複雑・ファジー小説

Re:第一話 〜噂はきっと正しい〜 ( No.1 )
日時: 2016/03/08 22:32
名前: かたるしす (ID: f/YDIc1r)

第一話 〜噂はきっと正しい〜

古い、掃除もロクにされていないだろう階段を上がる。
手すりに手をかけ、汚さに驚いて手を放した。
一つ、ため息をつく。
遠くのグラウンドから、運動部の掛け声が聞こえた。

___どうして、私はこんなところに来たんだろう。休日の穏やかな時間を返上してまで。



「ねぇねぇセナってさ、まだ部活に入ってないの?」

昨日、モモカと話した。彼女は吹奏楽部に入部し、毎日をエンジョイしている……らしい。
こんな私に話しかけてくれるのも、友達であるモモカだけかもしれない。

でも、モモカは私の事を「親友」呼ばわりするくせに、名字でしか呼んでくれない。

「いいじゃん、『つばめ』って何か言いにくいし。って言うか、話をそらすな!」
「……何? 部活の話?」
「そう! で、セナ、入らないの?」

改めて言われ、うーん、と考えてしまう。もう五月中旬。そろそろ決めないとマズい。
でも、私に合う部が、この学園には無い……気がする。

運動系の部は少しも入りたくないし、美術部は絵が下手だから嫌だし、製菓部は興味ないし、茶道部と華道部と書道部は正座がキツい。
だからと言って、帰宅部はちょっと……

「それさぁ、ただのわがまま……あ、新聞部は? セナ、他人の事情とか好きじゃん」
「なんかお堅いから嫌」

私もモモカも、頬杖をついてまた考える。どうすりゃいいんだろう。

「あ、そういやさ。『茶会部』って知ってる? 最近一年の間でも噂だよ?」
「……何それ」

聞いたことのないワード。なんとなくアブノーマルな匂いがする。
茶会部? そんなの部活紹介の時にあった?
問いかけると、モモカは首を横に振り答えた。

「積極的に部員募集はしてないんだって。基本的に悩み相談を受け付けるんだけど、その時に、相談した人が凄い体験するらしいんだよ」
「はい?」
「なんかね、出てくるお茶とお菓子が半端なく美味しいんだって! そこらのカフェの何倍も!」

ますます胡散臭いし、怪しい。
でも、なんとなく興味をそそられる。「普通」の部活じゃないところも気に入った。
入部したら、どんなことするんだろ。

「というわけで! セナ、明日行ってみてね」
「……え?」
「場所は旧校舎三階、右端の教室だってさ」

どうしてそうなった。
勝手に決めないでほしい。モモカは強引だ……

「嫌そうな顔しない! ホントは興味あるんでしょ?」
「うっ…………はい」

じゃ、頑張って〜! というモモカの顔は、何か企んでいそうな顔だった。



そんなこんなで今日、旧校舎にやって来た訳だが。

「迷った……」

っていうか右端の教室って何、どこから見て?
モモカ……説明がざっぱなんだよ。

まぁ、詳しく聞かなかった私も悪いわけで。
迷った挙げ句ようやく階段を見つけ、三階へと進んでいた。

……しかし、この校舎も古い。
どうして今まで取り壊されなかったかも疑問だ……
そんなことを考えながら、階段を上がる。

ついに、終わりが見えてきた。段の終わり。

「……疲れた……」

呟きながら、重い足を踏み出す。
ようやく、三階に着いた。本当にキツかった。

「はぁ……着いた……ってうわぁっ!?」

体の右側が押され、思わず大きくよろめく。倒れる寸前で踏みとどまった。
危ない危ない。心臓が止まるかと思った。

混乱し、右側を向くと、人が立っていた。どうやら廊下を歩いていたらしい。

「あ、あの、すみませんでした!」

ぶんっ、と音を立てて頭を下げる。

(…………?)

