複雑・ファジー小説

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.16 )
日時: 2016/06/11 18:26
名前: 日織 (ID: TPHhLows)

メイン回作ってもらえるだけで嬉しいです><
楽しみにしております。
更新頑張ってください!

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.17 )
日時: 2016/06/25 01:02
名前: 羅知 (ID: ycR5mxci)

あわわわ…すいません。
投下したようで出来てなかったようです。
今から書き直します。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.19 )
日時: 2017/11/05 12:18
名前: 羅知 (ID: m.v883sb)

マイパソが壊れて、ネットに接続することが今現在難しい状況になっています。安定した更新が出来るのは一年後くらいになりそうです。それでも出来る限り更新していきたいと思うのでどうかよろしくお願いします。
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 帰り道。スカート姿の高校生‘四人‘が横列になりながら歩いている。何気ない日常。何気ない風景。

しかし"彼"にだけは違った。


「ねえ…。僕は帰り際、"今から作戦会議しよう!"…そう言われた筈なんだけど……この"格好"は何?」
「…ん?大丈夫大丈夫!!…似合いすぎて引くくらい!!トモちゃんもそう思うでしょ?」
「…はい私もそう思います。……嘘です。引いてはいません。岸波さんはどう思われますか?」
「ボク?んー、まあ似合ってるんじゃない?…ところで今から何しにいくんだっけ?忘れちゃった…えとあと名前なんだったっけ?」
「菜種知です」
「椎名葵だよッ!!…もう忘れんぼさんめー!!」

 帰りになる前に椎名の"尾田慶斗奪還メンバー"は、椎名の誘いにより、四人に増えた。人数が増えると仕入れれる情報が増えるので喜ばしい限りだ……普通ならば、そうなる筈だった。

 だがしかし、椎名の手により僕のその喜びはばりばりに壊される。

(こんな格好、なんで僕してるんだろ……)

 授業後、教室から僕が出ると椎名がちょいちょいと手を振ってきたので何気ない気持ちでついていったら、その華奢な腕からは想像もつかない程の物凄い力で男子更衣室までひっぱられ…気付いたらこの有様だ。

「…もう嫌。お婿にイケナイ…スカート、スースーする。気持ち悪い気持ち悪い…ああ…」
「もーッ!!男子のくせに女々しいぞ、日向くん!!…どうせこのメンバーの中で一番小さいし、軽いでしょ…今から作戦会議する喫茶店のオーナが無類のJK好きなんだから仕方ないじゃん!!安く済ませたいじゃん!」
「…でも葵、かなりノリノリで濃尾さんの制服借りに行ってましたよね。……濃尾さん、これは本当です」

 メンバーの一人、菜種知なたねともがボソリとそう言った。…どうやら彼女は、椎名と仲が良いらしく僕と椎名の話し合いの後、椎名の誘いを二つ返事で了承していた。椎名と話が合うなんておとなしそうに見えて椎名と同じタイプか…?と危惧していたけれどそんなことはなかった。きっと性別も性格も何もかも反対だからこそ合うものがあったのだろう。

「…シーナ」
「ご、ゴメンって!!そんな怖い顔しないでよ…だってそんなに可愛いのに勿体ないジャン…情報集めで色仕掛けとかしないの?」

 椎名は一体僕を何だと思っているのだろう。…健全な男子高校生に何を想像してるんだろう。椎名も男子高校生…まあ例外か。

「しないよ。…僕は情報集めにはそれなりのプライドがあるんだ。気になった情報をもらうには情報で対応する。…そもそも男子高校生の色仕掛けに反応する馬鹿がどこにいるのさ…馬鹿馬鹿しい」


「「………え」」

 僕がそういうと椎名と菜種は黙ってしまった。何故だろう。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.20 )
日時: 2016/07/17 15:52
名前: 河童@スマホ (ID: MXjP8emX)

更新されていたので見にきました。
そしたらなんと、知が出ているではないですか! 吃驚して噴き出しました。……嘘です、噴き出してはいません。でもびっくりしたのは本当です。
それはともかく、これからお話がどうなっていくのかとても楽しみです! 続きを楽しみにしています。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.21 )
日時: 2016/07/17 18:17
名前: 羅知 (ID: 3/dSGefI)

