複雑・ファジー小説
- Re: 宗祇社 →5/21 オリキャラ募集開始。 ( No.9 )
- 日時: 2016/05/22 11:03
- 名前: ルビー ◆B.1NPYOoRQ (ID: kkPVc8iM)
「ねぇねぇ夜明。宗祇社って他にメンバーどんな人がいるんだい?」
「メンバー? ……強面だけど優しい社長とこの世のすべてを善と美を凝縮した超完璧女神とお人好しに、料理音痴。あ、明日もう1人社長の紹介で新人が来るわけだけど」
「女神!? 美人かい!?」
夜明は指折り数えながら、無涯の質問に答える。
無涯は夜明の「女神」という言葉に目をキラキラ輝かせた。そんな彼に夜明は若干引いた眼で見据えていた。
「当たり前だよ、女神なんだから、女神だよ。それ以上でそれ以上だ」
「会うの楽しみだなぁ」
爛々としながら足取りが軽くなる無涯。夜明は「余計なこと言ったかな」と後悔しつつも、歩みを止めない。
そして歩いて20分ぐらいした一見事務所のような場所−—、つまり、宗祇社のアジトに辿り着いた。
「入って。ここが、宗祇社の事務所」
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「初めまして。私はこの宗祇社の社長、鳳凰堂紅蓮だ。腰を降ろし給え」
入ってすぐに、紅蓮が目に入った。彼は自分の趣味である観葉植物に水をあげていたところだった。紅蓮は無涯を一目で新しく入る人間だと悟り、客人を座らせるためのソファーに案内する。
「ご丁寧にどうもありがとうございます、紅蓮社長」
「紅蓮で構わない」
(社長、相当うれしかったんだなぁ……。新人が入って……)
夜明は、ソファーに座っている紅蓮を見て微笑んだ。見ただけでもわかる。彼はとても喜んでいる。
「新人さん? 夜明、なかなか来ないから心配してたのよ? ちょっとお茶を出すから待っててね」
「はーい! わたし、オレンジジュースがいい!」
「ありがとうお嬢さ……」
パタパタと裏口から出てきたアリア。片手には箒を持っていたことから、掃除をしていたことがわかる。
アリアは柔和な笑みを浮かべながら、3人に飲み物を出そうとする。無涯は顔を少し上げて、アリアに話しかけた瞬間、動きが止まった。
「……如何かしたのかね?」
「め、女神!!」
不思議そうに首を傾げる紅蓮を無視し、無涯は興奮したように叫ぶと、アリアの手を素早く掴み取った。
瞬間移動でも使ったかのようだ。当のアリアは何があったのか胃の一つ理解できていないのか、目を丸くしている。
夜明はその行動の速さに驚いていた。
「は、早い! こんな技術【わざ】を備えているなんて……」
「彼は相当身軽なようだな」
「社長! そんなことよりアリアが危ないよ!!」
無涯の身のこなしにふむふむと感心したように頷く紅蓮。夜明は彼の肩を大きく揺さぶりながら事の重大さを知らしめようとするが、如何せん紅蓮は純粋で天然だ。
こういうことはあまりわからないのだ。
「とても綺麗なお嬢さん……。お名前をお教え願いたい」
「アリアです。あなたは……ファックスで送ってきた無涯郡司君ね?」
「アリアさん! なんて優美な名前なんだ! 名が体を表している! どうでしょう。これもきっと何かの縁。是非僕とお付き合い……」
甘いマスクに甘い声。無涯の容姿と併せればきっと普通の女性は一瞬で恋に落ちるだろう。だが、アリアは女神だ。普段の柔和な笑みで対応している。
だが、そんな無涯の後頭部に冷え切った威圧感が漂い始めていた。
「……アリアの前にわたしと突き合ってよ。……このサーベルでな」
その威圧感の持ち主は夜明。アリアの身の危険に耐え切れなくなったのだろう。サーベルを抜き、今にも斬りかかりそうな勢いだ。
「お〜怖い怖い。冗談じゃないか夜明。只の自己紹介じゃないか」
「どう見ても軟派だったんだけど」
「面白い人ね、無涯君」
「違うよアリア。此奴完全にアリアの貞操狙ってたよ」
「狭いところでサーベルは抜いてはいけない。仕舞給え、夜明」
「……わかったよ」
夜明はアリアと紅蓮の言葉に渋々了承したようにサーベルを鞘に納めた。
「あ、すっかり忘れてた。私、飲み物取ってくるわね!」
「ありがとーアリア……」
アリアはパタパタと台所へ向かう。夜明はスイッチが切れたようにソファーにへたり込んだ。
改めて無涯と紅蓮はソファーに座る。
「さて、話を戻そう。今日から君は宗祇社の一員となるわけだが——……」
「わかってますよ、仕事、全力でやらせていただきます」
「そうか。為らば安心できる。今は私とアリア、そしてここに突っ伏している夜明しかいないが、後程ほかのメンバーに合流できるだろう。その時に名前を教えてもらってほしい」
「了解です」
「あと、それと——……」
思い出したかのように紅蓮は隣で何時の間にか寝てしまった夜明の頭を優しく撫でる。
「……仕事のことなら夜明に聞くと良い。宗祇社の若干ながら古株であり、ここでも最強に近い力の持ち主だ」
「知っています。先ほどの事件でその片鱗を拝見しましたからね」
「其れだけじゃないさ」
「?」
紅蓮は無涯をじっと見つめる。
「それに、夜明はぶっきらぼうだがとても優しい子だ。是非君も頼るといい」
「ええ。勿論そうさせていただきます」
そう言って無涯は微笑を浮かべながら夜明を見た。
外を見ると、夕焼けは消え、すっかり夜となっていた。
(……面白いところになりそうだ)