複雑・ファジー小説

Re: 【長編】花が咲く【ミステリー】 ( No.10 )
日時: 2016/03/16 19:14
名前: ゆり ◆Qd6XA/vkyQ (ID: e4Kmar5i)

3話「瀬戸先生」


長かった授業もようやく終わり、放課後になった
調査を始める筈だったけど、瀬戸先生にまさかのお呼ばれというプレゼントを頂いてしまった。なんと間の悪い奴だろう

「てか好都合じゃない?瀬戸先生に伝説の二人について聞いてきなよ。当初の予定では、卒アル見せてもらうんでしょ?」

唯はそう言うけど…

「そうだけど。見せてもらえるかなぁ」

どっちかというと、そういったことには興味がなさそうというか、そもそも授業を中断させてしまった原因について話すのも。
また火花を見る事なりそうだ。今度は、特大の花火くらいの

「ダメだったら別の先生に聞くよ」

「康!!瀬戸センのとこ行くんだろ?俺も用あるから一緒に行こうぜ」

肩をポンと叩かれた

睦月だ
心なしか顔色が悪い。目の下にも真っ黒な隈ができている
もしかしたら、昨日は徹夜で勉強をしていたのかもしれない
来週は期末だからな、やっぱりトップをキープするのは難しいんだろうな


「そうだね、じゃあな、唯。行こう睦月」

「おう」


俺は、これから睦月の前で、伝説の二人について話すのはよそうと決めた
隈ができるほど疲れている時に、能天気に伝説の二人のことについて話をすのは、流石に…

「そういえば康、調査の方はどんな感じだ?」

「へっ…?」
まさかの反応
実は気になっていたとか…?まぁ俺と唯だけじゃなんともまぁ頼りない事コンビだろうね

「まだ全然。とりあえず、瀬戸のとこ行くついでに卒業生の卒アルでも借りようかなって」

「そんなに簡単に何か手がかりが見つかるとは思わないけどな。瀬戸セン厳しいし」

まぁ、そうだけど。でも他に方法がないから仕方ない
卒アル見せてもらえなかったら聞き込みでもするか。朝は失敗に終わったけど

                     ■


「瀬戸——!言われた通り来ましたよー」

「先生をつけろ、バ神崎。」
うっ、俺の苗字が、かからはじまるからって、安直なあだ名をつけやがって、バカなのは否定しませんけど

「はい、先生。反省文ですか?」

「それもだけど、お前に聞きたいことがあってな。あ、お前も一緒なのか」

そう言って先生は俺の隣の睦月の方に顔を向ける

「えぇ、ちょっとテストの範囲で聞きたいことがありまして」

こいつマジですげぇ
俺なんて赤点とらなきゃいいや、って思ってるのに。そもそもテスト勉強なんて週末にやればいいやって思ってるくらい
そういえば前回のテスト、何位だっけ?確かトップスリーには入ってたような…

「そっか、悪いけどこのバカに説教が先だから。なんだって、伝説の二人について調べてるんだって?」

そっちの方に食いつかれるとはなんともまぁ予想外だ。今日は予想外の連発だね、これは良い事なのか?

「えぇ…。ゆい…福田さんに聞いて。割と興味が湧いたので、二人について調べようと思いました。あっ、ちょうどいいですね先生、過去10年分くらいの卒アル貸してくれません?」

「突っ込みたいことが山ほどある。まず、来週期末テストだというのに、そんなくだらん噂に振り回されるな。時間の無駄だろう。そして二つ目、素性もわからない二人の事をどうやって調べる気だ?卒アル?名前すらわからない癖に、そんな考え無しのやつに、気軽に生徒の個人情報が載ったアルバムは貸せない」

言われて気づいたけど、確かに俺はどうやって調べるつもりだったんだろう。うーん、この考えなしなところ、もうすこし直すべきだろうか

苦笑ものだ。いや、でも何も手がかりがないとどうして言い切れる?

