複雑・ファジー小説
- Re: 夢の中にいられたら ( No.25 )
- 日時: 2016/05/05 10:12
- 名前: 四つ葉 (ID: /48JlrDe)
【第三話 夏の花遠き夢の彼方より】
今私は迷っていた。
とても、とても。
この話しをしなかったら、私とまゆっちはずっーと楽しくいられる。
でも、楽しみを私は今から引き裂きます。
所詮そんな、引き裂かれてしまうような楽しみだったから。
絆だったから。
そんな絆なんて、最初から作らなきゃよかったな………
いや、絆なんてものはこの世に必要ないと思う。
だって、絆が壊れたとき、ショックを受けて傷ついて、悲しくなるのは自分だもん。
だったら、絆なんて要らないと思います、私は。
───────────────────
これは昔々のお話です。
桃太郎だの一寸法師だのこぶじいさんだの、そんな人達がいた時代よりも少し先で、テレビもアナログが廃止され、スマホも出来はじめた頃のお話。
あるところに幼い少女がいました。
少女はいつも独りでした。
いつも孤独でした。
自分が生まれる前に父親がいなくなり、自分が生まれて直ぐに母親もいなくなってしまいました。
だから少女は、人から哀れみを受けて「可哀想」「不敏ね」などと言われ続け、誰にも助けられず、友達と呼べる人はいても影で悪口を言われ、上べだけの友達しかできず、毎日毎日心孤独に生きてきました。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.26 )
- 日時: 2016/05/05 23:34
- 名前: 四つ葉 (ID: hjs3.iQ/)
そんな少女が公園の砂場で遊んでいた時の事です。
「一緒に遊ぼ」
前から突然に降ってきた声に、少女は驚きました。
だって、まさか自分に声を掛けてくる人がいるだなんて、思いもしなかったからです。
少女は嬉しくなり、笑顔で言いました。
「勿論」
それから二人は毎日一緒に遊びました。
今まで一人ではできなかったシーソーも、一人ではつまらなかったブランコも。
二人で楽しく遊びました。
その、声をかけてくれた『少女』は、孤独な『少女』の持っていないものを全て持っていました。
家族も。
友人も。
愛情も。
何もかもを。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.27 )
- 日時: 2016/05/06 06:57
- 名前: 四つ葉 (ID: hjs3.iQ/)
小さい頃から孤独だった少女は、それをそばで見ていて──見せられて、とても息が詰まりました。
そして滔々五月三十日の事。
二人の少女は喧嘩をしました。
今までだって何度も喧嘩をしてきましたが、今回の物は桁違いでした。
其こそ暴力の交わし合いはありませんでしたが、もう心が限界だった少女は逃げました。
「貴女は私の欲しい物全部持ってる」
そんな捨て台詞を残して。
でも、後々少女は後悔しました。
というのも無理はありません。
何故でしょう──私は悪くないのに。
唯、一人で買い物に行ったのが悪かったんでしょうか。
閉鎖された空間。
其の中で私を含めた沢山の方々が──。
最後、死ぬ間際に少女は願いました。
心に、願い、思いました。
「もう一度あの子と遊びたい」
と。
互いの名前さえも知らなかったけれど、それでも互いのことが大好きだったのです。
彼女といるときだけが、孤独を忘れられました。
だから、彼女はそう願い、願い、願い、願い、願い、願い、願い、願い、願いました。
言葉が足りないほど、言葉じゃ足りないほど。
でも、物語に不幸は付き物です。
少女は、彼女と───会ってしまったのです。
最悪の場所で。
───────永遠に終わらない、夢の中で。
彼女が少女に会いたいと願い。
少女も彼女に会いたいと願い。
創られてしまった『幻想』の世界。
最初は嬉しかった少女。
夢の中でのみ、少女は存在できます。
成長し、考え、行動する。
生きたいて時と同じ。
いえ、生きていたときの『孤独』は、もう其処にはありませんでした。
でも、少女は悲しみました。
孤独を捨てても。
友情があっても。
願いが叶っていても。
何故?