>>20 お久しぶりです。彼女の喋り方こんな感じでよかったですかね?
宣言通りトモちゃんって呼ばせてます。知の喋り方、俺も真似しようかな…。…これは本当です。 
一応募集したキャラ全員にメイン回というものを作ろうとおもうので、まだまだ知ちゃんには活躍して貰いますよー。
彼女にはせいいっぱい青春して欲しいです。普通のね…。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.22 )
日時: 2016/07/20 13:38
名前: 日織 (ID: TPHhLows)

よかった!更新されてますね><
心配してましたー
ネット環境崩れちゃうと大変ですね。
続きも待ってますね!!

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.23 )
日時: 2017/11/05 12:20
名前: 羅知 (ID: m.v883sb)

>>22 液晶割れって怖いんですよ…、少しずつ進行してくんで。最後には何も画面見れなくなった…(@_@)
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「あのさ、盛り上がってるトコ悪いんだけど…ココじゃないの?目的地」

 閉口してしまったこの空気の中、岸波小鳥が空気を読まずにそう言い、色とりどりの薔薇が植えられたシックでレトロな建物を指さす。
 そこは確かに僕達が目指してた喫茶店-------『星ーsutera-』だった。




「馬場って、いつもあんな視線浴びてるのな…。特に…お前の”親友”…俺、お前尊敬するよ…」
「そちらこそ。…君の幼馴染…人を殺しそうな目をしてたぞ…早く”仲直り”して注意してあげたほうがいい」

 俺------尾田慶斗は、現在”驚異の当て馬”馬場満月に”神頼み”中である。
 事態は一週間前に遡る。



「頼むッ、馬場…お前が最後の希望なんだよ…」

 馬場を屋上に呼び出した俺は、彼が来た瞬間一世一代の土下座を繰り出した。俺にとって”この件”はそれ程までに大事だった。

 小学校三年の夏、俺は幼馴染である椎名葵に悔やんでも悔やみきれない酷い事をした。彼の信頼を裏切る真似をした。
 俺は彼の人生をぶち壊した。粉々に。

 その事件以来、彼は俺から離れた。

 その行動の理由が、俺を嫌いだからではなく、むしろその反対の気持ちから行われたことに俺は気付いていた。彼はとても優しいのだ。

 だからこそ俺は彼に謝ることがいまだ出来ずにいる。心の中では謝り続けている、でも彼の目の前に行こうとすると足がすくんでしまうのだ。
 俺が彼に近付いたら、また彼の人生を台無しにしてしまうのでは--------と。

 中学を卒業し、高校生になったそんな時”馬場満月”が転入してきた。彼は瞬く間に”当て馬”としての伝説をつくっていき、その噂は俺の耳にもすぐ伝わった。
 運命だと思った。神様が俺と椎名を仲直りさせてくれるためにくれたチャンスだと。

「------という感じなんだけど……笑っちゃうよな、大事な奴に、ごめんという一言さえ一人では言えないんだから」

 俺がそう嘲るように嗤うと、馬場は思いのほか真面目な顔で返事をした。

「いや…尾田君の椎名君への思いはよくわかった。喜んで協力するよ。…ただ、”神頼み”位の認識におもっといてくれよ?二週間たったら諦めてくれ」

 俺はその言葉に小さく頷いた。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪狂気注意≫ ( No.24 )
日時: 2017/11/05 12:22
名前: 羅知 (ID: m.v883sb)



