複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物 ( No.135 )
- 日時: 2017/05/07 19:08
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: VEQd3CZh)
「…………? ゴミはどこだ……」
「何言ってんのよ、銀狼君。ゴミならたくさん……え?」
銀狼の問いに華南はどこを見ているんだ、という眼差しで見た。当の華南もまだごみを拾うどころか見てもいないがゴミぐらい5歳児でも判別がつく。
だから異星人はゴミも知らないのか、と一瞬思いかけた華南だったが、その思いは直ぐに消し去られてしまう。目の前の光景に思わず頭の中が真っ白になってしまったからだ。
「戦国時代なのここは!!」
「白骨みっけ」
「こっちは兜もよぉ社長!」
「己らは何しとんのじゃ!!」
橋の下には白骨、白骨、武装品。その他諸々が埋め尽くされていた。これはゴミではない。事件である。この異常さが分かっていないのか平然と夜明と結廻はゴミと言う名のヤバいものを拾う。
其れは他のボランティアの人も同様だった。思わず華南は頭を抱えてしまう。
「こういう時こそ虎功刀君の出番でしょうが……っ。何で突っ込まないのよ……!」
「山川さん、見てくださいな。立派な金色ですよ」
「こっちも綺麗な銀色ですよ」
後方で声がするので振り返ると60代前半ぐらいの老婆である山川さんと土宮さんが自分の拾ったゴミを見せ合っていた。嘘みたいに輝く黄金の全身骨と銀色の全身骨を。
違和感が仕事をし過ぎているその光景に思わず華南は口をあんぐり開いた。だがそんな彼女のことなど露知らず、土宮さんはゴミ袋からまた何かを取り出す。
「他にも拾いましたよ。いやぁ、最近はゴミが多くて駄目ですねぇ。こんな立派な玩具の剣を落としていって」
「それマジモンのエクスカリバァァァァァ!!」
老婆と光り輝く黄金の剣エクスカリバー。彼の王アーサー王の武器とかいうやつである。玩具かと思ったが質量と切れ味よさそうな剣を見て確実にあれは本物だと確信した華南。
急いで危険物を土宮さんから奪い取って慌てて夜明たちの元へと戻る。これはゴミ拾いどころではない。
「社長! 結廻ちゃん! ここ、ゴミ拾いとかって言ってる場合じゃないわよ。急いで政察に連絡しなきゃ……」
そして隣にいる銀狼を確認し、頷く。華南の声を聞いて夜明はゆっくり顔を上げる。
「華南。ピンクの熊は好きかね」
「何言ってんのよ、そんな冗談言ってる暇……」
夜明は静かな動作で手のひらサイズのピンクの熊を華南の前に差し出した。
その熊は生きているらしくギョロついた眼で華南のを見上げた。結廻は生理的に受け付けないのか熊自体見ようともしない。
仕方なく華南のその熊を見ると、熊は口を開いた。
「私の名前はマーニー。決して宮〇駿の使いではない。聖なる魔法少女を探していたところこのような場所に紛れ込んでしまった。其処の御婦人。是非魔法少女にならないかね。私と刻印を交わして」
「その売り文句嫌な予感しかしないわ」