少女は自分に問いました。
少女はすぐに気づきます。
彼女が───何もかもを持って、幸せに過ごせるはずの彼女が、自分のせいで夢の中にばかりいるからです。
だから少女は決めました。
この夢の世界を終わらせよう、と。
例え、夢の世界が終われば自分の体がなくなるとしても。
其でも、少女は、彼女に───普通の幸せを持つ彼女に、教えたかったのです。
貴女の人生は夢の中で終わらせたくない、と。
此のまま一生いけば、彼女の時間を無駄にして、幸せを奪ってしまう。
だから、何があっても夢を終わらせようとしました。
「其の少女が、私だよ」
「嘘でしょ───だって向日葵───」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.28 )
- 日時: 2016/05/06 21:28
- 名前: 四つ葉 (ID: Mj3lSPuT)
生きてたじゃん、向日葵。
此所で一緒に会話したり。
此所で一緒に散歩したり。
此所で一緒に────いや、でも───『此処』以外で遊んだ最後の日って───私と向日葵が5歳の頃だ。
じゃあ、やっぱり向日葵は───。
『此処』にしか存在して無いのかな………?
「ねぇ、向日葵」
「何?まゆっち」
何時もとは違う、暗い空気が流れる。
「向日葵は───『孤独な少女』は、どうすれば悲しくなくなるの?心から笑顔になれるの?」
私は向日葵に問う。
私も向日葵も、真剣その者の表情だ。
「孤独は永遠だよ───『孤独な少女』の孤独は永遠だよ。一生終わらない」
向日葵は冷たく言い放つ。
こんな向日葵、今までに見たことが無かった。
「何で?」
私はもう一度問う。
向日葵は一歩、私の方に近づく。
「孤独な少女の孤独が無くなっちゃったら、孤独な少女は孤独じゃなくなっちゃうでしょ?まゆっち。だからだよ」
何処か遠くを見る様な、そんな瞳で向日葵は言った。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.29 )
- 日時: 2016/05/06 21:47
- 名前: 四つ葉 (ID: Mj3lSPuT)
そして向日葵は言う。
「バイバイ、まゆっち。又、何処かで会おうね───って、私死んでるから会えないか」
そう言って私の額に手を当て、目を瞑る。
それから三秒もたたないうちに、周囲がキラキラと光を放ち始め、崩壊が始まる。
「此が私の夢能力。インテジオンディオグラピー───夢意思伝ってところかな」
「能力?」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.30 )
- 日時: 2016/05/06 23:03
- 名前: 四つ葉 (ID: Mj3lSPuT)
ぽかわと、訳の分かっていない私に向日葵が説明を始める。
「能力─正式には、夢能力って言うんだけど、まぁ名前の通り、夢の中でだけ使える、特殊能力なのっ!凄くないっ?!私使えるんだよー!えーっとね、私の能力が、さっき言ったインテジオンディオグラピーって奴で、夢の中で伝えたい思いや意思を、どんな形であれ伝える能力なの。で、私が『永遠に終わらない夢の世界がどれだけ無意味かまゆっちに伝えたい』って願いながら能力を使ったら、この世界が壊れだしたの」
笑顔でそう説明してくれた。
いや、余裕の笑みってやつかな、此が。
夢能力か───私使えるのかな?