「------で、なんだかんだで二週間いまだに進展欠片もなし…うわーん俺の意気地なしーーッ!!」
「…睨まれただけだったな、お互いに」

 二週間というのは早いもので、そうこうしてる内にあっという間に終わってしまった。…椎名に蔑んだ目で見られる二週間はそう悪くはなかったけど…いやいやそうじゃなくて。

 頭を抱えて叫んだ俺に対し、馬場が独り言のように呟く。

「…たとえばもし、明日君の幼馴染が命を落としたら」
「は?」

 驚いて馬場の方を見ると、馬場はこちらの方を見ておらずただただ窓を見つめていたーーーーその表情は見えない。

「いや明日ではなく今日かもしれないな------たとえば”今現在俺の親友濃尾君と一緒に喫茶店『星ーsutera』に君の幼馴染がいるとしよう----もしかしたら、濃尾君は君の幼馴染が飲んでいるカフェオレに毒を入れるかもしれない、帰り道突然殴りかかるかもしれない”------それで君は謝ることもできずに、明日椎名君の死を知ることになるーーー君が弱虫だったから。君が二週間もあったのに何もしなかったから」

「…な、なんだよソレ…その冗談、笑えね「冗談じゃなかったら?」

 そこで馬場はゆっくりと振り向く。その顔には感情というものが全て抜け落ちていた。
 いつもの満ちた月のような明るさが嘘のように、その目には光がない。まるで新月の夜の空のようだ。

「…も、もし本当だった、として…さ、なんで濃尾がシーナを殺すんだよ!?…イミわかんねえ…」

 自分をからかってるのだ、そう思いたいのに声が震える。声だけじゃない、さっきから全身の震えが止まらない。
 
 絶対零度のその瞳から、逃れられない。

「…濃尾君は俺の言うことに逆らえない。俺が殺せ、と言ったら濃尾君は椎名君を殺す」
「それこそ訳わかんねえよッ!!…どうして…馬場が…シーナを…?」

 俺がそう叫ぶと、馬場はさっきから言っているだろう?という顔をして、先程から言っているその一言を口にした。


「…だから”君が弱虫だったから。君が二週間もあったのに何もしなかったから”…だよ。俺は初めから言っただろう?二週間経ったら諦めろ、と」


 そん  な

 マタ オレ ノ セイ デ  シーナ  ガ  ?


 

そう思った瞬間、頭の中が真っ白になった。





「う、う、う、う、う、う、う、う、う、う、う、う、」


「…」


「…どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてなんでいつもシーナのあいはおれのあいはひていされるのひていされてしまうのシーナはあんなにかわいいのにあんなにあんなにあんなにあんなにあんなにあんなにあんなにあんなにどうしてだれもわからないんだろうねえシーナシーナシーナどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてシーナはころさせないシーナのせいもしもぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶおれのものだわたさないわたさないわたさないああシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナシーナどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして…こんなにだいすきなのに」

 


 前を向き、呟く。

 
この、思いを。  この七年間の思いを。  アルバム二十五冊 ノート三十五冊 部屋中に張りつくされたシーナのベストショット タンスに詰まったシーナが捨てたシーナの私物 シーナの爪 皮 髪の毛 その全てにこもった俺のこの重い重い愛を。


「それだけ分かっているなら、動けばいい。まだ日は落ちていない。十四日目はまだ終わっていないのだから」

 馬場がそう言い終わる前に俺の体はもう動いていた。
 走り出す。 早く 早く。

 俺は早く彼に伝えなければならない。

 謝罪と、この精一杯の愛を。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪星さんは狛枝イメージ》 ( No.25 )
日時: 2016/08/08 21:21
名前: 羅知 (ID: 835DLftG)

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「ハーイ、いらっしゃ〜い♪ …あらヒナ君、可愛い恰好してるわね…もしかして、”目覚めちゃった”?」

「…目覚めてません。無理やり着せられました。…わかってて聞いてますよね、星さん」

 店内に入ると、店の店主、金月星(かなつきすてら)さんに蛍光イエローの腰エプロンに黒マスクという”いつもの恰好”で出迎えられた。
 肩までの少し寝癖がかったマスクと対照的な白い髪がきらきらと日光に反射し輝く。

(…二次元レベルのTHE八頭身イケメンなのに、オネエ口調なのも相変わらず変わらない…)