「何がわかるかわからないかだなんて、そんなの調べてみなければわかりません。この学校、昔から不穏な噂が多いですよね。それに関係してるのかもしれないし」

「言いがかりもいいところだ、神崎。伝説の二人というのは、所詮は噂なんだ。俺は、この学校に来て9年目だが、伝説の二人なんて根も葉もない噂が出回っているだけで、まともな情報なんて無い」

「でも、知ってる人はいるかもっ…」

「神崎。頼むよ、お前、テストの順位はいつも最後から数えた方が早いだろ?そんなくだらない事やってる暇があったら、勉強しなさい。先生のためだと思って!」

そう俺に懇願する教師
俺のテストの結果について思案している様子など、微塵も感じられなかった
ただ、伝説の二人、このキーワードを聞いて
それのために、俺に調査をやめるよう嘆願している

…昔、先生がいる頃、何か起きたのか

勘は鋭い方ではないけど、俺はそう感じた
もしかしたら睦月も何か感づいたのかもしれない。怒っているような、涙を我慢しているような顔になっている


「先生、落ち着いてくださいよ」

睦月の声で、先生はハッとしたような顔をして俺をもう一度見た

「すまん、ちょっとだけ焦った。実はな、昔もいたんだよ、お前みたいにその事件に突っ込んだやつが」

「どうなったんですか?」

「時期が時期、ってこともあったんだけど、高3だったんだよ。勉強もしないで、ありもしない噂を追いかけて。大学受験に失敗さ。お前はまだ高2だけど、だからといって勉強をおろそかにしてもいい理由にもならない。」

そうまくしたてる先生に、俺は何も言い返せない
確かに、そうだけども。
でも、何も思わないのか。俺は、ただなんとなく調べようとしただけなのに。伝説という言葉に惹かれて、調査を始めただけなのに。それとも、そんな簡単な動機で詮索をしてはいけない、重要な理由があるのだろうか

黙ってしまった俺を見て、先生はこう付け足した

「昨日学校に遅くまで残ってたせいで疲れてるんだ…あまり悩みの種を増やすなよ。とりあえず、反省文は5枚書いてこればいい」

「はい、わかりました」



***
後で修正します

Re: 【長編】花が咲く【ミステリー】 ( No.11 )
日時: 2016/03/22 10:59
名前: ゆり ◆Qd6XA/vkyQ (ID: du25tn4c)
参照: 3話続き


その日の夜、今日起こった事を頭の中で整理してみた────

のだが途中で頭がこんがらがったので、ノートに書き出し始める

登場人物は俺、唯、睦月、瀬戸先生、そして伝説の二人だ。あと一応聞き込みしたし、牧野さんも入れておこう

といっても、はっきり言って収穫はゼロに近い…というかゼロだ。瀬戸先生が二人のことを知っている可能性がでたけど、あの様子じゃ教えてはくれないだろう
他の先生に聞くのはどうだろう、それは明日でいいか

俺の予想では、先生がいた9年程前…から今までの間に何かが起きた可能性が高い。

割と最近だよな、9年前なんて

どうして隠そうとするのだろう?
二人は、きっと先生の教え子だ。でも、その教え子が伝説にまで残る事をしでかしたのだから、普通は自慢するのではないか?

そもそも、伝説とまで言われているのに、情報が不確かなのが引っかかる。噂として残っているのなら、もう少しマシな情報が残っていてもいいはずなのに。それとも、これはやっぱり誰かが作り出した嘘の塊なのか?


うーん、ダメだ。さらにこんがらがってきた
解そうとすればするほど、複雑に絡み合っていく糸のようだ
いっそのことハサミでちょん切ることができたらどんなに楽だろう

でも、自分から好奇心で突っ込んだ場所なのだ
そんな無責任なことはいえない

まぁ…責任なんて感じる必要なんて露一つないんだけどね
なんだかカッコイイじゃないか




                        ■

時計を見ると、短針が12を回っている。
そろそろ寝なければ、授業中に寝てしまうのだけは避けたい

でも、目は冴えている。瞑っても、学校での、瀬戸先生との会話が頭から離れてくれない




それほどまでに…先生が隠していること






いうならば────社会問題という









規模の大きい────








────────────犯罪?