複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物 〈オリキャラ二次募集予定〉 ( No.25 )
- 日時: 2016/03/30 18:10
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: EwVeSaUz)
合歓さん
そう言ってくださってうれしいです。
これから彼女も本格的に活躍させていきたいと思っておりますゆえ!
応援ありがとうございます、頑張ります。
——夜明の逮捕(?)速報が流れてから数分。怒り狂ってしまった藻琴はすぐさま食堂を出て行った。おそらく、部屋に戻り戦闘態勢を整えるのだろう。藻琴の怒りの原因は逮捕されたこともあったが——夜明の年齢を14歳と勘違いさせられたことが一番大きかった。
さすがに本日最大のドッキリに遭遇した月雲と結廻はもう食事を摂る気にはなれない。2人はあまり使わない脳みそをフルスロットルで回していた。
「社長と虎功刀ちゃん、下着泥棒を捕まえに行ったんでしょぉ? どうして逆に逮捕されて……というか社長だけ……」
肘鉄を付きながら結廻はため息を付いた。情報が全くないため、脳筋と言っても差し支えのない彼らでも考えるという行為自体できない。よって、お手上げ状態だった。
彼女と同様に月雲も黙りこくっていた——のだが、次の瞬間下に下げていた頭を勢いよく上げた。
「——もしかしたらこれはただの下着泥棒じゃなかったかもしれないネ」
「どういうことぉ、月雲ちゃん」
「裏があるってことだよ。じゃなきゃ夜明はそう簡単に檻に入れられないよ」
「それ、わたしも気になっていたんです」
2人の食事が終えた皿を上げていく呉羽はふと、口をはさんだ。ここの社員は皆、夜明が抜け目のないことは嫌というほど知っている。下手すれば警察の方を操っていることもザラだ。
呉羽は2人の顔を見て凛々しい顔つきで言う。
「あの、わたし馬鹿なので想像でしか言えないんですけど……。きっと、社長事情があってこの状況に甘んじてると思うんです」
「……そうねぇ、きっとそうよぉ」
そっと結廻は呉羽の頬に優しく触れる。月雲は闇雲にテレビのチャンネルを変えていると……。
「……あれ、これどういうことなんだろうね?」
3
「くそっ、アンタ社長の指示じゃなかったら即潰してるからな」
「申し訳ございません。麗しきレディの下着(ゆめ)が危機に面しています故」
「おいテメェ今下着って書いてなんて読みやがった」
薄暗い橋の下に、虎功刀と例の下着泥棒の男がいた。虎功刀はともかく、男の息は切れている。余程の距離を走ってきたのだろう。虎功刀は警戒を隠すことなく男に言い放った。
男はポーカーフェイスでとんでもないことを言い放つ。虎功刀はウンザリしながらため息を付いた。
「単刀直入に言うぜ。うちの上司はこの事件、ただの下着泥棒じゃないって踏んでる。……下手したら殺人事件になりゆるほどのな。もし、それがアンタでこれからやろうっていうなら俺も仕事上黙っちゃぁいられねぇ。事情があるなら話せ。穏便に行くとは約束できねえが」
「…………」
虎功刀の言葉に男は黙りこくった。こうなることは予想できたが、さすがに牢屋にぶち込まれそうな夜明を放っておくことはできない。すぐにしびれを切らせた虎功刀は男の方を向いた。
男は、意を決したようにすでに彼の顔を見据えていた。
「いえ、すべてお話しします。どうか下着(ゆめ)を守っていただきたい」
「だからその読みやめてくんない!?」
「……確かに私はランジェリー泥棒といっても違いありません。ですが、お笑い芸人が犯した下着泥棒の罪——匂いを嗅いで己の欲を満たしていたわけでもゴミ袋がパンパンになるぐらいの下着を盗んでいたわけではありませんでした。私は量より質派なのです」
「……あのこれどうでもいい下着談義聞かないとだめなの?」
若干、長くなりそうな男の話に虎功刀はすぐさま嫌気がさしていた。と同時にどちらかというと安全地帯に入った夜明に対して怒りも覚えた。
そんな彼など露知らず、男の話は続いた。
「それに私が下着泥棒をやっていた時期は20年前——つまり、15歳までなのです」
「そんな早いころから目覚めてたのかよ」
「下着ドロから足を洗い、全うな人生を歩んでいたのです」
「いや、全然全うじゃないね。15歳で下着泥棒失効した事件でお先真っ暗だよね」
「そして、事件は起こりました。……3か月前です。あるとき、私と同じような下着泥棒がニュースとなっていました。犯人はまだ捕まっていないようでしたが。ですが、奴は下着泥棒として決してやってはいけない過ち(タブー)を犯したのです」
「……その過ち(タブー)ってのは?」
虎功刀の問いに男は一瞬、行き詰った。そして、口を開いた。
「……奴は、己の行動を見られてしまうと下着とともに持ち主を切り刻んでしまうのです」