しばらくそのままの体勢でいたが、相手は何も言わない。動く気配すらない。
恐る恐る顔を上げて、相手を見る。
黒髪の泣きボクロがある男子生徒が、無表情で首をかしげていた。腕に何か抱えている。

「あの……」
「お客さん? それとも、入部希望?」

無表情のまま訊ねてくる。私はとっさに、「入部希望です」と答えてしまった。
しまった……

黒髪の生徒は、ふうん、と頷き、きびすを返す。手に持っていた物が、かちん、と音をたてる。
生徒はそのまま、すたすた歩き出した。

「付いてきて」

そう言われ、我に返り後を追う。
思い出した。あの人が手に持っている物。
鮮やかな赤と黒で、紅葉の柄の……茶道で使う茶碗。

とても、綺麗だった。

Re:第一話 〜噂はきっと正しい〜 ( No.2 )
日時: 2016/03/10 00:29
名前: かたるしす (ID: f/YDIc1r)



細い背中を、追いかける。
廊下をどんどん進み、やがて一番端にたどり着いた。
教室なのだろうか。扉の上にはプレートが掲げられている。

そのプレートには、達筆な文字で「茶会部」とあった。

「……入って」

彼が古い扉を横に引く。
教室の中へ一歩踏み出すと、暖かい日差しと、かすかな甘い匂いがした。
教室の真ん中に、白い綺麗な丸テーブルと椅子。
その椅子に、一人、誰かが向こうを向いて座っている。

「あ、おかえり」

その人は、そう言って振り返った。優しそうな垂れ目が、私を捉えた瞬間に、大きく開かれる。
珍しいものを見た、とでも言いたげに、私と黒髪の生徒を見比べた。

「あ、ごめんね! お客さん?」
「……違うって。入部希望」

さらに目が大きくなる。
その人は慌てて立ち上がり、赤っぽい色の短髪を掻いた。
しばらくしてから、悪いね、と言ってにっこり笑う。

「ちょっと新入部員とか、珍しいから混乱しちゃって……俺、相原 昴。一応部長の2年生! スバルって気楽に呼んでね」
「あ、はいっ」

どうしよう……まだ入部するとは言ってない……

「あの、昴先輩……」
「ん? ああ、こいつのこと?」

そう言って、黒髪の生徒の肩をぽすぽす叩く。いや、違います。
私が見つめているのにも気付かず、爽やかな笑顔を崩さない昴先輩。意外と天然か。
間を置いて、黒髪の生徒は無表情で言った。

「水城 慶。2年。ケイって呼んで」

……はい、と言いながら頭を下げる。
私は、さっきから慶先輩の持っていた茶碗が気になっていた。今は、白いテーブルの上に置いてある。
茶会部、というから、紅茶か何かと思っていたが、もっと和風な感じなのだろうか。

「……そうだ、君の名前は? 何て言うの?」

昴先輩が、にこやかに問いかけてくる。この先輩は人当たりが良い。好感度しかない。
慶先輩も、一見無表情に見えるが、実は結構嬉しいの……かもしれない。何だか、初めて会った時より雰囲気が柔らかい気がする。

「私は……」


言いかけた時、教室の入り口がガラガラガラッ、と勢いよく開いた。廊下から、淡いブロンドの髪を乱し、美少女が飛び込んでくる。
彼女は、綺麗な青い目で私を見ると、いきなり指を突き立てられた。

「見つけましたわ、変態コソ泥っ!」
「……へ?」

え? 私、何か盗んだっけ?

