複雑・ファジー小説
- Re: 夢の中にいられたら ( No.14 )
- 日時: 2016/05/03 14:19
- 名前: 四つ葉 (ID: 4jdelmOD)
私の耳元で誰かが囁く。
聞き覚えのある———聞き馴染んでいる声だ。
「っさいなー。向日葵こそどうせさっきまで寝てたんでしょ?」
私は耳元の声に———日向種こと、向日葵に言った。
「ふっふーん。まゆっちと一緒にされちゃ困るよー。私、結構前からおきてたよー?」
「ほんとー?」
「ほんとだってー!」
向日葵は頬をぷくーっと膨らませた。
ちなみにまゆっちとは、私、松本真弓の事だ。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.15 )
- 日時: 2016/05/03 16:59
- 名前: 四つ葉 (ID: G/Xeytyg)
「あ、まゆっちに言いたい事がー」
何かを思い出したかのように向日葵が改まって正座をし、コホンと咳祓う。
「ん?なに?」
向日葵が私に向かって正座をするだなんて珍しい。
きっと、それほど、よっぽどきちんと伝えておきたい「なにか」なのだろう。
そして私たちの間に少しの間沈黙が流れる。
その沈黙を払うように向日葵が言う。
「あのねっ!」
何かを話そうとした向日葵。
しかし、私たちのいる場所よりも遠い場所で「どーん!」と、テレビでもよくありそうな、爆発音が聞こえた。
「行こう、向日葵!」
反射的に立ち上がる。
何か言いたそうにしながらも、少し暗い表情で向日葵は小さく頷いた。
そして、少し強引に向日葵の手を握り、立ち上がる。
何が言いたかったのか、考えてもまるでと言っていいほど見当がつかないが、今はそんなことよりも爆発音のほうが気になる。
また後で、話の続きは聞くとしよう。
だって、私たちは—————私と向日葵は
——————————いつだって、会えるんだから。
☆☆☆☆☆
「この辺りかな………はぁ、はぁ………」
「そうだと思うけど………はぁ、はぁ………」
随分遠くまで走ってきた。
私達二人は息切れ状態で、はぁはぁ息を切らしながらやっとのことで会話を交わす。
にしても、爆発なんて本当にあったのだろうか………。
気のせいではないのか………。
そう思うくらいに、辺り一面は綺麗な草原に包まれていた。
最初にいた場所から、どれだけ走ってきたのかは定かではない。
ここまで走ってきても、景色一つすら変わっていないから、本当に不思議なものだ。
まぁ、単なる気のせいなのだろう。
景色があまりにも似ているから、変わっていないように見えるだけで。
本当は何処か変化があったりするのだ。
………まぁ、その変化とやらに気づいていないのも事実なのだが。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.16 )
- 日時: 2016/05/03 18:02
- 名前: 四つ葉 (ID: G/Xeytyg)
「あ、あれじゃない?」
向日葵が目を丸くして、一点の場所を指さし、その場所をじっと見つめる。
そこには、何かが—————私の良く見たことのある、何かがいた。
そう、いた。
あったじゃない、いた。
だって、「それ」は—————動いた。
つまり———————————————「生き物」なのだ。
「取り敢えず、行くよ」
静かに言い、向日葵の手を引き、その生き物の場所へといった。
☆☆☆☆☆
「生きてる?」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.17 )
- 日時: 2016/05/03 18:36
- 名前: 四つ葉 (ID: G/Xeytyg)
その「生き物」は、どうやら人だったようで、向日葵は其の人の耳元で「生きてるー?」とか「生きてますかー?」などと連呼しながら、頬をぷにぷにと触っている。
にしても、倒れて気絶してしまっているのか、ただ寝ているだけなのか。
どっちにしろ、大変なのに変わりはないけど………。
とにかく、気絶している(?)のは女の子のようで、少なくとも私よりも年下。
でも、少し大人っぽい雰囲気がある。
制服には「松戸」と書いてあり、赤渕の眼鏡がとてもよく似合っている。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.18 )
- 日時: 2016/05/03 21:02
- 名前: 四つ葉 (ID: ZgzIiRON)
起きないかな。
早く起きてほしい。
そしてさっさと事を済ませ、向日葵と二人だけの時間を過ごしたい。
そんな私の願いが届いたのか否か。
「ん………ここ………は………?」
蚊のような小さな声を上げ、松戸さんが起きる。
此が、私の聞いた、松戸さんの第一声だ。
「おぉー、起きたぁー!」
嬉しそうにニコニコ笑い、向日葵が松戸さんの顔を覗き込む。
「ふぁ………何方………ですか………?」
ポカンとした表情で私達二人を交互に見つめてくる。
そりゃ、初対面ですもん。
「はいはいはーいっ!」
元気良く手を上げ、地面に座っていた松戸さんと視線を合わせる向日葵。
「私の名前は日向種でーすっ!気軽に『ヒナ』って呼んでねーっ」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.19 )
- 日時: 2016/05/03 22:28
- 名前: 四つ葉 (ID: MFhVYAIJ)
明るい声で自己紹介を済ませ、私にも自己紹介を求める。
「えーっと………松本真弓でーす………あ、えっと、松本真弓です、はい。名字でも名前でも、好きなように呼んでね」
私は少し屈んで向日葵の横に並び、松戸さんの顔を覗きにこりと微笑んだ。
「ま、まゆちゃん………って呼んでも、良いですか………?」
遠慮深く、上目遣いに聞いてくる。
と言うかこの上目遣いは無意識なのか………。
だとしたら、女子力100だなこの子。
「うん、好きに呼んで」
出来るだけ優しくそう言う。
すると松戸さんは嬉しそうに顔をくしゃりとして笑い「やったぁ」と小さなガッツポーズをする。
すると、其を見ていた私達二人に気づいたのか、顔を耳まで真っ赤に染め、両手で顔を覆い俯く。
向日葵は嬉しそうに笑って、両手でカメラの形を作り、口で「パシャパシャ」と効果音を出しながら松戸さんを手で作ったカメラで撮る振りをする。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.20 )
- 日時: 2016/05/04 09:37
- 名前: 四つ葉 (ID: .lMBQHMC)
「は………恥ずかしいです………!」
「またまたぁー。パシャパシャ」
はぁ。
にしても、松戸さん、不思議だ。
どうして会ったことも無いのに、私の夢の中に───。
夢?
