラありがとうございます。小鳥ちゃんのキャラは個人的に好きです。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。

 

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.11 )
日時: 2016/06/08 02:04
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

更新遅れて大変申し訳ありませんでした。
↓二話になります




第二話「重い愛」

「日向くんッ!!ボクと協力しない?」

 僕の目の前でそう言い放った少女にしか見えない”少年”−−−椎名葵のその一言により僕達は巻き込まれる。

 −−−くだらない青春時代に。

 これはそれなりに平和だったかもしれない僕と馬場の七か月間。
その始まりのはなし。

****************
ーーーとある昼放課


「は??…えっと、シーナ、何言ってんの?」

「だーかーら!!言ってるでしょ、協力してって」

「うん……それが分かんないんだけど」

 シーナこと椎名葵は、変わり者ばかりいるこのクラスの中でも特に目立つ存在である。
見た目に問題は…ない。”女子の制服”を校則を守って着こなしている。問題は”彼”の性別だ。彼は男だ。れっきとした。つくべきものはついているし、ついてないものはついていない。

 所謂”男の娘”という奴だ。

「あのね!!日向君さあ、二週間くらい前から満月くんと仲イイじゃん、気持ち悪いぐらいに!!…んもう、悔しくないのッ??」

「…何が?」

「…馬場くん、最近ケートとつるみだしたでしょ!!取られちゃうよ!?…っていうかボクが耐えられないんだけどー!!」

 二週間前の”あの日”、僕と馬場は”親友”になった。
そして次の日から、僕と馬場は一緒にいるようになった。周りに自分達が”親友”だと認識させるために。

(ケート……ああ尾田慶斗ね。確か幼馴染なんだっけ…。でもその件については僕もあんま分かってないんだよな…)

 尾田慶斗と馬場が最近よくつるんでいることは勿論僕も知っている。…僕だって耐えれてる訳じゃない。馬場本人にだって聞いてみたのだ。なのに。

(…アイツってば、僕がそっち向いてても、直接聞いても、”苦笑い”するぶんなんだよな…。”ミズキ”も最近出ないし)

 苦笑いしているってことは、詮索するなってことなのだろう。
”それ”を僕が詮索するのは、”約束”を破ることになる。
だけど。


「−−−シーナ、昔、尾田慶斗となにがあったの?そんなに拘っているのなら、ずっと近くで見てればいい。なのになんでそれをしないの?」

「それ、は…」




「−−−−−いつまでそんな”振り”をするつもりなの?」


”偶然”知ってしまったのなら問題はないはずだ。
ーーー僕は”情報屋”。”依頼”には応えるべきだ。


「いいよ。”依頼”を受けてあげる」

「……」

「お代は、君の持ってるその”情報”。君と尾田慶斗の昔のはなしでも何でもいいよ。…安いもんでしょ、っていうかほぼほぼタダだよね。誰かの弱みが知れるわけでもないんだから」


 少し怯えた顔でこちらをみる椎名葵。同じクラスなんだから知ってる筈だ。”情報屋としての僕”の苛烈さなんて。
いつもの態度が”素”ではないことなんて分かっているだろうに。


 僕は笑顔で椎名葵に言った。


「知ってる事、全部話せ」

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.12 )
日時: 2016/06/06 02:33
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

「ホントにさ…日向君って”ギャップ”がありすぎ」

 そう言って諦めたように、僕の目を見つめる椎名。先程までの怯えた表情はただ顔がこわばっていただけだったらしい。
その顔はさっきまでの彼より、自然に見えた。

「…ギャップ?」

「そう”ギャップ”。…そんな女の子みたいな可愛い顔してて、それこそボクみたいな恰好したらまんま女の子!!って感じなのにさあ……急にとがったナイフみたいにボクの”大事なトコロ”刺してくるんだもん。びっくりしちゃった」

「……女の子みたいとか言わないでよ。気にしてるんだから」

 僕のその言葉に噴き出す椎名。
 …どうやら僕の”ナイフ”はとんだなまくらだったようだ。
じゃなきゃこんな顔されるはずない。
もっと苦しそうな顔にさせるはずだったのに。


 ーーーーもっと僕のことを”嫌い”になるはずなのに。

「それで?早く話してよ……”お代”の話」

 自分のそんな動揺を誤魔化そうと、話を急かす。
それでようやく彼もその”顔”を止め、真面目な顔になり。


 話し始める。


「…ボクとケートの話ねえ…。ふふふ今でも思い出すと笑えてくるんだ。一緒にいた頃は幸せだったから」

「………」

「あの頃に死んでれば、今でも幸せだったのかな?…ケートは優しいからなあ…毎日墓参りにきてくれるんだろうなア…ふふ」


 うっとりした顔でそう話す彼は”異常”だ。
いつも変わってる彼だけれども、その〝眼”はいつも”光”に満ちていた。
だけれど今の彼の”眼”には明らかに、心の奥底の”闇”ーーー病みというべきかーーーが漏れている。


