複雑・ファジー小説

patr1続き ( No.10 )
日時: 2016/04/12 16:27
名前: 囚人D ◆7cyUddbhrU (ID: 7WA3pLQ0)

 ゴウの足は一直線に目の前のバケモノ、もとい侵略者へと向かう。自身の何倍もの大きさを誇る相手を前にしても、ゴウが臆することはなかった。
 ゴウの動きを察知し、侵略者はハサミを大きく振るった。ゴウは「予想済みだ」と言わんばかりに素早く体を屈める。頭のすぐ上をハサミが擦過し、空を薙いだ。そこで相手に大きな隙が生まれる。当然、その隙を見逃さなかった。ゴウは地面を強く蹴り、1を数える間に相手の懐へ飛び込む。狙いは振り切って静止したハサミ、否、鉗脚の節。瓦礫の装甲と装甲の間、肉質がむき出しになった節を目がけて跳躍すると、ゴウは勢いのまま手にしていた剣を降り下ろした。

 防御に優れた瓦礫の装甲だが、それが仇となった。頑丈で重たい鎧を纏った体は、ゴウの俊敏な動きに追いつくことができなかった。侵略者が抵抗する間もなく、刃は肉へと食い込む。しかし、節を断ち切るほどではなかった。
「ちっ、思ったよりも固ぇ……!」
 ゴウの手にしている剣は刃渡り90センチ、剣幅は5センチ程のものである。対して鉗脚の節は、直径30センチの丸太に負けず劣らずの大きさであり、易々と断ち切れるようなものではなかった。事実、刃は筋の半分にも届いていなかった。
 青黒い返り血を浴びながら、ゴウは悔しそうに歯を食いしばったが、それも一瞬だった。ハサミを蹴り宙へ跳ぶと、ゴウは口端を釣り上げる。

「なら、こいつはどうだァッ!」

 ゴウが叫んだ瞬間、手にしていた剣がどす黒く変色し始めた。侵略者がゴウの方へと体を向けた時には剣全体が真っ黒に染まっており、刃はその形状を失っていた。しかし、ゴウがそれを振り上げると、握りから黒の刃が再構築されてゆく——先ほどの刃よりも、長く、大きく。そして、次の瞬間には、その剣は反りのついた『巨大な剣』となっていた。刃の先になるほど剣幅が大きくなり、黒く変色していた刃は色と金属の輝きを取り戻す。
 手に感じる重量も比にならぬほど跳ね上がったが、ゴウにとって問題ではなかった。ゴウはその巨大化した剣を強く握り直すと、侵略者目がけて思い切り振り下ろす。
 侵略者はその攻撃から身を守るため鉗脚を持ち上げたが、ゴウはそのまま剣を叩き込んだ。その衝撃で瓦礫でできた頑丈な装甲はへこみ、ハサミにはひびは生じた。剣はそのまま滑るように地面に叩き付けられたが、侵略者も装甲を傷つけられた事に動揺し動きを止める。
ゴウはそれを見てニィと笑うと、振り下ろした刃を返し、先ほどの『節』を斬りつけた。



戦闘シーンは書いてて面白いです(∩´∀`)∩