複雑・ファジー小説
- 第1話 patr1 ( No.1 )
- 日時: 2016/04/07 06:51
- 名前: 囚人D ◆7cyUddbhrU (ID: 9/n2KZgq)
2037年05月13日に起こった巨大太陽フレアは、その数時間後地球に到達。太陽フレアの影響を受けた発電所の送電システムは障害を起こし、98%以上の『文明が生んだ光』は地球から姿を消した。
そして、暗闇の地球に突如現れた『侵略者』によって、地球に築かれたあらゆる文明は崩壊。当時の世界の9割以上の生命体は死に絶え、生き残った人々は侵略者の手の届かない場所へと逃げ果せた。
そんな「悲劇」から20年、物語は始まる。
【第1話】戦う者
静かな、本当に静かな場所だった。人の声も、鳥の声も無い、ただ風が走る音以外のものは何一つとしてそこにはなかった。
空は快晴、陽の光を遮るものは存在しない。現在において、『安全に』地上へ光をもたらすものは太陽くらいなものだ。それが、20年前世界を終末へと導いたものの元凶であるというのはなんとも皮肉な話である。
「ボロボロだな」
そう呟いたのは、真っ黒な髪の男だった。彼の黒い瞳に映るのは、荒廃した都市とその街並み——いつもなら鋭く睨みをきかせている彼の目も、今はどこか哀しそうに伏せられていた。
かつて、日本の首都と呼ばれていた東京の面影はなく、目の前にあるのは20年前訪れた悲惨な殺戮の跡だった。彼は瓦礫と化した首都を見上げながら、ただ茫然とする他は無かった。
そうしていると、突然男のインカムが鳴った。
「0411、聞こえるか」
続けて入ってきたのは、男がよく知る声。その声を耳にし、男はようやく我に返った。
「おう、こちらゴウ。どうしたオッサン」
「任務中は番号で呼べと何度言えば分かるんだ」
インカムの向こうで『オッサン』は呆れたようにため息をついた。
彼の言葉に、『ゴウ』と名乗った男は肩を竦める。
「んな細けぇ事どうでもいいだろ。どうせ今日も巡回して帰るだけなんだからな」
こうなりゃ任務もただ面倒なだけだ、と呟き、ゴウはさも退屈だとでも言うように頭の後ろで腕を組む。そして、足元に落ちていた石ころを蹴とばした。そんなゴウに対して、オッサンは一層口調を強くする。
「聞こえなかったのか? 俺たちは今”任務中”だ、0411」
この任務はお前が思っているよりももっと重要なものだ。何故それが分からない——と、オッサンがやや説教交じりで話し始めたところで、ゴウはようやく観念したようにため息をついた。
「あー、はいはい分かりましたよ、0392。ちゃんとやる。えー、こちら0411。何の用だ?どうぞ」
「何の用だ、じゃないだろう。ポイントに到着したなら報告しろ。で、今の状況は」
「けっ、報告するような事ァ何もねえよ。分かるだろ」
ゴウは先ほど自分が蹴とばした石ころの方へを足を進めながら、相変わらず面倒くさそうに答えた。
ゴウ達は、毎日この東京エリアの巡回を行っていた。ゴウが暇だと憂いているように、任務開始から特に何か起こるわけでもなく、朝から夕暮れまで巡回、本部へ帰投した後にも報告が待っていた。そして、この任務を任され、かれこれもう2週間ほどになる。この壊れかかった建物以外何もない東京での任務は、ゴウにとって苦痛以外の何物でもなかった。
*
荒廃した世界から物語が始まります。よかれば見てやってください(・ω・)