おろおろしている私をよそに、突然やってきた彼女は、私をキッと睨みつけ、声を荒げた。

「しらばっくれたって無駄ですわ。今まで、何人の女子のストッキングを盗んでらっしゃるとお思いなの!?」

…………は?
ますます分からない。
混乱した私に、昴先輩が慌てて助け舟を出してくれた。

「おい、待てよカトレア。なんで女子が女子のストッキング盗む必要があるわけ?」
「きっとあのコソ泥は女子しか好きになれないのですわ!」
「え、ちょっと……待って下さい! 私そんなんじゃ」
「黙ってお縄になるのですわ!」

駄目だ、全然聞いてない。
昴先輩はかなり困惑しているし、慶先輩は相変わらず無表情だ。
……どうすれば疑いは晴れるのか……

じりじり彼女が近寄ってくる。それに合わせ、私も後退する。彼女の目は、真剣そのものだ。
もう捕まるかもしれない。

「観念するのですわ……!」

と、その時、一人の男子生徒が廊下を通りかかった。私達に気付き、声をかけてくる。

「あ、カトレア! コソ泥、二階で捕まったってよ! 協力ありがと」

それだけ言い、男子生徒は去っていく。



……教室を、すさまじく微妙な空気が包んだ。

Re:第一話 〜噂はきっと正しい〜 ( No.3 )
日時: 2016/03/17 09:02
名前: かたるしす (ID: f/YDIc1r)





「……本当に申し訳ありませんわ」
「いや……あの……」

凍り付いた静寂を破ったのは、ブロンドの彼女だった。意外と常識があるようで、直ぐに謝ってくれた。
ただ……

「……土下座することもないと思いますよ……?」

私が言うと、彼女は渋々顔を上げた。きっちり巻かれた縦ロールの髪が、細い背中を滑る。
彼女は正座したまま、青空のような青い瞳で私を見上げた。なんだか私の方が、立場が上になってしまうような格好だ。思わず、私も慌てて正座をしてしまう。
後ろで昴先輩が吹き出す音が聞こえ、顔が熱くなった。

「2年A組、カトレア・アントワーヌと申しますわ。日本生まれの日本育ち、だけれど純ヨーロッパ人ですの」

再び完璧な角度で頭を下げ、名前を言う。やっぱり先輩だった。入学式にこんな外国の名前が呼ばれたら、絶対覚えているだろうから。でも、綺麗な名前の響きだと思う。

「1年C組、瀬名 つばめです。よろしくお願いします」

私もつられて、頭を下げた。
……あ、よろしくって言っちゃった。
顔を上げると、カトレア先輩の顔が、たちまち明るくなっていくのが見てとれた。これはまずい。

「スバル! セナは新入部員なんですの?」

お願いします昴先輩、頷かないで……!
願いながら後ろを振り向くと、私の願いに反し、昴先輩はにこやかに「そうだって!」と首を縦に振った。
カトレア先輩が、歓喜の声をあげる。輝く笑顔で、私の手を握ってきた。白く、細い手に力がこもっている。

「可愛い後輩ができて、とても嬉しいですわ! よろしく頼みますわよ!」

凄く、凄く嬉しそうな顔。可愛い後輩、かぁ。こんな顔されたら、もう引けない。というか、私の中の良心がそうさせてくれない。
ああ、こんな明るい顔をする人が先輩だったら、毎日楽しいだろうなぁ……と、思ってしまう。


……少し楽しそうじゃない?

私の心の奥底に、ぽつん、と浮かんできた思い。
そんなことない、疲れるだけ、と、心の大部分は反発している。でも、私は懸けたくなった。その、一粒の思いに。

……きっと楽しいよ。

心が、少し疼いた。心臓の鼓動も速くなっていく。
……うん、私もそう思う。


「よろしくお願いします」

私は、カトレア先輩の手を、強く握り返した。
先輩の顔が、一層喜びを増したように見えた。

「ええ、よろしくですわ!」



立ち上がり、後ろを向くと、昴先輩も嬉しそうに笑っていた。慶先輩は、やはり無表情を崩さないが、なんとなく微笑んでいるような気がする。

「良かったじゃん。また一人後輩が増えたな」
「え? 『また』って?」

不思議に思って訊くと、昴先輩は悪戯っぽい笑みを浮かべて答えた。何か面白がっているような雰囲気があるのは、気のせいだろうか。

「いや〜、先週、新入部員が来てさ。今は買い出し行ってて居ないけど。面白い奴だよ。セナちゃんと、ある意味いいコンビになるかもよ?」

ある意味、とは……
くすくす笑う昴先輩に、苦笑いしか返せない。
おもむろに、私の事をじっと見ていたカトレア先輩が、声をかけてきた。

「……セナ、その髪型」
「え?」
「その髪型、私と被ってますわ」

慌てて確かめてみると、言う通り似てなくもない。私もカトレア先輩もロング。でも、私はところどころ少しだけ内側にカールしていて、先輩はきっちりとした縦ロールだ。色も、黒とブロンドだし、パッと見結構違う。