「え、え!?…日向くん、ステラさんと知り合いなのッ…??え、ウソ、接点なさそう……」

「まあ、僕よりはシーナの方が接点ありそうだけど…別に。親戚のお兄さんみたいなもんだよ星さんは」

 椎名から、『星ーsutera‐』の名を聞いたときは正直僕の方がびびった。まさかクラスメイトから身内の名前がでるとは思わなかった。

 星さんは、僕の育ての親である。

 星さんは、現在とある事情があって一人暮らししている僕の面倒をたびたび見に来てくれている。血がつながってもいないのにどうして来るのだろうと思って本人に聞いてみたが、星さんは笑って誤魔化すだけだった。

 この質問をすると、星さんはとても悲しそうな目をするので、その最初の一回以来僕は星さんにこの質問はしていない。

「…あ、そーいえばヒナ君。なんか奥にお友達?きてるわよ」

「え…他呼んだやつなんて……あ!!」

 こういうとき必ず来る奴が一人いた。

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 ちらりと奥を覗くと、浮世離れした金髪の見覚えある少女が怒ったようにピョンピョンと飛び跳ねていた。
 …胸が重そうだ。

「遅いぞ!!そなた達!!…わらわを待たせるとは万死に相当するぞ!」
 
「…いや、呼んでないし。勝手に待ってたのそっちだし」

「あ、女神ちゃんも来てたんだッ?協力してくれるの?」

「…わらわの力を使えば、そなたの悩みなど一瞬で解決する…さあ、お供え物を用意するのじゃ!!」

 女神ちゃんーー本名、大和田雪(おおわだゆき)は重度の電波少女である。自身を女神と称し、お供え物をよこせと言って甘味を要求する。
そして極めつけはーーー

(神の視点、なんていうからね……なまじ”当たっちゃう”からなのか…ここまで”重症”なのは)

 彼女の言う”神の視点”からの意見というのは、何故かしらよく当たる。…もはや偶然とはいえないレベルに。

 ……いやいや信じてなんかないけど。


「…ナントカくーん、考え込んでるのもいいけどボク達、先食べてるからねー?」

 岸波がパフェを食べながら、椅子にも座らず立ち尽くしていた僕にそう声をかける。


 …こいつらは一体何しに来たのだろう。そして岸波はいつになったら僕の名前を覚えるのだろう。

 はあ…。

 ヤンデレ女装男子に、その友達、記憶能力ゼロのボクっ娘、それに自称女神の電波少女…こんなんで本当に何かが解決するのだろうか。

 僕のそんなため息を見て、大和田が口一杯にパフェをほおばりながら、余っていたパフェを僕に差し出す。



「ほほままやずほもほい(そう悩まずともよい)ひはふはふへへほはいへふふる(時間が全てを解決する)」



「は?」

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.26 )
日時: 2016/08/06 14:38
名前: ヨモツカミ (ID: 3dpbYiWo)

こんにちは、リク掲示板の方での投稿有難う御座いました。
もう、本当に狂ってる人大好きなので、思わずコメントさせていただきました。
めったにコメントすることないので、何を言っていいのか……(´・ω・ `)
とりま、パソコンの不調と闘いながらも頑張ってください。応援してます!

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.27 )
日時: 2016/08/11 04:39
名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)

 大和田がそう言うと同時に聞き覚えのあるメロディーが店内に鳴り響く。僕の携帯の着信音だった。

 宛先はーーーー馬場満月。

「…もしもし」

 ーー少し、緊張した。ここ最近全然、喋ってなかったから。

『濃尾君、朗報だ』

 いつものーーいつもの”馬場満月”の声の筈なのに体全身が愉悦で震える。悦んでる。久しぶりの”あの感じ”に。

(ああ…笑っちゃいそう……)

 皆、いるのに。こんな所で”こんな顔”したらいけないのに。
 どうしても抑えきれないーー”衝動”

