複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物 〈オリキャラ募集二次募集予定〉 ( No.21 )
- 日時: 2016/03/27 21:34
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: EwVeSaUz)
「あともう少しで救急車デビューするとこだった……」
「フォローするの大変だったんだからな、社長」
夜明が血を吐いて波乱を呼んで官庁街。そして辺りにいた人みんなが狂乱したのだ。ちょうど旅行中で居合わせた大阪のおばちゃんに救急車を呼ばれそうになったのだ。
コミュニケーションの達人、虎功刀もなんとかその場をごまかすのには苦労がかかった。なんやかんやで30分経ってしまっていたのだ。
官庁街から急いで去り、虎功刀はこれ以上夜明に血を吐かれたらたまったものではないので現在彼女を背負いながら走っている。
「随分と人気が少なくなったもんだ、というかここはアパートとかの住宅街じゃねぇか。……社長、最初"はな"からここが目的で来たのか?」
「いや、勘」
「勘で連れまわされている俺立場がヤクザの小物になっていくのをすごく感じる」
はぁ、とため息を付きながら虎功刀は顔を顰める。すると、夜明は何かに気が付いたように耳を澄ませる。
「——……何か聞こえる」
「何が?」
「女性の悲鳴」
目を瞑り、集中して音を感知している夜明。だが、身体能力の高さに定評のある異星人屈指の三大戦闘民族「涯亞」の血を引いている虎功刀は夜明の言葉に首をかしげる。
なぜなら、彼女の言う「女性の悲鳴」は全く聞こえてこないのだ。「聞こえねぇよ」と言おうとした瞬間だった。
「キャ——ッ! 下着がなくなってる!」
「……まじか」
「虎功刀、出たぞランジェリー泥棒が。捕まえるぞ」
「はいはい」
ダッと2人は悲鳴が聞こえたアパートへ向かう。すると、目の前から華麗に走る紳士のような男がこちらへ向かってくる。夜明と虎功刀は一目見てすぐそいつがランジェリー泥棒だと理解した。
——……なぜなら、その紳士のような男の背中には似合わぬ、昔話のかぐや姫のおじいさんよろしく背負う篭を背負っていたからである。よく見ると大量の下着が入っていることが確認される。
「色……取り取りだな……」
「感心してる場合じゃないでしょ社長! あれ捕まえたら報酬だ」
その下着の量の多さに夜明は無表情ながら絶句した。ようやく出た言葉が色とりどりである。虎功刀は持ち前の冷静さで夜明を諭す。
そして真っ先に下着泥棒を捕まえようと目の前にいる紳士風の男に飛び掛かる。
「我は決して捕まらぬ」
ヒラリ、と紳士風の男は虎功刀の蹴りを躱す。そんな男の表情は何かの使命に追われているかのように真剣そのものであった。
2
「あらぁ〜? また下着なくなっちゃったみたいねぇ、どうしましょう」
「どうしたの、結廻(ゆえ)」
この社内には似合わぬシスター服、そして美しい肢体を持つ女がのんびりと、だが困っている表情を浮かべながら月雲と藻琴のいる食堂へ入ってきた。
月雲の呼びかけに気が付いた結廻と呼ばれた女は2人の座っている席へ白髪の腰まであるウェーブかかったロングヘアーを揺らしながら座った。彼女は、こう見えても虎功刀や月雲と同じく戦闘員である。しかも、2人と同じく三大戦闘民族の1人でもあった。結廻は紫色の目を月雲に向けると、
「聞いてよ月雲ちゃん、藻琴ちゃん。さっき起きたらねぇ、部屋の窓が開いてたのよ。それでおかしいな〜って思って着替えようとしたらタンスが全部開いてて……嫌な予感がして覗いてみたら見事に下着がごっそりなくなってたのよぉ」
「……ついに結社内でも被害者が出ましたか」
「下着盗んでも美味しくないのにね〜、あーあ。残念、今回の依頼はハズレかぁ」
結廻は大きくため息を付く。藻琴は居心地悪そうに小さくつぶやいた。なぜなら、彼も一応男である。こんな堂々と下着の話をされては戸惑うしかないのである。
月雲はズゴーとスムージーを飲みながら退屈そうに話す。結廻は近くにあったチャンネルを手に持つと、少し先にあるテレビをつけた。
「そういえば社長はどこに行ったのかしらぁ」
「例の下着泥棒の捕獲ですよ。……ついでに虎功刀さんも」
「……? ねぇ、あれ夜明じゃない?」
月雲の顔から笑みが消えた。そんな彼を珍しいものでも見るかのように見る2人。月雲の視線の先にはテレビがあった。テレビに映っていたのはニュース。しかも、速報のようだった。
だがこのあと3人は心臓が凍りつくような思いをすることになる。
——速報です……。
——最近、めぐろ区の若い女性を恐怖に陥れた下着泥棒が数分ほど前捕まったと情報が入りました……。
——犯人の名前は不明ですが、目撃者による撮影で犯人の顔が判明しました……。
——これは……少女ですね。年齢は14歳ぐらいでしょうか。ですが下着泥棒には珍しい女性ですね……。一体彼女に何があったというのでしょうか……。