複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物【闘獄篇】 ( No.57 )
- 日時: 2016/07/12 18:53
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: kkPVc8iM)
「さあ、黒幕は誰?」
「夜明ー。それだと俺たちが89……じゃなくて敵に見えるんだけど」
「仕方ないでしょ。此奴らが口割らなかったんだから」
虎功刀達が観覧席に座る数分前の出来事。夜明と月雲は別ルートで闘技場について探っていた。
技術者でもあり、ハッキングの得意な華南に支援者のアジトを確定してもらい、2人は直ぐに虎功刀達が向かった闘技場の近辺にある寂れた廃工場に辿り着いた。案の定、堅気ではなさそうな人間が屯しており、夜明たちが要人結社だと気が付くとすぐさま襲い掛かってきた。
夜明と月雲は己の武力を最大限に行使し、5分もしないうちに全員を捕縛した。
そして夜明がその襲ってきた1人である男の胸倉を掴んで情報を割り出そうとしている姿を見て月雲はカラカラと笑っていた。
「そういう御前さんこそ敗者たちを山積みにして椅子代わりにしている鬼畜に言われたくないんだけど」
「えー。仕方ないじゃん。負けたやつは概ねこうなるのさ」
「やっぱお前鬼畜だわ」
よっと、と月雲は小さく掛け声をかけると人の山と言う名の椅子から降りた。
夜明は男の胸倉を離すと、男は体制を保てず顔から崩れ落ちた。
「早く情報吐いちゃった方がいいんじゃない? 俺らは意外に穏健派だけど、うちのメイドにアンタを引き渡したら今日の夕飯の肉になるかもしれないよ?」
「ひ……っ」
いたずらっ子のような表情を浮かべて言う月雲。夜明は呆れたと言わんばかりに彼を見た。
勿論、メイドである呉羽はそんなゾンビ紛いなことは絶対にしない。全て月雲の脅しである。
だが、先ほどの2人の圧倒的な戦いぶりを見ていた男にとっては、目の前の男と狙撃銃を片手に持つ夜明は悪魔に等しい。
「た、頼む……。知っている限りの情報は言う。だから、肉には、肉にはしないでくれ——っ!」
「えー? それはわからないよ。うちのメイドの気分次第だよ。アンタがなるのはステーキかな? それともソテーかな? でも俺は丸焼きが食べたいかなぁ」
「凄くわたしの社の評判が悪くなっていくのを感じる」
男は抵抗する気は微塵たりとも感じられなかった。男は姿勢を少し直すと、2人に向き合った。
「……察しの通り、此処は運搬場所みたいなもんだ。負けた人間や上質な臓器を非合法の奴らに売り渡すためのな」
「それと、地球の人だけじゃない。異星人も含まれてるでしょ? そんな事下手したら公になってこの世界は異星人によって破壊される。これは……」
「そうさ」
夜明の言葉を遮る様に、男は言う。
嘲笑う様に。
自分を、だ。
「……黒幕は闘技場の人間【全員】さ。人間も、異星人も全て」