 だってーーだって”お前”は知ってるから。僕の一番”好き”なコト。僕が嬉しいコト、僕が悦ぶコト。

 ”あんなコト”出来るのは”お前”だけだから。


『−−−−今から君は殺される』


 ーー低い、感情の抜け落ちた声。

 その通話が切れると同時に入口のドアが乱暴に開けられた音と、誰かがこちらに向かってくる足音を聞いた。

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「−−−−×××ッ!!」


 獣の咆哮のような叫びと共に、僕の真後ろで止まる足音。

 聞き取れなかったけれど何と言ったかは、目の前の椎名の顔を見れば一目瞭然だった。

 彼は名前を呼んだのだ。ーーシーナと。

 そうなれば必然的に僕の後ろにいるのは”尾田慶斗”なのだろう。ーーこの殺意を振りまいてる人物は。
 …あはは。ねえシーナ。君と尾田慶斗はお似合いだと思うよ。君達は本当に似た者同士だ。

 僕、振り向いたら多分眼球抉られるよ?

 互い以外の害する者にここまで殺意をぶつけられるんだ。君達は絶対仲直りできるって。
 だからさ。





「……痴話喧嘩に巻き込んでんじゃねえよ、糞が」

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪濃尾が空気≫ ( No.28 )
日時: 2016/08/11 07:26
名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)

 僕がそう言うのと同時に、何かが僕の頭に振りかぶられるのを感じた。…殴ったら頭の方がへこむ系の”何か”だろう。

 しかし僕の頭はへこまなかった。


「……ケート」

 椎名が尾田慶斗の腕を掴んでいたーーーその手は細かく、弱々し気に震えている。

「…ケート、はさ。とっても優しいんだから…その手をこんなコトに使っちゃダメだよッ…この手はね」

 腕をゆっくりと自分の頭に乗せる椎名。


「………ボクを撫でるためにあるんだから、ね?」


 後ろからすすり泣くような声が聞こえる。僕を殴ろうとした”何か”が床に落ちた音がした。…あ、鉄製バット。

「…シーナ、ごめんなあ…俺があの時、考えなしにあんなコトになっちゃって…シーナの人生台無しにしちゃって……でも、限界なんだ……俺やっぱり」


「シーナ無しじゃ生きてけな「ケート!!!」


 抱擁を交わす二人。…そしてその間には存在が空気となった僕が挟まっていたのだった。

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『どうだったか?……放置プレイを食らわされた気分は』

「どうもこうも。…ったく馬場は僕を誤解してるよ、僕が欲しいのは”純粋な嫌悪”だよ?…これじゃ僕が痴話喧嘩に巻き込まれて殺されかけただけじゃないか」

『巨大な愛の前では、人は時に空気になる……”存在感”は明らかにあの二人に”殺されて”たな』

 全てが終わった後、馬場に電話を掛けなおすとのっぺんくらりとそう言われた。

 どうやら僕は馬場の策略に知らぬ間にまんまと嵌っていたらしい。

「……どうやって、僕の動向を知ってたの?この二週間ほとんど会ってなかったのに」

『ああそれは。……ほら、濃尾君毎日着てるインナーあるだろう?それにちょっと…”仕掛け”を。濃尾君が尾田君のコトを聞きに来たときに』

「…盗聴器か。…馬場、情報屋の才能あるよ」

『それほどでも』

 尾田慶斗には僕から説明をし、さっき馬場が言ってたことは冗談で、今回の事は僕と馬場が企てたことだ…ということにしておいた。
 疑わし気な目で見られたが、そう説明するしかない。

「一番の疑問……どうして馬場は尾田慶斗の”異常性”に気付けたの?…僕ですら気が付かなかったのに」

 尾田慶斗は学校では只の平凡な一般生徒でしかなかった。

 普通に生きて、普通に遊んで、普通に勉強してるーーそんな普通で、普通の生徒だ。椎名葵と関連性なんて見当たらない。
 幼馴染であることすら、ほとんどの生徒は知らないのだ。

『それはーーー』

 ごくりと息をのむ。



『−−−禁則事項だ。”約束”はーー覚えてるよな?』

「…なんだよソレ。どこぞの未来人じゃないんだから」

 まあ今はいいや。…僕の憂鬱も驚愕も消失も全てはこの男に懸かっているんだ。もう少しくらいこの”日常”が続いても問題はないだろう。

 そう言って僕は静かに電話を切った。


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 騒動も終わり、『星ーsutera-』の閉店時刻になり、店主の金月星は小さく息を吐いた。

