複雑・ファジー小説

うた ( No.17 )
日時: 2016/07/26 15:37
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: 短い詩をつくってみました。

 
[恋のうた]

 春のうたは、遠く、はるかとおく。
 私に届くことは無い。

 恋のうたは、甘く、むせ返るほどあまく。
 君に届くことは無い。

 人のうたは、美しく、澄み渡るほどうつくしく。
 いつも誰かに響く。

 だから、いつかこの想いが君に届くと信じて。





[赤いうた]

 赤い林檎は。
 口にすれば、まるで心臓のよう。

 赤い薔薇は。
 花開けば、まるで唇のよう。

 赤い糸は。
 束ねれば、まるで髪のよう。

 赤いワインは。
 口にすれば、まるで血液のよう。

 赤いドレスは。
 身にまとえば、まるで魔女のよう。

 赤い女は。
 何もかもを赤く染めて、消えていった。




[夏飴]

 舌の上でころころと転がる飴。

 サイダーの味が口いっぱいに広がって、夏が溶けて解けた。

 あっ、と気づいたときにはもう遅く、飴はしゅわっと音をたてて消える。

 暑い熱い夏。どこか甘酸っぱいこの味は、夏限定。

 過ぎ去る夏と彼に、私はお別れをした。