複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物 ( No.143 )
- 日時: 2017/06/04 21:05
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: mZr6nb5H)
——ブチッ。ブチブチブチブチ……ッ。
——………ジジジジジジジジジジ……。
何か、軋むような音が辺りに響き渡る。だがそれは眩い光中で怒っている出来事故、把握することは誰にもできない。
周りにいたごみ拾いの参加者も、ゴミ拾いそっちのけで光を間抜けな表情で覗くことしかできなかった。
原因はあの意味不明な熊、マーニーで間違いないのだが、この状況故、生かすも殺すも炒めるもできないことであった。
「ぎっ、銀狼さん!?」
自分を庇った銀狼を結廻が呼びかける。まさか、自分が魔法少女になるのを拒んだばかりにこんなことになるなんて。こんなことになるぐらいなら自分が黙って魔法少女になればよかった。いくら20代でも。
心配そうに目を潤ませる彼女に夜明が冷静に突っ込む。
「言っとくけどこれゴミ拾い短編だからね」
「静かにしてくれないかしらシャチョーさん」
遠い目をしながら華南は冷たく言い放つ。その瞬間、さらに光は眩くなり、光の姿は消えた。
「……銀狼は無事かな」
「契約完了ッダッ!!」
「!?」
マーニーの興奮しきった声に夜明を始めとした2人が振り向く。そこには、銀狼の体格を無視した魔法少女ができあがっていた。
全体をピンクと白で装飾された服。手足はゴツく、フリルの付いたスカートや袖にはアンバランス。そして、前のボタンやリボンは胸筋や腹筋で今にもはちきれそうである。極めつけは、銀狼の短い髪を無造作に申し訳程度にツインテールという有様だった。
勿論銀狼は今にも死にそうな顔をしていたし、夜明たち一行も死んだ顔をしていた。
「これで……世界は救われる。ありがとうキ〇アゴリラ!」
「何してんだオメー」
勝手に感動して泣いているマーニーの頭部を夜明はガッシと掴む。さすがにこの有様に夜明も少なからず動揺を隠しきれない様子だった。
「彼……いや、彼女は今からキ〇アゴリラとして世界の平和を守ってもらう故」
「故じゃねーよ」
「うぐぁぁぁぁっ!!」
夜明は容赦なくマーニーの頭部を引っこ抜いた。それっきり、なーにーが動くことはなかった。中身を見ると、詰め込まれた綿、そして何やらモーターの様な機械が入っていた。
華南がそれを覗き込む。
「……これ、旧型の玩具ね。確か5年前ぐらいだったかしら……幼女の願望をかなえる玩具が流行ったのよね」
「……集めたごみはどうすればいい」
「順応早すぎんのよアンタ!」
自分の服のことなど忘れ、冷静にそういう銀狼に華南は思わす突っ込んだ。夜明は引き裂いたマーニーをゴミ袋に入れる。
「よし。これでいいか」
それから3時間ほどゴミ掃除をしたが魔法少女事件は何事もなく終わり。銀狼の服は帰ってこなかった。そして優勝は土宮さんのエクスカリバーであった。
夜明たちは一言も話さずに帰路についた。