「それはそうなのですけれど。集団で集まる場所では、中身だけではなくて、はっきりとした見た目のアイデンティティーも必要ですわ。ちょっとお待ちになっていて」

カトレア先輩は私の後ろに回り込み、どこから出したのか、ヘアブラシで私の髪をすき始めた。

「え!? ちょ、ちょっと」
「暴れると髪が抜けますわ。しかし、いい髪質ですわね。色も真っ黒でつやつやしていますし」

助けを求めてもう二人の先輩を見る。昴先輩は必死に笑いを堪えているし、慶先輩は興味無さそうに椅子に座り、テーブルの上の茶碗をいじっていた。駄目だこりゃ。

髪が抜けるのも嫌なので、おとなしくしている。するとカトレア先輩は、すき終わったのか、私の髪をゴムでまとめだした。

「……出来ましたわ!」

しばらくすると、髪から手を放し、手鏡を私に差し出してくる。それを受け取り、恐る恐る覗き込んでみた。

「……!」

鏡の中の私が、黒い目をぱっと見開く。
量の多い髪は左サイドの高い位置にまとめられ、さらさら揺れていた。サイドテール、というやつだろうか。不覚にも、いい、と思ってしまう。こんな私は、見たことがない。
驚きの目で、カトレア先輩を見ると、どうだと言わんばかりに笑っていた。

「思ったよりも似合ってましたわね。セナの顔立ちにもぴったりですわ。可愛いですわよ?」

褒められ、照れて頬を掻く。あぁ、モモカに笑われそうだ。ほどくのも許されなさそうだし、どうしようか。というか、私もほどきたくない。

嬉しいような、困ったような気持ちで毛先をいじっていると、昴先輩が含んだような笑いを浮かべて褒めてきた。

「似合ってるよ、セナちゃん! ……でも、ちょっと意外だったな〜。髪の毛触られてるとき、すっごい気持ち良さそうな顔してたね?」

ぼっ、と顔が赤くなるのが分かった。そうだったのか、としどろもどろになる。すごく恥ずかしい。言い訳しようと言葉を探していると、慶先輩が、茶碗に目を向けたまま呟いた。

「……猫みたい」

昴先輩が、耐えきれず爆笑し始めた。カトレア先輩も、ぷっ、と吹き出して口を押さえている。慶先輩だけ、そんなに面白いこと言ったっけ、という顔で首をかしげていた。

「笑わないでください! 恥ずかしいです!」

叫んだ私も、少し笑ってしまった。
ああ、ここは、とっても暖かい。包まれるように。

本格的に笑い出した私達を見て、慶先輩はやはり不思議そうにしていた。

Re:第一話 〜噂はきっと正しい〜 ( No.4 )
日時: 2016/03/18 05:52
名前: かたるしす (ID: f/YDIc1r)



ようやく笑いも収まった頃。
教室の窓の外の太陽は、少しずつ傾き始めていた。時計を見ると、4時ちょっと前。意外と時間が経っていて驚く。昴先輩も、気付いたように頷いた。

