複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物【血の楔篇】 ( No.89 )
- 日時: 2016/09/18 19:07
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: NzSRvas.)
「……これは……」
「うわー。無いよコレ」
「……つーかさ……。何で3人中3人が御伽話の住人な訳?」
其処に合ったアルバムを開いた夜明一行。薬を飲み終えた夜明はそれを見て思わず固まった。
中に合ったものは大きな1枚の写真。詰り、これを意味していることはお見合い写真——お見合いの相手であった。
まだそこはいい。だが問題なのは中身であった。
写真の男たちに問題があった。
1人目はおかっぱ頭に褌姿。2人目は王冠を頭に乗せた童話から出てきたような往時の服を着た男。3人目はどう見ても桃太郎のような服を着た男。
其れを見て夜明たちはげっそり……ではなく死ぬほど意気消沈していた。
「呉羽パパ本当に結婚させる気あるのかナ」
「アイツ親馬鹿だぞ、愛娘にこんなのと結婚させるわけないだろ……。あ、ほら隣に軽い説明書と名前が書いてる。呉羽読んで」
「は、はい……っ!」
流石にこの事態に月雲も「うーん」と声を出した。夜明はお見合い写真に挟まっていたメモ用紙を見つけると、それを呉羽に手渡す。
呉羽はそれを受け取った。
「まず1人目です……。金田狼藉(きんたろうぜき)。防犯メーカーの御曹司。モットーは強い男。そして2人目は池目応時(いけめおうじ)。外国でブレイク中のモデル。趣味は盆栽ですね……。3人目は桃瀬太郎彦(ももせたろうひこ)。有名政治家の長男ですね。趣味は独裁……」
「強いて言うなら池目」
「俺も池目」
呉羽がメモを読み終えた瞬間、夜明と月雲は強い眼差しで即答した。特に最後の男なんてもってのほかだ。
夜明はもしものことがないように池目以外のお見合い写真を持っていたライターで灰にした。
すると、天井から放送が流れだした。
『困りますよ夜明さん、勝手に燃やされちゃ。あ、呉羽。急だけど明日池目応時と午前11時からお見合いだからね。逃げても無駄だよ。迎えが来るから。じゃあ、今日は大人しく寝て明日に備えてね」
娘用の甘ったるい声で笄は放送越しにそう言った。
ギュッと呉羽は悔しそうに唇を噛む。月雲は夜明の顔を見る。
「夜明、如何する気?」
「寝る」
「え……っ!?」
予想外の言葉に呉羽は思わず目を見開いた。「どうして」と小さく呟くと夜明はベッドに横たわりながら低く唸る様に話す。
「どうしてったって……。もしかしたら池目、めっちゃいいやつかもしれないし。もしそうだったら結婚すればいい」
「そんな……っ」
「ま、それもそうだネ。何とかなるよ」
月雲も同調し、勢いよく布団の中に入った。それを見た呉羽は思わず眉を顰めた。
(……誰も、助けてくれない……っ)
時刻が次の日にちを迎えた時。高い塔の上に藻琴は其処にいた。
だが、目はどこか虚ろだ。
目の前のものさえ見えているのかわからない。
「……終わらせなきゃ、いけない」
そう呟いた瞬間、彼は音もなく姿を消した。