複雑・ファジー小説
- Re: 【長編】花が咲く【ミステリー】 ( No.12 )
- 日時: 2016/03/21 20:48
- 名前: ゆり ◆Qd6XA/vkyQ (ID: tH3mbyH6)
4話 「心強い味方?」
「バ神崎ぃいいいい!!!」
始業の鐘の音よりも先に、1日は始まったようだ
「お前っ反省文書いてこいって言ったろ、なんだこの文章は!お前まったく反省してないじゃん!」
いや、その原因の9割ほぼあんただよ…先生
昨日はほとんど寝ていない
どうして「伝説の二人」と、学校で流れている「不穏な噂」をまったく別物として考えていたのだろう。
この二つがまったく同じ人物によるものである、そんな可能性だってあるんじゃないか
正直、こっちの方も詳しい情報がある訳ではないし、真実かどうかわかっていないけども。
数年前、全国的に学校が荒れている頃、周りに便乗するよう、ヤバイ事をしでかす奴が増えた
一番有名なのは、情報窃盗野郎だ。数年前、中学部の生徒がデータを盗み出す、という前代未聞な事件が起きた。やった本人は、多分いたずら目的だったのだろうけど、手口が卑劣な為か未だに噂として受け継がれている。
その頃の中学校はセキュリティがガバガバで、しかも教師たちまでもが不良の悪行を見て見ぬ振りという最悪な環境だった。
もちろん、この事件とは限らない
けど、もし伝説の二人が、こういった犯罪に関わっていたとしたら?実は教師側も知っていたのなら?伝説として上書きしてしまったのならば?
────────考えすぎだろうか
「神崎…お前聞いてんのか」
あ、そうだ。今お説教中だった
目の前でガミガミくどくどと同じことを繰り返している瀬戸先生を見返す。でもな、この人は何も教えてくれなさそうだ
事件のことを聞くのはどうだろう
いや、万が一俺の予想が当たっていたとして、今後の調査に影響が出るのも嫌だ
ここは、ひとまず唯と睦月くらいに話しておくか
それから、聞き込み調査を始めよう。
「…昨日も言ったが、余計なことをするんじゃないぞ。学生は学業に専念してだな」
「あ、はい、分かりました。反省文は明日絶対に書いてきますので。あの、先生そろそろ授業始まっちゃいますよ」
「ほんとだ。まったく何が悲しくて朝から不良生徒の世話してなきゃいけないんだ」
ここまでくると鬱陶しいけど、顔に出さず、なんとかやり過ごした
- Re: 【長編】花が咲く【ミステリー】 ( No.13 )
- 日時: 2016/05/03 22:29
- 名前: ゆり ◆Qd6XA/vkyQ (ID: mpfOgk14)
- 参照: 4話続き
12月に入ってから、睦月がひどく疲れた顔をすることが多くなった。
テスト前はいつも目に大きな隈を抱えていたが、今は大きな闇を間違えて背負ってしまったような顔をしている
生徒会でトラブルでもあったのだろうか
そもそも、1年生で生徒会長をやっている睦月の精神はどうなのか
立候補するのに、年齢制限はいらないが、大抵は2年生という暗黙のルールが存在する。
中学の頃は、部活に力を入れていたと唯が言っていた。だから、彼が会長に立候補したのには、誰もが驚いたらしい
まぁ、それでも先生からの信頼度、中学の時から成績は上位、加えてあの美貌。当選したのは当然の定めだったのかもしれない
以下、副会長、書記、会計。
全てが2年生の中、小さな組織の王者として君臨する1年生
睦月の選んだ道だから、俺が脇道からああだこうだ言えるわけないけどね
そんな睦月に、能天気な俺が(真面目なつもりだけどね)こんな事を話すのはいかがなものか
そう思い、睦月に話すのは止め、唯だけに話したつもりだったが…
「唯から話は聞いた」
まさかの放課後、睦月から直々お言葉をいただく事になるとは
ほんの少し唯を睨むが、知らん顔をされた
「いや、ほんと、伝説の二人と犯罪が絡んでるってただの俺の妄想だからさ…!まだ全然実証もないし、適当に思いついただけだから……」
「お、俺にも手助けさせてくれないか?」
え?
手助けって…調査の?
「康の着眼点は面白いと思う。俺もその噂は散々聞いてきたけど、今まで気にもとめたことはなかった。ただのバカな生徒が起こした犯罪だと思っていたから。
予想外だった
最近疲れているみたいだから、負担をかけないようにしたが…やっぱり根はこういうバカみたいな事が好きなのかな。
「でも…一つ疑問が。どうして分離したんだろうな?」
「というと?」
「伝説の二人、って名称だけが一人歩きしてる。こんなに噂として残るくらいなら、その二人が具体的に何をしてしまったのか、それらの犯罪をしでかして、話がオーバーに伝わって今に至る。とかそういうのがあってもいいだろ?なのに、そんな話は聞いたことない。これはどういう意味なのかと思って」
それは、確かに俺も考えたが…明確な答えは出せなかった
「…だからさ、俺、調べてみるよ。最初はくだらないって思ってたけど、康頑張ってるし。少し気になってきたし」
睦月はいっつもクールで冷静だ。
でも、本当はノリが良くて、たまに見せる奴の優しさにやられてしまう。
こういうとき、やっぱこいつが女子にモテるのは仕方ないのかなぁと思ってしまう。
いつもの冷酷オーラを醸し出してるときは、将来本当に好きになった子に振られてしまえ、って思ってるけどね
「睦月がいれば安心だ、ね、康?」
「あぁ。正直俺と唯だけじゃ絶対に無理だと思ってた」
「気にするなよ。大したことなんてわからないと思うけど。瀬戸センは無理だと思うから、別の先生に聞いてみる」
今朝は普通に接してたけど、やっぱり先生だって俺がなんども昔の事件を掘り返そうとしているのは苦痛だろう。ましてや教え子の失態…いや、これはまだ決まったことじゃない。決めつけるのはよくないな
「あ、でも悪い。俺今日は生徒会に行かなきゃいけないんだ。唯と睦月だけで聞き込みは…無理だろ」
失礼な
「いやいや、舐めんなよ?確かに唯は半人力だし俺もこういうの苦手だけど!」
「ちょとまてコラ」
「そうじゃなくて。瀬戸センに見つかったらまた怒られるだろって意味 」
睦月が慌てたように付け足す
見つからないようにするよ、と思ったけど。確かに色々面倒そうだ。ここは睦月の言う通りにしよう
「んじゃあ俺と唯は帰るわ」
「わかった。そういえば生徒会室には古い資料もあるから。今度そこ見てもいいよ。役に立つかはわからないけど」
「いやいや、十分だよ。ありがとう」
生徒会へ向かう睦月の背中は、いつもに増してカッコイイ
その背中を、俺は追えているのだろうか
…そんなことは、どうでもいっか