「……ああ、もうすぐ部活動終了の時間だね。しっかし、樹希ってば帰り遅いなぁ〜」
「いつき……?」

もう1人の1年のことだよ、と、朗らかに笑いながら返される。そっか、買い出しに行ってたんだっけ。男なのだろうか、女なのだろうか。ちょっと気になる。

だが、その答えは割と直ぐに分かった。

「……呼んだっすか、先輩」

ガラガラッと教室の戸が開き、不機嫌そうな声が届く。入ってきた人影は、両手にスーパーの袋をぶら下げていた。そのまま歩いてくると、テーブルの上に、袋をドサッと乗せる。慶先輩が茶碗をどけながら呟いた。

「……おかえり」
「樹希、遅かったね〜。女子に声かけられてたの?」

からかうように笑いながら、話しかける昴先輩。その生徒は、うざったそうに顔を上げた。
……あ、この人見たことある。モモカが、やたらイケメンイケメン騒いでた人。栗色の髪と瞳。アホ毛が跳ねているのが特徴的だ。ここまでだと優しそうなイメージだけど、その瞳はつり目なので、怒っているような印象がある。というか、怒っている。

「……一番安い卵買ってこいって言ったの誰っすか。どこも高すぎてスーパー4軒まわってきたんですけど」
「あーごめんね。ごくろ〜さん!」

まったく悪びれた風もなく、軽く言う昴先輩。生徒はへらへら笑う姿を睨み、その目を私に向けてきた。背筋がびくっと伸びる。冷たい視線が痛い。

「……誰だよお前」
「……っ」

唇と唇がはりついて、口を開けない。怯えて、なんて言えば良いのか分からなくなってしまう。完全にタイミングを逃した。
何も言えずにどもっていると、後ろから、肩にふわっと手がのせられ、落ち着いた声がかけられた。

「新入部員の子……あんまり……虐めないで、樹希」

どこか怒っているような、心配しているような気持ちが、声からにじみ出ている。私が振り向き、頭を下げると、慶先輩はほんのすこしだけ唇の端を上げた。
すると、また両肩に手が置かれ、体重が乗せられる。

「同じ1年なのですから、仲良くしてくれないと困りますわ。樹希、もっと目付きを和らげることですわね」
「……余計なお世話です」

乱暴に言い、私と目線を合わせてくる。視線を逸らしたら負ける、というよくわからない勝負のようなものを感じた私は、我慢して、身長の高い樹希の顔を見上げていた。
ずっと睨み合っていると、やがて、樹希の方が口を開いた。

「……1年B組、三枝 樹希」
「……あ、えっと、1年C組、瀬名 つばめ……です……」

突然自己紹介した樹希につられて、私も喋ってしまった。しかも、声が若干裏返ったし、語尾に「です」をつけてしまうという失敗。たちまち顔が赤くなるのが分かる。うつむき、だんまりを決め込んだ私を、樹希はしばらくじっと見ていた。すごく居心地が悪い。

「二人とも、そんな険悪にならない! ほらほら、皆で樹希が買ってきたやつ冷蔵庫に入れるよ!」
「……分かった」
「了解ですわ。樹希、レシートは持ってますわね?」

カトレア先輩が、手を出す。樹希は、私を鼻で笑ったあと、先輩にレシートを差し出した。そのまま、2人の先輩について教室を出ていく。これは、あまり仲良くなれなさそうな気がする。ため息をつくと、カトレア先輩が私の頭をぽんぽん、と叩いた。

「感じ悪くて本当に嫌なやつですわね。でも、ああ見えて意外と根はいい人なのですわ。セナに当たりがきついのも、人見知り。それだけですわ」
「人見知り……」

そういうレベルではちょっとない気がする。むしろ反抗期か。でも、カトレア先輩が言うのなら、きっとそうなのだろう。ぶっきらぼうな態度も、柔らかくなるだろうか。そうなってくれると嬉しい。

「そういう風に思えるなら、セナはきっと、樹希のことをそんなに悪く思っていないのかもですわね」
「そうですか?」
「ええ、きっと。さ、私たちも追いかけますわよ!」

カトレア先輩に、腕を引っ張られる。

……今すぐじゃなくても別に良い。
「いつか」仲良くなれたら、その時は私はきっと、喜んでいるだろうな。