複雑・ファジー小説

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.26 )
日時: 2016/08/24 17:20
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

朝ごはん、
妖怪二人は、
俺を喰う。

伏見茨。



と、いう訳で現在進行形で、両手に花と言えなくもない状態の伏見茨だ。
右を見てみよう。艶やかな煌めく金髪を伸ばしたソプラは、俺の右手が干からびる程に吸っている。血は再生で供給されるけど、吸血がめちゃくちゃ痛い。ソプラ曰く、俺には吸血鬼の魅了チャームだの催眠だのが再生で全く効かないから、吸血しているときの麻酔効果も無いらしい。ソプラ、痛いってわかってんなら自重しようか。
左を見てみよう。癖だらけの所々跳ねた黒髪を暫くの間は放置していたであろう、その歳にしては異常な長髪のヤマンバちゃんが、絶賛俺の左腕を喰っている。絶賛するな。正直すげえ痛い。泣きたい。もしかしたらもう泣いてるかもしれない。素直に痛いから止めろと言ってやりたい。
しかし、ソプラはまだしもヤマンバちゃんは、人を喰わないと生きていけないからなぁ……。
……ヤマンバちゃんめぇ……何が「喰わせなかったら、もし警察に捕まったとき茨が関係してるって言ってやるからな」だ。お蔭様で俺は晴れてお前達二人の食料だよ。ソプラなんか交渉(物理)をかましてきやがった。解せぬ。

さぁ皆!この金髪美女と黒髪ロリの両手に花状態になりたい奴はいるか!?是非変わってやるぜぇ!命の保証は本当の意味で無いけどな。







「…………」

絶賛俺は一人で死んでいる。死ねないけど。
理由?そこの口に血を付けた腐れ吸血鬼と腐れ山姥と俺の周りの血の海を見れば一目瞭然だろ?
結局これでも死ねないんだよなぁ…………はぁ。ちょっと期待したぞ。

「大丈夫か?おい、茨?」

ヤマンバちゃんが声をかけてくれたがスルー。ちょっと俺は今激痛で頭が混乱中なんだ。

「……返事が無い。ただの茨のようだ」

「ソプラぁ!?ただの茨ってなんだよ!?」

てかお前ドラ〇エ持ってたのかよっ!

「全く、勇者に桧製の棒しか持たせないなんて王国は良い度胸してると思わなくて?」

「許してやれよ。きっと王国も破綻寸前なんだよ」

寧ろ俺は何故魔王という強敵に向かって、ひたすら死ね死ね呪文を唱えまくる奴の方が疑問だ。

「ああ、大丈夫だ。まぁ誰のせいかは言わなくてもわかるがな」

俺がそう言うとシュンとした様子で目を伏せるヤマンバちゃん。え?なにその反応?なんかいつものトゲトゲ感が無いんだけど。

「……ご、ごめん」

「貴様ァ!何者だァ!」

こいつ!さては偽物だな?成敗してやる!

「茨。妖気は昨日と変わりなくてよ」

妖怪達の間で知覚できる妖怪レーダー曰く、偽物じゃないらしい。え?ネーミング?何の事かわからないなぁー(棒)。

「お前……ちょっと傷つくぞ……」

頬を膨らませるヤマンバちゃん。
ところで貴様は自業自得という言葉を知っているか?
まあいい。許してやらんことはない。

「いやな……ヤマンバちゃん。急にそんな態度取られたら焦るぞ。
てか一々そんな態度で人喰ってたら人喰い妖怪なんてできねぇだろ」

ヤマンバちゃんは焦った様に喋りだす。どうでもいいけど口に付いてる血、さっさと取ってくれねぇ?

「いや、それは茨だから……って言うかその……。
そ、それよりヤマンバちゃんって言い方止めろよ!」

いや、俺ヤマンバちゃんの本名知らないんだけど……。

「ウィス〇ーとでも呼べば良いのか?」

「……茨。それは流石に酷くてよ」

「ウィ〇パー?何だそいつは」

そうだった……こいつこんな容姿の癖に妖怪時計を知らなかった……不覚。

「じゃあガハ〇さんで」

「そっちは妖怪じゃないわよ」

「誰だよ〇ハラさんって」

ええい!めんどくせぇ奴だ!こうなったらこれでどうだ!

「木ィィィィィィィィィィィ〇ァァァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンンン!」

「……最早妖怪ですら無くてよ」

「……茨、なんでお前は今銃を構えるような動作をしたんだ?」

じ、冗談に決まってんじゃん!そもそも性別が違うだろ俺。馬鹿か。
ヤマンバちゃんは短くため息をついて自分の名前を明かす。

「病場……病場璃子(やまいば/りこ)。それが私の名前だ」