複雑・ファジー小説

第2章 「なくさないように」 ( No.29 )
日時: 2016/08/02 02:11
名前: 花月 (ID: ixlh4Enr)

第6話

『ある日、ある病院で、1人の赤ん坊が産まれました。
しかしそれと同時に、その両親は死にました。
赤ん坊は、看護師の手で育てられる事になりました。
数日後、その看護師は死にました。
そして、別の看護師に育てられる事になりました。
その翌日、その看護師も死にました。
今度は、ある医師に育てられる事になりました。
しかしまた、その医師は死にました。
悪霊が取り付いていると考えた別の医師が、霊媒師の元へ行きました。
しかし、除霊を行う前に、霊媒師とその医師は死にました。
その情報を知った人間達は、赤ん坊を「死神の生まれ変わり」と呼び、赤ん坊を殺す事になりました。
しかし、その「死神」の力でしょうか。
斬首しようとした警察も、射殺しようとした自衛隊も、赤ん坊の死刑に賛成した者達も、自分の首を切ったり、自分の口の中で発砲したり、原因不明の死病にかかったり、たくさんの人間が死にました。
やがて赤ん坊は、誰にも見られなくなりました。
そして人間は誰一人、怪死しなくなりました。
赤ん坊は誰もいない、暗い森に捨てられました。
食料も、何も持っていません。
しかし、赤ん坊はいつまで経っても死ぬ事はありませんでした。
やがて赤ん坊は大きくなり、少女になりました。
少女は何も考えず、ただ森の中を彷徨っていました。
森には、動物はいません。
そう、少女を見た瞬間、動物達は骨になってしまったのです。
それでも少女は、何も感じませんでした。
ある日、少女は川を見つけました。
少女が川を覗き込むと、川に自分の顔が映りました。
真っ黒でボロボロなコートを着てて、顔は真っ赤でした。
それも、赤ん坊の時から何回も見た色でした。
少女は自分の顔を触りました。
ゴリゴリしてて、ベトベトしていました。
そう、少女は












もう既に死神になっていたのです』




ヴォア「!!?」

私はガバッと起き上がった。
顔には汗がついていて、なぜか息も荒い。

シエル「ヴォア!!大丈夫!?すっごいうなされてたよ!?」
エトワール「ヴォアさん、具合でも悪いんですか…?」
ヴォア「………」

目の前には、目を見開いて、慌てた様子のシエルとエトワール。
なんだ…夢か……

シエル「あ! ヴォア!!やっぱり具合悪いんでしょ!なんで言わなかったの!?」
ヴォア「え……」

いや…そういうのじゃなくて……

ヴォア「…なんでもない」
エトワール「なんでもない訳ないじゃないですか!」
シエル「そうだよ!だってヴォア泣いてるもん!」
ヴォア「…?」

気付いた時には、もう私の顔は汗と涙でぐしょぐしょだった。

シエル「…怖い夢でも、見たの?」
ヴォア「…!」

すぐに見抜かれた。こんなの忘れたかったのに。
私は頷く。

エトワール「えっ…」
シエル「…どんな夢だったの…?」
ヴォア「…ずっと暗かった…」

あるのは薄暗い月明かりだけだった。
ただその光を頼りに進んでいた。
そして、声が聞こえてた。ずっと。
ある物語を読んでいるような声だった。
進んでいたら、川が見えた。
川を覗いてみたら、黒いボロボロのコートを着た、血を塗りだくった骸骨が映った。
それに、あの声。
恐らく…






ヴォア「私の…声…」

そうか。
これは「怖い」んだ。
震えながらうずくまると、誰かが背中を撫でてくれた。

シエル「大丈夫。僕も、エトワールもいるから。ね!」
エトワール「ヴォアさん、大丈夫…ですよ。ぼくたちはヴォアさんを捨てたりなんかしません」
ヴォア「…………」

少し落ち着いた。
背中を撫でられただけで、こんなに落ち着くなんて。

ヴォア「…もう落ち着いたからいい」
シエル「そっか。よかった!」

と、いつものように無邪気に笑う。本当に能天気なんだな。シエルって。


シエル「よし! じゃあ、着替えよっか!じゃあ、ヴォア先に着替えて!僕たち廊下出るから!」
ヴォア「え…」
エトワール「着替え終わったら呼んでいただけますか?」
ヴォア「……(頷く)」
シエル「よし!じゃあ行こう!」
ヴォア「……待って」
シエル&エトワール「「?」」

はっきり言わなきゃ。
なぜか、恥ずかしいけど…

言わなきゃ。

ヴォア「その…あり…がと…」


2人は少し驚いた表情だった。
でもすぐに笑顔に戻って

シエル「どういたしまして! あはは!」
エトワール「礼にも及びませんよ。ヴォアさん」

返してくれた。
少しだけ、なんかよくわからない感情が動いた。
なんなのかわからない。でも、明らかに、
「怖い」んじゃない。
私はそう確信した。


そして、本番、
ボランティア専用のスカーフみたいな布を巻いて、仕事が始まった。

マイカ「ほな、さっき言った仕事の説明、忘れんといてな!」
シエル「はーい!」
エトワール「先輩、もうすぐ始まるんですから落ち着いてくださいよ…」
マイカ「ええねん、元気な子程、お客さんは喜んでくれるんや」
シエル「へへーん」
エトワール「でも、後輩として、その精神年齢は恥ずかしいです…」
シエル「ガビーン!」
マイカ「あはははは! んで、えっと…ヴォアちゃんやな!料理配達の仕事、頑張ってな!」
ヴォア「……わかった」
マイカ「んー、ちょいと元気足りんけど、まぁええか!」
ヴォア(本当になんなんだこの人…)

元気ってそこまで必要なの?と、私は思った。

〜第6話 END〜
はい!まさかのヴォアの怖い夢!
リアルで見たらガチで怖そうなんだけどwwwやっべぇwww
次回予告には書かなかった「ドッキリ」として流しといて下さい!
ガチドッキリ大成功〜!
次から本気出しますwもうめっちゃ引きずってるもんね
〜次回予告!〜
前回のコピーで。(サボり)


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