まぁ、そんな大層なこと、私にはできっこないよね。
と、こんな余裕を咬ましている私の眼に、衝撃的な物が映る。
「向日葵………足が」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.31 )
- 日時: 2016/05/07 10:30
- 名前: 四つ葉 (ID: 06in9.NX)
向日葵の足が、無かったのだ。
「ん?あぁ、足?無いよ」
平然とした表情で答える向日葵。
その表情のまま、向日葵は私に言う。
「私、まゆっちのこと……本当は大嫌いだから」
そう言って何処かへ歩き出す。
何で………何で大嫌いだなんて言うの………
何で………
「違い……違います……!」
誰かがそう叫ぶ。
その声は──真里夏だった。
小さい声を振り絞って、叫んでいる。
「だって、向日葵ちゃんのお姉さん──日向雛さんが言ってたもん……家でもよく、まゆっちのこと、話してたって………!だから………」
向日葵が振り向く。
その頬には、涙が伝っていた。
その涙を拭き、私たちに顔を見せないように反対がを向く向日葵。
「あー、私にはかっこいいことって、向いてないのかなー?」
何それ………
かっこいいじゃん、向日葵。
「まゆっち、ごめんね。私、本当はまゆっちのこと、大好きだよ………生きていたら、一生友達でいたかったなー」
やめてよ……
向日葵……『生きていたら』なんて………
「だからね、私からまゆっちに最後のお願い」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.32 )
- 日時: 2016/05/07 10:43
- 名前: 四つ葉 (ID: 06in9.NX)
そんなこと言わないでよ………
死亡フラグ立ちまくりじゃん………
そんなことにお構い無しに向日葵は続ける。
「あのね───」
くるっと、後ろを振り向いて、涙の蹟が残った顔で、精一杯の笑顔を作る。
「絶対絶対に、死んじゃダメだからねっ」
そう言うと、向日葵の体は完全に消えてしまった。
「向日葵…向日葵の癖に、何かっこいいこと言ってんのよ……もっと話そうよ、喋ろうよ、遊ぼうよ……ねえってば…」
- Re: 夢の中にいられたら ( No.33 )
- 日時: 2016/05/07 14:21
- 名前: 四つ葉 (ID: hjs3.iQ/)
私は向日葵がいた場所に膝をつき、涙を流す。
周りがガシャガシャと崩れ始め、完全に崩壊に近づいていく。
あぁ、逃げなきゃ………。
真里夏もあたふたとした表情でおろおろしている。
にしても、逃げるって何処に?
此処が夢の中だとしたら、どうやって現実に戻れって言うの?
どうすればいいのよ………。
向日葵、教えてよ………。
そう思えば思うほど、涙が溢れてくる。
「まゆっちっ!」
突然真里夏が叫び、反射的に真里夏の視線の先──私の頭上を見る。
其処には───木が倒れてきていた。
私は悲鳴も何も上げない。
唯、あぁ死ぬんだなと思うだけ。
向日葵が行った場所に、行くんだなと思うだけ。
この世に『私』という存在が無くなるんだと、唯其だけ。
だから、別に『死』に対して恐怖も、拒否感も、まるで無い。
………でも…………
でも、一つだけ………。
後悔があった。
向日葵との最後の約束。
「絶対絶対に、死んじゃダメだからねっ」
そう言った向日葵の言葉が、何度も脳裏を過ぎていく。
御免ね、向日葵。
向日葵が居なくなって早々、約束守れそうに無いよ。
- Re: 夢の中にいられたら ( No.34 )
- 日時: 2016/05/07 14:40
- 名前: 四つ葉 (ID: hjs3.iQ/)
私が木の下敷きになろうとしている。
もう助からないよ………
助かりようがないよ………
そう思ったときだった。
「お前は死ねない」
誰か、真里夏じゃない、別の───男の人が私を抱えて大きくジャンプする。
あぁ、助かったんだ………。
私が木から逃れて最初に思ったのは其唯一つだった。
「向日葵───だったな、お前の友達は」
男の人がそう言う。
この人、向日葵の事知ってんだ。
「そうですけど」
無愛想に答える。
いくら助けてくれたからと言って、知らない人ってことに代わりはないから。
「無愛想だな、お前」
皮肉なのか、否か、男の人はそう言った。
そして地面に着地する。
真里夏は唖然として口を開いている。
みると其の男の人は、云わば私と同い年くらい、せめて1個上くらいに見える容姿をしていた。
「なぁ知ってるか」
唐突に私にいう少年。
「向日葵の花言葉は、私の目はあなただけを見つめるっていうんだそうだ。由来は知らないがな」
「ふーん………」
あなただけを見つめる、か。
じゃあ向日葵も───
私の事を見ていてくれるのだろうか。
「なぁ、お前、行き場所はあるか?」
「衣食住は備わってるけど」
又々無愛想。
ってか、あんたこそ行き場所あんの?って聞きたくなる。
まぁ言わないけど。
「そうか。じゃあ俺と一緒に来ないか?」
私に向けて手を差しのべてくる。
男性にしては色白なほうな肌色だ。
「は?衣食住はあるって言ったよね?矛盾してない?」