複雑・ファジー小説

Re: ダスティピンク#502 ( No.1 )
日時: 2016/03/27 16:43
名前: ▲ (ID: /dHAoPqW)



#001


「ちょっと、やめなよ」
「ん?」

友人がアイスコーヒーをストローでかき混ぜる私を目で見やった。
煙草をくわえライターを片手に、火をつけようとしていたもう一人の友人も、それで理解したようである。

「あー、いいよ、別に、吸っても」
「はぁ? 都色、前は見るだけですごい嫌そうな顔してたじゃん」

良いなら遠慮なく、と正面に座る友人が煙草に火をつける。その慣れた手つきをぼーっと無意識に見つめていた。
喫煙席に案内されたことに私が文句を言わなかった時点で、考え方が変わっていることに気づいてほしかった。
友人が知っている頃の私、つまり高校時代の私は煙草が大嫌いだった。吸う人間のマナーの良し悪し関係なく、全部全部なにもかも嫌いだった。
自分でもビックリだ。あれだけ嫌いだったのに、今は目の前の友人が吹かす煙に安心さえしている。

「どぉせ、萬田のせいでしょ」
「え、まだあいつと一緒にいるの?」

ギョッとする友人の手首の振動で灰がはらはらと落ちた。
頷くと、二人ともうげぇ、とあからさまな態度をとる。

「まじ? あんな奴とよく一緒に居られるよね」

煙草を吸う友人のとなりに座る友人が吐き捨てる。
そういえばこの二人は彼のことをよく思っていなかった。この二人に限った話ではないか。

「萬田が吸うから他の人もオッケーってこと? なんていうか…ほんと…」
「都色、ヤバイね」

まあちょっと、否定はできないかもしれない。

彼の悪口で盛り上がる二人の会話を受け流しながら、数年前、教室の昼休みとなにも変わらない光景であることに、なんだか笑ってしまうのであった。