「…今日も忙しい日だったわねー」

 そうぼやきながら金月はダイヤルを打つ。…今日の最後のお勤めだ。

「…ああ、もしもし。先生。…星(せい)ですよ。今日はとても騒がしい日でしてね、ヒナ君もとても楽しそうでしたよ」

「……”記憶の兆候”?なかったですね…まあ、あんなコトがあったんですし、思い出せなくて当然ですよ、ゆっくり戻ればいいんです」

「そんなに心配なら……”僕”としては会いにいけばいいと思うんですけどね、だって貴方は」





「−−−−ヒナ君の”父親代わり”なんですから」

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【重い愛】→【想い合い】

 一人で持つには重すぎた想い。…けれどその想いの天秤が釣り合ったときその想いは”愛”となって、彼らを幸せにするだろう。
 …一人じゃダメでも、二人ならきっと運べる。


+馬場満月+ばば みずき

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。驚異の当て馬。頭は働く。”当て馬”になってる理由は不明。身長180で体格はいい。濃尾日向が親友。

*濃尾日向*のうび ひなた

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。学校有数の情報屋。身長自称151だが本当は150切っている。かなり細く、女装が似合う。インナーを愛用してる理由は首の跡を隠すため。一人暮らし。馬場満月が親友。何かの記憶を忘れてるらしい。

+椎名葵+しいな あおい

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。男の娘。ヤンデレ。怪我の治りが異常に早い。あだ名はシーナ。濃尾曰く「危険地帯にある落とし穴」みたいな人。尾田慶斗が幼馴染。白菜ッ!様投下キャラ。

*尾田慶斗*おだ けいと

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。茶髪で軽い雰囲気。優しいらしい。あだ名はケート。馬場曰く「一般道にある落とし穴」みたいな人。椎名葵が幼馴染。白菜ッ!様投下キャラだが、投下時点で彼のヤンデレストーカー的設定は無かった。作者が思った以上にこのキャラに嵌ってしまったため設定が追加された。ごめんなさい。

+菜種知+なたね とも

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。肩くらいまである黒髪。けだるげな雰囲気。ウソと本当をいり交ぜて喋る(直後ばらす)椎名葵と仲が良い。河童様投下キャラ。

*岸波小鳥*きしなみ ことり

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。死ぬほど忘れっぽいボクっ子。勘は良い。クラスメイトの事はそれなりに大切に思っている。日織様投下キャラ。

+大和田雪+おおわだ ゆき

貴氏高校一年B組(この時点)に属す。女神ちゃん。神視点は本当に持ってる。金髪グラマー。この中で唯一濃尾より背が低い。高坂 桜様投下キャラ。

*金月星*かなつき すてら

喫茶店店主。二次元イケメン。白髪に黒マスク。オネエ喋りだけど恋愛対象は女性。本名は星(せい)こちらの名前を名乗ってる時は普通に喋って一人称は僕。濃尾日向の育ての親。

+先生+

金月がそう呼ぶ。正体は不明。濃尾日向の父親代わりらしい。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.29 )
日時: 2016/08/12 04:28
名前: 羅知 (ID: kTX6Wi1C)

○二話のまとめ&三話について

No,24からノリノリだったのは、皆気付かれてましたよねww
今回はこんな感じだったけど、次回からは割かし普通な感じになります…。普通な人は普通な感じで、おかしい人はおかしくて。

三話前に、一旦別の話書きます。

二話の後日談…?みたいなものを。

>>26 小説内へのコメント感謝です!!頑張りたいと思います!!

