複雑・ファジー小説

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.1 )
日時: 2016/03/21 17:17
名前: 波坂@携帯 (ID: DJvXcT4Z)

どうも。
俺の名前は伏見茨ふしみいばら。不老不死の怪物だ。
ん?ああ、確かに急にそんなことを言われても意味不明だな。まあ、今の俺の状態を見ればわかると思うけどな。
だって俺の腹ーーーーおもいっきりかっ裂かれてるからな。




「ああもうひでぇ奴だな」

そんなことを呟きつつ俺は天を仰ぐ。降り注ぐ日の光りと俺の容姿だけはどの時代も変わりやしない。勿論服装は時代に合わせた物を着ている。
俺が今でも心底行きたいと思っている天を仰いだ理由。それは俺のダイナミックに裂かれて内蔵が心底吐き気のするチラリズムを醸し出している腹部だ。少なくともいきなり腹を刃渡り五十センチもあるやつで裂く奴なんざいつの時代にも……あー。いたわ。あいつら三倍くらいの刃渡りの刃物振り回してたわ。確か……八百年前位か?自分の歳すらうっすらとしか覚えてない俺にそこまでの記憶力を求めるのもおかしいことだな。
うわ。服が血まみれ血濡れで赤いデザインになってやがる。
別にいいけどこれ周りに見られたらまずいよな。つーか病院に行くのが一番危ない。最近の病院は俺の事分かっちまうし……。仕方ない、川に飛び込むか。



あーあ。腹は治ったけど服がもうダメだな。ダメージファッションじゃ押し通せない位に豪快に破れてやがる。
それに川の水で服が肌に吸い付いて気持ち悪い。不老不死は痛みに強いけどこういうのには弱いんだよな。なめくじとか塩かけるだけじゃ気が済まないね。
さてと……取りあえず家に帰ってきた訳だが……あ、そろそろこの時代の俺の戸籍は八十歳になるからいい加減死んだフリして戸籍消さねぇと。
取りあえずありきたりな安アパートの小部屋に帰り着いた俺は風呂に浸かる。あー。いい湯いい湯。
俺は今日傷があった部位を見るが綺麗さっぱり跡形もなく治っていた。

「今日も……死ねなかったな」

おっとついつい口癖が出てしまった。
でもな。それも仕方ない事だぞ?不老不死はつまらない。みんなもやめとけよ。魔人のランプ拾ったら不老不死じゃなくて彼女欲しいとか言った方がいいぞ。
親も兄弟も……ええと千年ちょい前に先立った。その子供も孫も既に逝ってしまったし、その子供や孫もいなくなった。
愛した女性も数百年前に逝き、子供も孫も先立ち、その子供が事故に遭い俺の子供は根絶やしになった。
その間辛いことは沢山あったし、死にたくなった事もあった。いや、今も死にたいと思っている自分がいる。
自殺なら既に試したさ。
首吊りは息苦しくなって終わったし、飛び降りは足が粉々になった。切腹は痛い割にすぐに治った。最近では睡眠薬の過剰摂取とか青酸カリ飲んだりとか王水とか飲んだが何も起こらなかったし、電車にミンチにされても一時間後位には体が全部治ったし、腕を切っても勝手にくっついた。焼身は焼ける速度を上回った再生が起こった。
全てが全て、それなりに苦しかったし辛かった。が、どれも俺を殺す事はできなかった。
俺は憎い。自分をこんなのにした過去の自分が憎い。


おっと話が暗くなったな。
通り魔については大丈夫だろう。だって俺は死なない死ねない殺されないの三拍子揃った不死身なのだから。