違う違う。
ここは『現実』だ。
間違えても『夢』じゃない。
何で『夢』だとか思っちゃったんだろう。
変だな私。
「まゆっち、どしたのー?」
私の表情が曇っていたのだろうか、向日葵が心配そうに顔を覗き込む。
「別に、どーもしてないよ」
私はそう言い、自分よりも少し背の小さい向日葵の頭をくしゃくしゃっと撫でる。
そして、松戸さんの方に向き直った。
「えーっと、松戸さん。貴方のお名前は?名字しかわかってなくて………」
ニコリと微笑みかけながらそういった。
名前がわかっていないと、何かと不便だし、この機会に聞いておこうと考えたのだ。
「あわわ………!すみません、言い忘れてて………」
すまなそうに何度もペコリペコリと御辞儀をする。
それから、私と向日葵の方に向き直り、俯きがちに自己紹介を始める。
「まっ………松戸真里夏です………とっ、特技とかもないですが………あっ、足を引っ張らないようにしますので………よっ、宜しくお願いします!」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.21 )
- 日時: 2016/05/04 10:13
- 名前: 四つ葉 (ID: .lMBQHMC)
「じゃあー………まりかっちとまりっち、どっちで呼ばれたいー?」
早速渾名を考えたのか、向日葵が松戸さんに問い掛ける。
松戸さんはしばらく考えて、うーんと唸る。
「………んー………まりっち………がいいです………♪」
渾名をつけられたのが嬉しいのか、さっきよりも口元がニコニコとなっている。
「………真里夏、向日葵、行くよ」
いきなり呼び捨てはやばかったか、しかし嬉しそうな表情を見せた松戸さん───改め真里夏は元気良く「はい!」と返事をして立ち上がり私の後に付いてくる。
向日葵はあわてふためいて立ち上がり、「待ってよー!」と言いながら追い掛けてくる。
少し楽しいかも。
最初は得体の知れない人が私達の時間を引き裂くのに嫌気を感じていたが、其でも今は、真里夏が良い子なのだと分かり、三人で時間を過ごすのも悪くないと感じている。
このまま、こんな、楽しい時間が続けば良いのに。
────永遠に続けば良いのに
───────────────────
「疲れたー!」
「向日葵が走り回るからでしょ」
疲れ果てて地面に腰を降ろす向日葵を見て、飽きれ顔で私がいう。
「わっ………私も疲れました………」
真里夏も地面にゆっくり腰を降ろす。
「真里夏はゆっくり休んで」
「私のときと態度違うしー!」
先程までの疲れはどうしたことか、立ち上がり向き上がる向日葵。
其を気にせずに私は言う。
「にしても、私達は何処に行けば良いんだろう」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.22 )
- 日時: 2016/05/04 22:29
- 名前: 四つ葉 (ID: SrUKMM4y)
此の意見が、多分最もな意見だろう。
「確かに、何処を歩いても景色が変わって無いですね………」
俯き暗い表情でそう呟く真里夏の眼は何処か遠い場所を見るような目をしていた。
「何でそんな難しそーっな話するのーっ!そんな暗い顔しないでって、まりっち!」
向日葵が真里夏の方う向き、ニカッと白い歯を見せて笑う。
其れにつられて真里夏も微笑みを漏らした。
「あっ、あっ、あーっ!」
何かを思い出したように「あ」を連発する向日葵。
そして私の方を向き、何時もより少し低めな、悲しそうな声で「こっちきて」と手招きをした。
「真里夏、直ぐ戻ってくるから少し待ってて」
私はそう言い、そそくさと向日葵の後へとついていった。
───────────────────
「何か用があんの?向日葵」
「うん。とーっても大事な、大切な用事だよ」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.23 )
- 日時: 2016/05/05 02:16
- 名前: 四つ葉 (ID: SrUKMM4y)
こほんと咳払いをし、真剣な表情になる。
私と向日葵の間に緊迫した空気が流れる。
「あのね」
低い声で向日葵がいう。
「早く夢から覚めて、まゆっち」
そう、私に言い放つ。
「夢から?何のこと?」
訳がわからない。
夢から覚めてって。
意味不明。
「言葉の通りだよ」
真顔でいう向日葵。
何処か寂しそうな瞳をして言う。
「此処は夢の世界なの。まゆっちの───まゆっちだけの夢の世界───一生終わらない、空想の世界」
静かにそう告げる向日葵。
何を───言ってるの?
此処が私の夢の世界?
空想の世界?
馬鹿馬鹿しい。
そんなわけないじゃん。
現に、向日葵だってここにいるんだから。
そんな私の思いを悟ったのか、向日葵は悲しい顔で、表情で、声で、語り始めた。
夢の始まりの「物語」を。
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最初に聞いた質問、私も答えるね、今から。
私は『一人』は好きだと、自分でそう思って生きてきた。
でも、多分違う。
いくら私が『一人』が好きでも、心は孤独を感じて一人を拒否する。
だから本能的に───必然的に、一人を避けてしまうのだ。
だから私は───一人は存在しないと思う。
代わりに、『独り』は存在するだろう。
─────私みたいに、ねっ