「ボクとケートは保育園から一緒でねーーーケートは人付き合いの苦手だったボクの手をいつも引っ張ってくれたんだ。小学校に行ってもそれは変わらなかった」

「………」

「この頃はまだ、この”性質”隠しててさ…だけどケートにはーーケートにだけは話そうと思ってそれでーーー小学三年の冬、ケートに話した」

 そこで話を切り、僕ににっこりと笑いかける椎名。

「どうなったと思う?」

「どうなったって………今こうなってるんだから、クラスの皆にバレたんでしょ?…尾田が言ったの?」

 だいせいーかーい!!と、言いながらニヤニヤとする椎名に違和感を感じる。

「…ふふふ、ケートはね、とっーても優しいんだア…」

「は?何…どういうこと」

 椎名の真意の読めない発言に思わず苛立ちもあらわになる。
いやーーーー違う。

 僕が苛ついているのは”そこじゃない”。

 先程からずっと漏れ続けている”彼”の”彼”に対する”感情”。

 一人の人間が一人の人間に渡すにはあまりにも重すぎる”ソレ”


「…ケートは、僕のこの”性質”を知っても、僕の事を気持ち悪いなんていわなかったよ。それどころか」




「ケートは”ソレ”が”周りの人間”にも”受け入れられる”−−−−−そう思ったんだ。…そんな訳ナイのにね」



 少年と少年のお互いの”ズレ”が、彼をここまで狂わせた。
ーーー人が人を思う”愛”のせいで。

 だから僕は嫌いなんだ。この”愛”が。

 最初から嫌ってしまえれば何も問題はないのに。


「結果は大惨事。…ボクはクラスから孤立した。まあわざとでもあったよ、こうなってしまえば下手すればケートにまで被害が及ぶからね。−−−−それだけは避けたかった」

「…馬鹿だね、君をそんな目に合わせたのは”彼”だっていうのに」


 ”彼”を侮辱されたと思ったのか、椎名は僕を睨む。
ーーー明らかにその目には”殺意”がこもっている。


(狂ってるな…どこまでも)


 その程度のことで”殺意”が生まれる”彼”も。
その視線をどこか心地よく感じてる”僕”も。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.13 )
日時: 2016/06/08 02:29
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

「…まあいいや、日向くんにはこれから”借り”をつくることになるもんね…許してアゲル」

「は、は…そうしてくれればありがたいよ」

 そう言って椎名は僕を睨むのを止めた。それと同時に”ヒナタ”になりかけていた僕の精神も現実に戻される。

(……危ない危ない)

 ”あんな姿”クラスの皆にみせたらもうこの学校に来れなくなる。
”中学生の時”みたいに学校に行けなくなるのはもうごめんだ。
 
 ーーーーまたあの”白い部屋”になんか戻りたくない。



「…日向くん?どしたの?」

「…う、あ、ごめん。ボーっとしてた」

 考え込んでいると、外の感覚が曖昧になっていたようで椎名が心配そうに僕の顔を見つめていた。
 その表情には、さっきまでの”殺気”はない。
 彼は”許す”と言ったあと本当に気持ちを切り替えたらしい。
ーーー極端すぎてびっくりする。

「顔が真っ白。…体調でも悪いノ?」

「ん、いや大丈夫」

「ふーん、それならいいけど…あ、そうだ」

 そう言うと椎名は意地悪そうににいーっと笑い、器用にその場でくるっと回り僕にびっと指をさす。
 ……なんだか悪い予感がする。

「イイ事思いついちゃった♪今日放課後、一緒に帰ろうよ?……来なかったらユルサナイから」

 なんだかよく分からないけれども、僕は放課後トンデモナイ目にあわされるのかもしれない。

 運悪く予冷のチャイムも鳴ってしまった。

 覚悟しなければならない、そう思いながら僕は静かに自分の席に着いた。

********************************

 −−−同時刻。

 馬場満月は、一人堂々と廊下を歩いていた。向かう場所はただ一つーー屋上へ行く階段の踊り場。
 
 そこには一人の男子生徒が待っている。

茶髪に染められた一見軽薄そうに見えるその生徒は、馬場を見つけるとニカッと笑い手を大きく振った。

「ごめんなー、馬場?」

「大丈夫だ。そろそろ俺も慣れてきたしな」

 そう言って、申し訳なさそうに頭をかく男子生徒。

 

 彼の名は尾田慶斗。椎名葵の親友であり、現在はーーー

ーーー馬場満月の”依頼主”である。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.14 )
日時: 2016/06/10 00:43
名前: 日織 (ID: x2W/Uq33)

おひさしぶりです!
見に来たら更新されていてテンションが上がりました←
このなんとも言えないドキドキ感がたまらんです!(笑)
続きも楽しみにしております!

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.15 )
日時: 2016/06/11 07:25
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

>>14 ありがとうございます(o^—^o)ニコ
今年一年はじで始まりんで終わる奴があるのでなかなか更新できませんが、一週間に一回はせめて更新したいです。

小鳥ちゃんはもうすぐ出ます!!メイン回はもう少し先になりますが…。ご期待に応えれるような作品に仕上げたいです。