複雑・ファジー小説
- 星屑観覧車 ( No.24 )
- 日時: 2016/11/17 11:50
- 名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: 3JZ8Axjf)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=234.jpg
あの日、それはまるで秘め事のように。
君との大切な秘密は、もう崩れ去ってしまった。
『ねえ、知ってる? 星屑観覧車は夢を運んでくれるんだよ』
毎晩毎晩、彼はその話ばかりをした。星屑だの、流れ星だの、観覧車だの。彼は生まれてこの方、遊園地というものに行ったことが無かったらしい。私は1度だけ行ったことがあったけど、そのときは特になにも思わなかった。だけど、嬉嬉として遊園地について語る彼の姿を見ているだけで、頬がほころんだ。
夜に交わされる、甘やかな睦言。
だからかな。あの日、私は夢を見た。
そこは、夜の遊園地。動物の着ぐるみがやけにリアルで、星がとても綺麗だったことを覚えている。
そして、なぜか少しぼやけている人混みの中に、彼がいた。
必死に掻き分けて近づくと、彼はいつもの夜のようにきらきらと目を輝かせて、
『やっぱりすごいや』
と、呟いた。
『僕はね、ずっと遊園地に来てみたいと思ってたんだ』
『どうして?』
『だって、ここは夢の国みたいじゃないか!』
骨のように細い身体で、よくわからないままに、彼と私ははしゃいだ。私の身体を気遣ってあまり乗り物に乗せてくれなかった両親と遊園地に来たときよりも、よっぽど楽しかった。
なにしろ、身体が重くないのだ。いつもは少し動くだけで疲れてしまうのに、このときだけは違った。
人生ではじめてジェットコースターに乗り、メリーゴーランドに乗った。どこも苦しいところは無かった。
それもその筈。だってここは____
『あ』
突然、彼が立ち止まる。すっ、と表情が消えて、ふぅ、とため息をついた。
『……ねえ、**。最後にあれに乗らない?』
『え?』
『星屑観覧車に』
『うん、いいけど、最後って……』
『さあ、行こう!』
にっこりと笑う彼に腕を掴まれて、そのまま観覧車まで走る。というか、さっきから観覧車は見当たらない。第一、彼の言うようなきらきらと光る星屑の観覧車なんか……そんなのあるわけ……
『!?』
気づけば、私は観覧車に乗っていた。偽物でない証拠に、ゆっくりとした揺れを感じる。
そして、私の目の前にはにこにこと笑顔を浮かべている彼がいた。その彼の周りには、星屑がきらきらと瞬いている。
『本当に、星屑観覧車はあったんだよ』
彼はきらきらと虹色に輝く星屑を見ながら、そう呟く。
『ここは、僕がずっと夢で見ていた星屑観覧車とおんなじだ。ただ、少し違うのは、君がいること』
彼の目が瞬くと共に、星屑たちも瞬く。彼の口が動くと共に、星屑たちもはしゃぐ。
『今日は僕についてきてくれてありがとう、**。残念だけど、ここで時間切れみたいだ。この観覧車もこのまま消えちゃうね』
そのうち追記します。