複雑・ファジー小説
- 第2章 「なくさないように」 ( No.31 )
- 日時: 2016/06/18 23:10
- 名前: 花月 (ID: gb7KZDbf)
最終話
戦わなきゃいけない。
僕たちはそのために異世界へ来てるんだ。
でも、怖い。
あんな大きなマモノなんて、あの頃以来…
エトワール「…先輩?」
ヴォア「…?」
シエル「…ん? あ、いや!なんでもない!それより行こう!大将さんのお出ましだよ!!」
でも…戦うよ。この世界の為に。
エトワール「…そう、ですね!行きましょう、ヴォアさんも!」
ヴォア「…言われなくてもわかってる」
シエル「よし!じゃあささっと作戦会議だよ!」
誰かがやらなくちゃ、絶対何も変わらない。
あの頃みたいに、怖がってちゃダメなんだ。
移動中に作戦会議は行われた。
第1の目的は、「マモノをあまり移動させない様に戦う」。
3人でマモノを囲む様にして攻撃すれば、周りにも被害が及ばず、横幅も広くなるから自分たちもやりやすいと思ったからだ。
気づけばもうさっきの受付の場所。
僕は2人に合図をかけ、門を開け、猛ダッシュでマモノを囲んだ。
そしてヴォアの魔法の「テレパシー」で作戦の確認をする。
シエル「よし!ここまでは順調だね!」
エトワール「予想以上に…大きいです…」
ヴォア「倒せばいい」
シエル「一同、襲撃開始!!」
僕はマシンガンで頭を狙い、ヴォアは氷魔法で腹を狙い、エトワールは短剣で足を狙う。
運が良かったのか、周りにマモノはいなかった。
ボス「…………」
しかし、ボスマモノは一切喋らない。
すると!
ドゴオオオオォォォォォォォ!!!!!!
ボスマモノがいきなり、地雷を踏んだ。
それもとてつもない勢いで、僕たちも砂吹雪で前が見えなくなってしまった。
下を見ると、地面に大きなヒビが入っていた。
まずい。このままじゃ、他の建物にまで被害が広がっちゃう…!
僕はテレパシーで、ヴォアに話しかける。
シエル「ヴォア!攻撃できる!?今頼れるのは君しかいないんだよ!!」
ヴォア「…できるわけないじゃん…!前が…見え……あぁっ!!」
同じく砂吹雪に苦戦していたヴォアが、突然悲鳴を上げた。
そこでテレパシーは切れてしまった。
シエル「ヴォア!?ヴォア!!?どうしたの!?ヴォア!!」
怖い。
どうすればいいんだろう。
エトワール…エトワールは!?
でも、テレパシーも切れちゃってるし、砂吹雪は勢いを増している。とても様子を見に行ける感じじゃない…
シエル「うぅ…うあっ!!」
突然、目の前に物が飛んできて、僕の頭に当たった。僕はその衝動でふっ飛ばされた。痛い。視界が赤い。
意識がもうろうとして来た。結局…僕は……
ザシュ ザシュ!
シエル「…!?」
今、何が…?
いつの間にか、砂吹雪は収まっていた。
「はれ?シエルはん、どないしてここにおるん?」
シエル「え…?」
背後から声がした。
後ろを振り返ると、マイカがいた。
それもいつもと違う、立派な弓と、矢がパンパンに入った細長いカゴを背負っている、1人の戦士だった。
シエル「マイカ…?どうして!?」
マイカ「話は後や!今はこいつをボッコボコのギッタギタにするで〜!!」
シエル「あ、うん!」
まだ大丈夫。まだ勝てる…!
僕は自信を持ち直し、マシンガンを構えた。
ヴォアとエトワールはどこにいるのかわからない。だけど…
シエル「僕が…2人を守る!!」
マイカ「うちも頑張るで〜!!」
2人同時にボスマモノの頭を狙う。
もう全力を尽くすまでだ…!
