複雑・ファジー小説
- Re: 名前のない怪物【血の楔篇】 ( No.98 )
- 日時: 2016/11/03 20:33
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: NzSRvas.)
「ファアアア……。久しぶりの非番だったから思いっきり寝ちまった……」
何時もよりボサボサの髪を乱暴に掻くとすぐさま食堂へ足を運ばせる虎功刀。呉羽は結構融通が利くのでこういうイレギュラーなことにも結構対応してくれるのだ。
何時もの様に。朝食をとる。そう思っていた虎功刀だったのだが……。
「なーにやってんだ?」
「不貞寝よぉ、虎功刀ちゃん」
食堂の椅子3つを繋げて寝転ぶ結廻。そんな彼女に虎功刀は怪訝な視線を送る。彼女のこういった奇抜な行動は何時もの事なのだが、唯一気になったのが不機嫌そうな声音。能天気な彼女は基本不機嫌になったりすることは殆どないのだが。
ある点を除いては。
丁度近くにいて袋に何かを詰めている蛇腹に【確認】することにした。
「なあ爺さんまた此奴……」
「いちいち聞くな馬鹿者。察しの通りいつも通りじゃ。此の小娘が華南の餓鬼に伝言したらそっから直ぐに口喧嘩。全く、学習しない小娘共め……」
「あっちが悪いんだからぁ! 時雨ちゃんの伝言伝えたら『じゃあ異星人でも捕まえて薬売って利用しようかしら。そっちの方が手っ取り早い』って言ったのよぉ! 全く、異星人を何だと思ってるのかしらぁ」
顔を2人にも向けず寝そべったまま、勢い或る口調で説明した。先程の口喧嘩は何時ものことながらヒートアップしたらしい。華南と結廻は出身も思考も育ちも違うためにこういった口論になることはしばしばあるのだ。
蛇腹はそんな彼女を見て大きくため息を付いた。
「見ていられなくなってな、少々違法行為だが社長が向かわれたとされる政察本部をハッキングした。深いことまでは調べられなかったが中々にヤバい。藻琴の小僧が大暴れじゃ」
「藻琴……。なんでまた。あそこアイツの実家だろ」
「詳しいことまでは知らぬといったはずじゃ! ホレ、さっさと荷物を持って政察本部に行け!」
痺れを切らしたように蛇腹は背負うタイプの袋を虎功刀に手渡した。眉を顰めながら虎功刀は蛇腹を見た。何て言ったって、今日は非番なのだから。
「爺さん……。知ってんだろ、今日俺非番……」
「さっさと行かんかい! 政察なんぞ死ぬほど興味はないが、社長は午後3時の薬を忘れられている!!」
「社長——っ!!」
カッと言わんばかりに目を見開いた蛇腹。其の言葉を聞いて虎功刀は一目散にドアをけ破る勢いで走り出した。社長は薬を飲まないと死んでしまうのだ。皆さん忘れているかもしれないが。
「中に入っているもの全部社長に渡すのを忘れるな!」
「ねぇ、おじいちゃん。藻琴ちゃんの実家って……」
「言ってなかったかのぉ」
漸く顔を蛇腹に向ける結廻。そんな彼女を見下ろしながら蛇腹は言う。
「呉羽の小娘と藻琴の小僧は姉弟。政察トップの娘と息子じゃよ」