複雑・ファジー小説
- Re: ROCK IN ECHO!! ( No.12 )
- 日時: 2016/02/27 09:02
- 名前: りちうむ ◆IvIoGk3xD6 (ID: Uj9lR0Ik)
- 参照: 征一「メンバーとカラオケに行くと、僕にマイクが回ってこないんだよね。僕、ボーカルなのに」
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「それじゃあ聞いてください、あみゅーず・がーるで、『恋するスイーツ☆パニック』!」
ピンクのおもちゃみたいなギターを持ったももこさんが紹介した曲は、とてもロックバンドの曲名には思えない。中学の頃の国語や英語が2だった僕は、この曲が恋しているのかパニックなのか、どっちなのかが分からなくて、それが気になって仕方が無い。しかし一旦曲が始まってしまうと、おもちゃ箱のようなメロディや、やたら上手なリズム隊、ももこさんの可愛い声にすべてがどうでもよくなった。あみゅーず・がーる、めちゃくちゃ可愛いな。
完璧に合いの手を入れる香絵子さんと最中に若干引きながら、(花筏夜想曲の神楽くんと神無さんも引いてた)空さんはやっぱりかっこいいなぁ、なんて思っていたら、やっぱりすぐに曲は終わってしまった。ううん、悪くは無いんだけど、ももこさんの他にもう一人ギターを雇うか、それかキーボードを入れたら、もっと音に厚みが出てかっこよくなると思うな。リズム隊にももこさんが押されてしまっている気がして。香絵子さんや最中は生であみゅがるの演奏が聞けたのが相当嬉しかったみたいで、涙すら浮かべながら壇上のメンバーと握手していた。
「そんなに喜んでくれると、ウチも嬉しいわ」と笑顔を浮かべている香美波さんを見ていると、あみゅーず・がーるは立派なアイドルだな、と僕は感嘆してしまう。
「次は俺達か。楽譜は全員分持ってきたぞ、何をやろうか」
「......黒嵐。楽だから......」
市松人形みたいな花筏の女の子が、(神無さんというらしい)珍しく意見を提供した。
中学の頃の国語や英語の成績が2だった僕は、「黒嵐」の意味がわからない。せいぜい黒い嵐をブラックストームと訳すのが精一杯で、アクモンのブライアンストームかよ! と自分に自分でツッコミを入れているうちに、準備は終わりそうになっていた。
隣に座っていた最中が、ちょんちょんと僕の肩を叩く。「あの狐のお面かぶってる人って、マンウィズアミッションとかリスペクトしてるの?」なんて小声で耳打ちするから、思わず吹き出してしまった。バツが悪そうに僕を見る香絵子さんと、ちょっと黙って聞いてなさいよねと注意するゆゆちゃんと、キーボードを設置している凪さんを見て、あれはFはあるな、なんて喋っている小川くん。やっぱりECHOは自由すぎてダメだ。僕は何も悪くないのに怒られてしまった。
「ほら、始まるよ」
流れ出した優雅なメロディーで、騒いでいたECHOは一瞬で静かになった。和楽器のゆったりとしたメロディーがロック調に変わっていく。歌い出したボーカルの鼓くんは、ロックに合うような高めの声をしていて、聞いていて心地がいい。和楽器とロックって、意外と相性がいいのだ。各メンバーの演奏技術も申し分ない。これは確かに流行るな、と確信した。
曲が終わっても呆然としていると、香絵子さんが「いやー、やっぱ上手いですね!」と拍手しながらステージに駆け寄る。これくらい当たり前だ、なんて顔をしている花筏のメンバーからしてみると、ECHOの演奏もあみゅがるの演奏も粗末なものにしか聞こえなかったのだろうかと思うと憂鬱になるな。
各パートごとの練習に入る前に、香絵子さんが腹が減った、チキンクリスプが食べたいと言い出した。俗世の食べ物に興味がなさそうな凪さんは違う店がいいと言い、あみゅがるの三人はスイーツ食べ放題がいいと意見が分かれたので、また玲瓏さんが作成したくじで決めた結果、「各自好きな店に行って、一時間後に帰ってこい」ということになった。女子達を誘う小川くんや、スイーツ食べ放題に目がくらんでいるゆゆちゃんや香絵子さんを差し置いて、僕は最中と近くの牛丼屋に出かけた。