複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物 〈お知らせ。〉 ( No.40 )
- 日時: 2016/09/05 11:21
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: nyr1MBL9)
「バラさん。性転換治す薬できた?」
「黙っとれ小娘! ……いや、腐れホスト」
「其処言い直す必要あった?」
トラブルが発生してから30分。エンジニアたちの職場は地獄と化していた。
手を忙しそうに何台ものパソコンを操る華南(♂)。華南は蛇腹(♀)の顔を見る余裕はなく、パソコンの画面を見ながら聞く。
蛇腹はイライラしながら返答する。と、言う彼も華南の顔を見る余裕がなく、フラスコに液体を慎重に入れていた。華南は若干、蛇腹の理不尽な物言いに不満を持ったが敢えて言わないことにした。
「今レモン汁を3滴……」
「ちょっと待ってバラさん。薬作ってるんだよね。なんでレモン汁入れてるの」
「当たり前じゃ! レモン汁と濃硫酸とスカトールを入れることによって薬は完璧な完成を遂げる」
「其れ薬じゃないわよ。此処の従業員みんな殺す気なの? 私シャチョーさんに『従業員まとめてぶっ殺す薬ができましたぁ☆』って言えばいいの?」
「あ、あづぃぃぃ!! 止めんか小娘!!」
薬の中身を聞いて思わず仕事を放棄し、華南は口に咥えていた煙草を蛇腹の額に押し付けた。
あまりの熱さに蛇腹は大きな悲鳴を上げる。蛇腹はしゃがみ込み、額を抑えた。
「全く……。こんな調子じゃ薬何て未来永劫できやしないわよ」
華南は再び煙草に火をつける。
「……そういえば、そろそろ3時ね」
2
「しゃ、社長ぉぉぉぉ!!」
「おお……。流石虎功刀、期待を裏切らない典型的な女体化だ」
食堂に辿り着いた夜明は早々、金髪のロングヘア—の宝塚風虎功刀(♀)に抱き着かれた。女になったとはいえ、虎功刀の身長はそこそこある。抱き着かれた夜明と抱き着いている虎功刀のアンバランスさと違和感がとてつもなく仕事をしていた。
「此処まで煙が来るなんて思わなかったけど。どうしたの。女になったことなら大丈夫じゃ……エンジニアコンビが……」
「其れもそうだけど違うんだって! 呉羽が! 呉羽が!!」
「……呉羽? 何か細めの男の子になっていそうなのだけれども」
「聞くより見てくれ!」
ズルズルと夜明は急いでいる虎功刀に引きずられていった。行った場所は呉羽が拠点としている厨房だった。
しかし、其処には屈強な米軍人のような男がいた。
その様子に思わず夜明と言えど、息をするのを忘れたほどである。
「呉羽?」
「呉羽ではない!! プロフェッサー呉羽だ!!」
カッと言う擬音語が聞こえそうだ。呉羽(♂)は進化していた。悪い意味で。あのたおやかで心優しい彼女の面影はなく。目の前にいるのは只々軍人だった。
唯一呉羽な部分があるとすれば、髪の色ぐらいだ。
「其処の雌豚ども! その軟弱な体で世界を生き抜けると思っているのか! 我の料理を食せよ」
「あ、料理(そこ)は呉羽なんだ……」
トレーニングでもさせられると思っていた夜明たちだったが、以外にも拍子抜けした。だが、今までの呉羽を見ていた虎功刀は両手で顔を覆いながら「これは夢だ……」などと呟いていた。
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因みに藻琴と時雨は買い物に行っています。