複雑・ファジー小説

Summer Sailor Girls ( No.21 )
日時: 2016/09/06 20:05
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: ont4q9aA)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=255.jpg

 
「なぁなぁ」
「なあに、夏」
「いや、めっちゃどうでもええことなんやけどさ、秋」

 夏のプールサイドに、腰掛ける少女が2人。そして青い空、爽やかな風が1陣。夏、と呼ばれたショートカットの少女が口を開く。

「私たち、これからどうなるんやろうね」
「いきなりやな」

 秋、と呼ばれたミディアムヘアの少女がそれに笑いながら応える。

「てきとーに勉強して、てきとーに大学行って、てきとーに就職するんちゃう?」
「そんでてきとーに結婚して、てきとーに子供産んで、てきとーに老後過ごして、てきとーに死ぬんやろ。すんごいてきとーな人生やん」
「それもそうだ」
「わははは」

 夏のプールサイドに、乾いた笑い声が2つ響いた。
 しばらく笑い続けて、また風が1陣通り過ぎると、夏、と呼ばれたショートカットの少女が呟く。

「なぁなぁ」
「なあに、夏」
「いや、めっちゃどうでもええことなんやけどさ、秋」
「今度はなにさ」
「大きくなったら何になりたい?」

 グラウンドから、部活動の掛け声が聴こえてくる。夏なのに元気だな、と思いつつ、秋、と呼ばれたミディアムヘアの少女は答えた。

「ウルトラマン」
「なんでやねん」
「前にとある小説で、そう聞かれたらこう答えろって書いてあった」
「あ、その小説知ってるかも。って全然違うやんか」

 2人の少女は、足をばたばたとさせて笑った。透き通ったプールの水がばしゃばしゃと音をたてて、青い空に飛び跳ねる。

「じゃあ、夏はどうなん?」
「え、うち?」

 夏、と呼ばれたショートカットの少女は、プールサイドに手をついて少し考える仕草をすると、静かに答えた。

「美人」
「ほんまそれな」

 2人の少女はふふふ、と笑い合った。

「あ、もうお昼。部室でお弁当食べよーよ」
「ええよ。……午前の部活サボったから、先生にこっぴどく怒られるんやろうな」
「ま、それもええやん」
「そうやね。てきとーに乗り切りましょ」
「そうそう。てきとーに、てきとーに」

「「さ、行こ!」」

 2人の少女はスカートを翻し、裸足で走り出す。



 夏のプールサイドに、青い空と爽やかな風が1陣。
 向こうで2人のセーラー少女が、楽しそうに飛び跳ねた。