シエル「うおぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
弾はもう残り少ないけど、やるしかもう方法はない。
マイカ「シエルはん!下がってや!!」
シエル「え?」
後ろを振り返ると、マイカが何本もの矢を打とうとしていた。
マイカ「うちが…仕上げしたるで!」
シエル「…うん、わかった!」
後はマイカに任せ、僕は後ろに下がる。
マイカはすごく力を込めている。
それにとても強いオーラを放っている。
そして、弦を放す。
マイカ「これで…トドメ…やっ!!!」
矢は勢いよく飛び、風を切って見事、マモノの頭部、目、腹に命中した。
ボス「………………………!!!!!!」
ボスマモノは結局何も喋らなかったけど、なんとか倒す事が出来た。
だけど…
バタンッ
マイカ「あっ!!シエルはん!?」
ちょっと疲れちゃった…
〜〜
「…!…い!…先輩!」
シエル「……?」
エトワール「シエル先輩!!」
シエル「うわあぁぁぁビックリしたぁ!!!」
マイカ「わぁえがったぁ〜目ぇ覚めたわぁ〜」
ヴォア「…………はぁ」
目を覚ますと、今にも泣き出しそうなエトワール、やれやれとため息をつくヴォア、本当に安心したような優しい笑顔のマイカがいた。
ここは、旅館だった。
エトワール「シエル先輩ー!!!うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
ヴォア「遅い……その…待たせ過ぎだよ…」
エトワールは大泣きして、ヴォアは…心配したと言いたげな態度だった。
仕方ないか。まだ自分の感情をわかってないもんね。
マイカ「シエルはん、おかえり」
シエル「えへへ、ただいま!」
頭には、包帯が巻かれていた。
やはり砂吹雪で飛んできた物で頭を打ったらしい。
ヴォアは、砂吹雪で飛ばされ、建物近くの木箱に当たり、意識を失いかけたらしい。
エトワールは、ボスマモノの1番近くにいた為、地雷を踏んだ時に大きくふっ飛ばされ、建物の屋根にいたらしい。
僕たちはそれぞれ怪我をしたけど、建物は無事だったらしい。
僕たちは怪我の治療の為に、しばらく旅館に泊まっていた。
やがて怪我も治り、いよいよ再発の前日、荷物整理をしていた。
エトワール「シエル先輩、お怪我の方はもう大丈夫ですか?」
シエル「うん、もうスッキリだよ!始めはずっと頭がグワングワンしてたけどね〜 ヴォアは?怪我もう治った?」
ヴォア「…うん」
シエル「そっかー!よかったー!でもエトワールは擦り傷だけで済んでよかったよ。衝撃が弱かったんだね」
エトワール「そうかもしれませんね。ぼく、荷物整理終わりました。何か手伝える事ありますか?」
シエル「おぉ早いねー!じゃあ、ここの荷物ここのポケットに入れて。無理矢理でもいいから」
エトワール「む、無理矢理って… わかりました」
そうして、再発当日…
シエル「エトワールー!ここのポケットギュウギュウで怖いよー!」
エトワール「先輩が無理矢理入れてもいいって言ったじゃないですか!」
シエル「あれ、そうだったっけ?」
エトワール「もう…こういう所だけ抜けてちゃダメですよ?」
シエル「はーい、ごめんなさーい」
ヴォア(立場が逆転した…)
「ガキ、あっぱれだな!」
「助かったよ。あんたらは英雄だ!」
「またいつでも来てちょうだいね」
シエル「えへへ、みなさん、お世話になりました。本当にありがとうございました!」
マイカ「あ〜!待ってや〜!」
エトワール「ん?マイカさん?」
みんなに別れの挨拶をしている最中に、マイカが慌てた様子で飛んで来た。
シエル「マイカ?どうしたの?」
マイカ「あのな、うち、女将辞めるんねん!」
全員「えぇ!?」
マイカ「そんでな、3人共、うちも連れてってや!」
シエル「えぇ!!?」
エトワール「それは…どういう…」
マイカ「あのな、うち、あの時わかったんや。今自分が1番役に立てる仕事は、女将やなくて弓使いやって。あんなに目立てたの、生まれて初めてやねん! せやからお願い。うちも連れてってや!!」
シエル「…うん!大歓迎だよ!これでもっと強くなれるし、仲間も増えるね!」
エトワール「そうですね。ぼくも賛成です。」
ヴォア「…別にいいけど」
マイカ「…!!ほんま!?ほんまにええの!?うわぁおおきに!!」
「小瀬野!」
奥から声がした。
見ると、とても綺麗な服を着た女の人が来た。
マイカ「あ!大女将様!今回は、ほんまにかんにん!わがまま言うてしもうて…」
大女将「…忘れ物どす」
マイカ「え?」
大女将「これ、あんさんの為に作ったんどす。大事に持っとき」
そう言って大女将さんがマイカに渡したのは、小さくて綺麗な貝がらの首飾りだった。
マイカ「お、大女将様、これは…」
大女将「お守りどす。丈夫な貝がらやから、すぐには壊れんと思いますで。せいぜい、死なへん様にな」
マイカ「は…はいっ!!お、おおきに!!」
大女将「ほれ、ちとじっとしてや。つけたるで」
マイカ「え…」
そう言って、大女将さんがマイカに、お守りをつける。
まるで、親子の様な雰囲気だった。
マイカ「わぁ…!ほんまに、綺麗なお守りや…!ほんまおおきに!大女将様!!」
大女将「ほれ、早よ行きな。英雄はんを待たせとるんどすえ。それに、これからあんさんも英雄はんになるんやから」
マイカ「はいっ!!」
マイカはすごく喜んでいる。
シエル「…よしっ 行こー!!」
エトワール&マイカ「おー!!」
うちは最後に、旅館でお世話になったみんなに、手を振った。
みんなが振り返してくれる中、
大女将も、笑顔で手を振り返してくれた。
うちは、この事を忘れない。
このお守りも、絶対、
なくさないように、しなくっちゃ。
〜最終話 END〜
第2章完結ー!!!イェーーーーイ!!!!!
どうしても最終話は長くなっちゃいますねーサーセンm(_ _)m
さて、次の世界は、まさかの戦争だらけ!?
という事だけは思いついております。
疲れた。寝よう。
〜次回予告!〜
明神村に平和が戻り、次の世界へ。
しかし、その世界は、あまりにも恐ろしかった!?
そこで出会う、黒尽くめの少年と見た目からして陽気な少年。
次回もお楽しみに!
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