複雑・ファジー小説

Re: ダスティピンク#502 ( No.3 )
日時: 2016/04/01 21:23
名前: ▲ (ID: /dHAoPqW)



#003


「これからどお?」

仕事が終わり、会社の出口をくぐったところで声をかけられる。
お酒のお誘い。同僚の男性だ。最近やけに親しく接してくる。
爽やかな笑顔を浮かべる彼はきっと、私に特別な感情を抱いているのだろうが、生憎私は興味がない。
優しいし、仕事ができる、素敵な男性ではあるから、邪険に扱うのも失礼か。

「どうしよう。昨日も呑んだから」
「そうなの? 二日連続はきつい?」

自然な流れで帰宅する私の横に並びついてくる彼。いい気はしないけど、悪い気もしない。
さりげなく体調を気遣ってくれるし。

「うーん。お金がね」
「心配しないで、奢るから」
「うーん」

揺らいでしまう。お金を出してくれるなら損はしないか。アユと、一応千寿にも連絡をしておけば、遅くなっても迷惑はかけない。
嫌なことがあり、お酒で忘れたいというわけでもないけど、理由がなくてもお酒は呑んでいいものか。
悩む私が、そんなに食い下がるなら、と口を開いたとき。

「都色?」
「あ、千寿」

後ろから声をかけられて振り替えると、黒い七分袖のシャツで身を包む千寿の姿。
私と同僚を交互に見たあと、なんとなく察したようである。

「何? 酒? 俺も行っていい? 呑みたい」
「駄目だよ。お酒のみたいなら買ってあげるから、帰ってアユと三人で呑もう」

へ、と同僚から変な声。そりゃあそうだ。お金を理由に呑みにいくのを渋ったのに、彼の登場にあっさり手のひらを返したのだから。

「ごめん。また今度」
「あ、うん。こっちこそ、ごめん」

手を振り、すっかり笑顔になって酒のことしか考えられなくなっている千寿の腕を引いてコンビニに足を向ける。

「都色に会ってよかった。マジで。何買ってもらおうかな」
「アユのもちゃんと選んでよ」
「分かってるってぇ」