複雑・ファジー小説
- Nympho Sailor[ Ⅰ ] ( No.10 )
- 日時: 2016/07/04 21:15
- 名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
- 参照: セーラー少女シリーズ。
零れる吐息。小さな喘ぎ声。
甘い時間が、私の脳内を甘く痺れさせていく。
朝、私はいつも違うベッドの上で目覚める。
今日は白。清潔感のある、綺麗なシーツの白。
でも、その白は既に汚されてしまった。
隣でぐっすりと眠る若い男をちらりと見てから、私はベッドからのそりと抜け出した。
音を立てないようにゆっくりと下着を身につけていく。
滑らかな肌に、少し硬い膨らみ。この発達途上の身体は、私がまだ少女である証。
でも、その身体はとっくに汚されてしまった。
私の、こころの弱さのせいで。
ふぅ、と昨晩とはまた違った吐息を吐き、床に無造作に置かれたセーラー服を手に取る。
黒く、そして赤いセーラー服。
これを着ている間は私はただの少女。
ええ、きっとそうなの。
素早く袖を通したため、セーラー服は少し乱れてしまった。
少し気になったので、近くにあった男の所有物である、全身鏡をそっと窺い見る。そこにはただの淫乱な女がいた。
開かれた胸元、白い肌、陶酔した表情。
とてもただの少女には見えなかった。
なら、私はやっぱりただの化物か。
リュックに荷物を詰め込んで、家を出る。
いつも、違う男の家を朝早くにセーラー服を着て出ると、私は希望に向かって歩いているような気がした。夢じゃなくて、このつまらなさから抜け出すことのできるような希望を。
随分と前に、ちょっとした私のこころの弱さで肌を重ね合わせて、私は悦びを覚えた。
混じる2人の汗と吐息。2人だけの世界。
こころの無い1度きりの関係は、私のこころの穴を一瞬でも埋めてくれるような気がした。
淋しがりやで強がり。私の性格は、そんなものだ。いつも表情をつくらず、誰に対しても笑顔を見せないので、友人はできなかった。
だって疲れるじゃない。
周りに合わせて良い顔したり、相手の表情から雰囲気を読み取ったり。
それに適応できない人間だっているのよ。
高校に入って、私の少しばかり整った外見にケチをつけていじめてくる子も出てきた。
下駄箱を開ければ靴がない。お弁当がお昼時に無くなっている。教科書がずたずたに切り裂かれている。体操服はいつもトイレの水に。
典型的で、つまらないいじめ。本当に滑稽だ。
私のこころはそんなくらいじゃあ傷つかないわ。
だけれども、学校へと歩く足は、ふらふらと覚束無い。
そして、きつく抱きしめられたせいか、まだ身体のあちこちが痛い。
でも、名前も知らない人だったけれど、彼は私に、一瞬だけ救いをもたらした。
孤独。誰にも交われず、誰とも違う、私。
人間はいつだって本当は1人で、自分勝手だ。
そうやって自分勝手に生きてきた私の胸には、ぽっかりと大きな穴があいている。
それはきっと、病院に行ってもどこに行っても埋まらない。けれど。
喘いで喘いで。
私はやっと、自由になれる。
触れた肌が。重ね合わせた唇が。私のこの孤独を焦がす。
けれど。すべてが終わったあとに、それはすぐに戻ってくる。
だからいつまでも、いつまでも、私は続けるの。
…to be continued…
- Nympho Sailor[ Ⅱ ] ( No.11 )
- 日時: 2016/07/08 21:07
- 名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
- 参照: まだ未熟なセーラー少女たちは、大人と子供の間をさ迷い続けて
__冷たさは。
いくら強く抱きしめられたって、接吻を交わしたって、深い夜に堕ちていったって。
私は所詮、ただの少女。
淫乱な女にも、化物にもなりきれない、哀れなセーラー少女。
学校帰りのある日、私は道端で黒猫の死骸を見つけた。
黒猫は、まるでただ眠っているだけのように見えた。しかし、ゆっくりその身体をつついてみると、反応は無く、その身体は冷たかった。
ああ、そうか。私は1人、空を仰ぐ。
死んだら、みんな冷たい化物になるのか。
ただの少年も、ただの男も、ただの女も、そしてただの少女も。
だとしたら、死んだら私のこの淋しさも、身体とともに冷えて凍ってしまうのだろうか。
その日は、思考がよく回らなかった。どこかネジが外れたかのように、私はどこか夢見心地で夜の街に出た。
そうして、いつものように欲求不満な男どもを誘惑する。いや、商売のようなものだから、勧誘する、と言った方がいいかもしれない。
しばらくそれを続けると、ようやく1人のサラリーマン風の男を捕まえることに成功した。そして、そのまま男の家までついていった。
そう。いつものように、シャワーを浴びて、彼と1夜を過ごす。それは彼のためでもあり、私のためでもある。そう、そのはずだった。
私は、男の希望でセーラー服を着直した。
荒々しくベッドに押し倒され、男の顔が近づいていく。私はぎゅっと目を閉じた。
押し付けられた唇は、ひどく熱くて。
私はなぜか、抵抗してしまった。それでも男は私を求めてくる。
なんだろう。とても、不快だった。
気づけば私は渾身の力で、男を突き飛ばしていた。男は頭を打ったのか、後頭部を抑えて呻いた。
滴り落ちる汗が目に入り、染みる。
しかし次の瞬間、私は部屋を飛び出し、身一つで男の家を出た。
近くにあった池の近くで、私はやっと立ち止まった。
はあはあ、と荒い息が、藍色の空に溶け、昼よりも冷えた夜の空気が、私の熱を奪っていく。
しかし、男が触れた部分は、まだ熱を帯びたままだった。
熱が気持ち悪い。肌を重ね合わせた部分が熱い。嫌だ。どうして……
まとまらない思考に、思わずふらふらと後ずさりをすると、右足にかさり、と何かが当たった。
はた、と立ち止まって足元を見ると、そこには烏の死骸があった。
どくん、と心臓が音をたてる。
触れた部分は、ひんやりとしていて、私から熱を奪っていく。
死んだら……私も冷たくなる?
濁った思考が、頭を埋め尽くした。
熱を求めれば求めるほど、後からやってくる冷たさに、孤独な私は怯えなければならない。
学校でも1人、家でも1人、この世界にも1人。
そして今は、熱が怖い。
それならいっそ、ずっと冷たい方がいいんじゃないか。
そうすれば、こんな淋しさに苦しまなくても……
気づけば、私は池へと走り出していた。
たどり着いた先で、ごつごつとした岩に掴まって、勢いをつけて飛び込む。
濡れるセーラー服。奪われる熱。
ああ、冷たい。
私の孤独はしだいに冷たくなり、氷のようにかたく凍って、次の瞬間、粉々になって水色の彼方へと消え去っていった。
…end…
※今回のは特にわかりにくくてすいません汗 また解説させてもらいます。