複雑・ファジー小説
- Re: ROCK IN ECHO!! ( No.22 )
- 日時: 2016/03/11 21:10
- 名前: りちうむ ◆IvIoGk3xD6 (ID: xV3zxjLd)
- 参照: 真「ファンの子がバタークッキーくれると超嬉しい!いつもかじ達と美味しく食べてるよ!」
【ROCKIN ECHO(?)/清藤香絵子】
17◆昔話
友達と結成したバンドを抜けた。その時私は19歳で、もう高校も出たのだから、遊んでばかりいないで働かなくてはいけないからだと理由をつけた。実際親も、夢なんか追いかけてないでさっさと就職して欲しかっただろうし、私もバンドに将来を見いだせなかった。
地元の予備校の事務職についた私は、毎日職場と家を往復する日々を送っていた。初めて手にした給料で両親を温泉旅行に連れて行ったりした時はまだ喜びを感じていたものの、半年もすると少ない給料やムカつく上司のことを考えるだけで頭が痛くなった。
辞めたいけど、辞めたら先がない。私は苦悩の日々を送った。昔の気分に浸りたくて偶然入ったライブハウスで、春島を見つけるまでは。
edgeが流行り始めた頃だ。ライブハウスは流行りのバンドを丸パクリしたようなバンドと、一昔前流行ったバンドの真似をしていつまでも夢を諦めきれないようなバンドで溢れていた時代だった。私は一番後ろの壁に持たれて、暗いライブハウスで赤や青の光に照らされているステージを見ていた。
バンド名は覚えていない。とにかく演奏がめちゃくちゃで、初めて文化祭でライブした時の私たちみたいだったことは覚えている。しかし、真ん中の高校生みたいなボーカルが歌い出した瞬間、私は度肝を抜かれた。実力もさることながら、この歌は何かを伝えようとしているのがありありと伝わってくるような気がして、忘れていたものを一気に思い出した。もう一度音楽を始めよう、そう思った次の日に私は会社を辞めた。それほどの衝撃を受けたのだ。
次の日からはメンバー探しに明け暮れた。ちょうどその頃、流行り始めたedgeと双肩を成していたバンドの「キャタピラーズ」がドラムの不祥事によって解散した頃だったと思う。ギターボーカルの最中は学業に専念するということで一切の音楽活動を引退したかのように思われたが、私はどうしても彼を勧誘したかった。もともと私が所属していたバンドは、メジャーデビューはしなかったがそこそこな地位にいたので、何度か食事をしたり交流を重ねるうちにまた二人で音楽を始めることになった。この時ばかりは、自分のコミュニケーション能力に感謝したなぁ。
キーボードが欲しいし、ベースも足りない。当時ライブハウスで見かけた、花筏夜想曲なんかはとても華やかだった。他バンドからキーボードを見つけるという手もあったが、あまりビビっとくる人が居なくて。その頃私はバイトを始めたと思う。学生の最中とは違って、こっちは生きるための金を自分で稼がなくてはいけなかった。
偶然行った紅山学院大学の文化祭の、ミスコンでピアノの弾き語りをしていたのが小川だった。彼プロの人とも一緒に演奏したことあるらしいよ、と最中は説明する。その面々たるや、ヴァイオリニストの桜田みゆきやドラマーの柊秀、更には赤白歌合戦に出場経験も持つ歌手など大物揃いで、私達はこいつしか居ないと思いすぐにバンドに誘った。ミスコンで優勝し、気が緩んでいたのだろうか。あっさりと承諾してくれた小川には、逆に驚いてしまった。
あみゅーず・がーるも当時流行り始めていた。今ほどメディアには出ていないものの、ラジオ番組を持ち、ライブハウスをやすやすと埋める彼女らはかっこよかった。
その二番煎じと呼ばれたバンドがある。「Selen」というガールズバンド。前ボーカルがステージで手首を切ったことにより脱退し、ベースの湯村雪子がボーカルも担当するという、かなりギリギリの経営をしていたバンドだ。
湯村はこのバンドにかなりの思い入れがあったらしいのだが、ドラムの女もギターの女も稼いだ金をホストに入れてしまうような奴だった。あみゅーず・がーるのようなバンドを目指していた湯村は彼女らに愛想を尽かしたが、バンドをやめる決断はできなかった。
私たちは次に湯村を誘うことにした。「Selen」に思い入れのあった彼女は最後まで悩んでいたが、小川を見せた瞬間に承諾した。こいつもなかなか男好きな奴だな、と思ったことを覚えている。
今のECHO以上の問題児バンドSelenに居たことは、彼女の経歴の汚点になりかねない。かといって詐称するわけにはいかないので、「雪村ゆゆ」として活動することになった。
そこそこの地位にいたドラム、大物と共演したことがあるキーボード、元キャタピラーズのギター、元Selenのベース。ここまでの面子を揃えたら、春島は何も言わずに加入してくれた。こうしてROCKIN ECHOの伝説が始まったのである。
「なんか香絵子が凄い人みたいになってるけど、ほんとにあんな感じだったの?」
「んー......わかんねーな、そんな昔のこと」
「とりあえず僕は、Selenの雪子ちゃんと一緒に音楽できるって聞いてすぐ加入キメたけどね」
「いつも動機が不順だよな、お前らって」
(参照1000ありがとうございました!)