複雑・ファジー小説

Re: ROCK IN ECHO!! ( No.27 )
日時: 2016/03/25 20:39
名前: りちうむ ◆IvIoGk3xD6 (ID: /48JlrDe)
参照: 琴也「このあとの予定?スタバで資料整理して、セミナーに行くよ」

【ROCKIN ECHO/最中次郎】
22◆カラオケ
 「大変ご多忙お兄さん、地球あちこちぐーるぐるー!」

 edgeの前座獲得記念に、ECHOは今カラオケに来ている。無駄にいい声でアニメの主題歌を歌い上げる香絵子をよそに、平ポンのエミちゃんと、朝縹くんと、市ノ葉がデンモクで曲を選んでいた。だいたいみんな一巡はしたので、好きな曲を手当り次第に入れることになっていたのだが、アーバンギャルドと鬼束ちひろばかり歌ううちのメンヘラカラオケキラー雪村ゆゆ、銀杏BOYSらへんのエグイ曲を歌って場を凍らせる我がバンドの基地外系ボーカル春島征一、嵐とか福山とか女ウケが良さそうな歌を絶妙にチョイスしてくるピアニスト小川徹明のせいで盛り上がりに欠ける、なんてわけでもなく、なんでも適合してしまう平成ポンデライオンの三人はちゃんと盛り上がっていた。やっぱうちらと平ポンは馬が合うらしい。

 「なにこれ? アニソン縛り?」

 隣に座っていた小川が画面を見て言う。デンモクの予約の画面を見ると、雪村あたりが入れた「ムーンライト伝説」、ほんと誰が入れたんだよって感じの「ペガサス幻想」が並んでいた。まあ、いいって適当で。さっきも平ポン朝縹くんは洋楽縛りなのにオドループ入れてたし。踊ってない夜を知らない、一回聴くと頭から離れなくなるよなぁ。おかげでさっきまで目をギラギラさせてニルヴァーナを歌って飛び跳ねてた春島もソファーにぐったりもたれ掛かってるし、電子ドラッグの粋だよなあれって。

 「ムーンライト伝説入れたのって誰?」

 ファジーネーブルを飲んでいる雪村がマイクを持って立ち上がる。すると大人しくしていた市ノ葉が、「それ私」と言っておずおずと手を挙げた。あまりの不似合いさに、俺は思わず吹き出しそうになる。

 「お前がセーラームーンってウケるんだけど」
 「なに、私が歌っちゃダメなの?」

 俺を睨みつける市ノ葉。てっきり雪村が入れた歌だと思ってたから、驚いただけさ、と言うけれど、「私だって小さい頃はセーラームーン見てたの!」と反発する市ノ葉を見るとやっぱり笑ってしまってダメだった。でも、歌い出すと市ノ葉は楽器やってるだけあってなかなか上手かった。そのギャップがまた面白い。もうダメだ。その次の「ペガサス幻想」を入れた朝縹くんの熱唱っぷりも面白くて、(ちなみに彼はめちゃくちゃ上手い)すっかり笑い疲れてしまった。もうこうなると文字通り箸が転がっても面白くなってしまって、「今日酔うの早くない」と香絵子に言われたりもした。

 「みかんのうた」を歌って喉がひどいことになったので水道水を飲んでいた頃、人の歌を歌うのってなんか申し訳ないという謎理論を展開したエミちゃんは平ポンの曲ばかり歌っていた。一方他人の歌大好きECHOはZAZEN BOYSをみんなで歌うという謎の盛り上がりを見せていた。こんな夜中までカラオケで盛り上がるなんて、暇な文系の大学生かよ。三回連続で同じ歌を歌う朝縹くんや、やたら可愛い曲を選曲しては俺を睨みつけてくる市ノ葉、「安めぐみのテーマ」をハイテンションで歌う春島にもう疲れてしまった雰囲気なのに、香絵子は二次会に行こうなんて言い出す。しょうがなくついていくけれど、そういえば、明日ライブだった気がしないでもない。まいっか、このまま帰っても暇になるし。なぜかカラオケ代を全額払うことになっている小川を見ながら、俺はそう思っていた。