では。

Re: 当たる馬には鹿が足りない≪更新再開≫ ( No.30 )
日時: 2016/09/10 08:00
名前: 羅知 (ID: bs11P6Cd)

閑話休題【もしも願いが叶うなら】

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 目を開けると闇の中でぷかぷかと浮いていた。僕ーー濃尾日向にとってこのことは初めてではなかったのですぐに分かった。

 ああ、此処はいつも見ている”夢の中”だーーと。

 いつも朝が来るまで、こうやって浮いてたり泳いだりして過ごすのだーー誰もいない闇の中で。僕以外誰もいない闇の中で。
 ”此処”にいる時間は僕にとって安息の時間だ。誰にも邪魔されず、何も考えず、ぼーっとしていられる。

 しかし今回はいつもと少し違った。

「あ、ねえっ…?…えっと…久しぶり?だね……”僕”」

『……チッ』

「ひっ!!?」

 後ろから、遠慮がちに弱々しくかけられた声に思わず舌打ちしてしまう。聞きなれた声ーーーー当たり前だ。

 後ろにいる少年ーーーーこれは。



(なんで”此処”にいるんだよ……中学時代の僕!!)

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「な、なんでって言われても……えと、あの…っていうか僕だけじゃないよ…”ボク”もいるし、”あの子”もね…」

「”あの子”?」

「…あ、今の君は知らなかった、か。ごめん……忘れて。と、ともかくさ!!僕、話したいことがあるから…!!…”アイツ”呼んでくるから、待ってて!!」

 そう言って、僕の後ろから気配を消す”僕”。数秒後、目の前からニヤニヤした”ボク”と、相変わらずおどおどした表情の”僕”が現れる。
 同じ顔が目の前にあるのを見るのは不快だ。ましてや”こんな奴ら”の顔なんて。

 吐き気がする。

「お久しぶり、僕」



そう言って”ボク”はにたりと笑った。

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「「…気持ち悪いよ、”ボク”」」

 僕と”僕”が、心底そう思いながらそう言うと、彼は気持ち良さそうに身をよじらせながら、じとじとした湿っぽい目をこちらに向ける。


「うふふふふふ、相変わらずボクには辛辣なんだね二人ともッ…いいよいいよ気持ちいいよ本当に興ッ奮するようん本当にいやいやいつも思ってた亊なんだけどさ君達二人に共通してるのは”ボク”だけのハズなのにどうして君達はボクには冷たいんだろうなーってまあ本当はどうでもいいから別に答えなくてもいいんだけどさあッもしかしてあれかな?自分たち二人ともに共通するからこそ自己嫌悪?とか?とか?しちゃったりしてんの?図星かな?いやーそんな顔しないでよまた興奮しちゃ」

 本格的にムカついてきたので殴った。僕と”僕”のダブルパンチだ。ちなみに殴られた本人とはいうと、陸に揚げられた魚みたいに遠くの方でぴちぴち蠢いていた。顔はよだれをたらしながら白目をむいてしまっていて、やっぱり気持ち悪かった。

 殴っても、こんな気持ちになるなら殴らなければ良かったと後悔した。

横に立つ”僕”も僕と同じような表情を浮かべているーーーーそして、気が付いたようにこちらを見た。

「…えーと、まだ僕の事、思い、出せない?かな…」

「残念ながらね」

「……そう。まあ無理に思い出すことはないよ。…思い出したい記憶があったらまた”あそこ”に来ていいから、さ。今日はそれだけ伝えたかったんだ…。まあ…君は僕達になんか会いたくないだろうけど……」

 そう言って、ポリポリと頭をかく”僕”。

 その表情はまだまだ何やら言いたげそうだったが、今回は言わないつもりらしいので、最後の言葉は僕から言わせてもらった。


「君らが何考えてるかなんて、全然わかんないけどさ……僕は今現在でそれなりに幸せなんだ…馬場みたいな面白い奴もいるしね」



「……………馬場、くん、ね」


 ”僕”が息を飲んでそう言うのと同時に、僕の意識は目覚めへと向かっていった。


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 明朝。
 目をこすりながら、一言。

「鏡は見たくねーなー………」

 そう、呟いた。



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少し今回の話は分かりにくかったかもなので補足。

僕…現在の濃尾日向

”僕”…中学時代の濃尾日向

ボク…ご存じヒナタさん

【もしも願いが叶うなら】→【望まない夢】