複雑・ファジー小説

Re: 心を鬼にして ( No.1 )
日時: 2016/06/13 17:17
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

第1話「燃えろ熱血!赤鬼誕生」1

「赤桐!決めろ!」

 飛んでくるボールを俺は受け止め、相手チームのゴールキーパーを睨み付ける。
 俺の視線に気づいた彼はキリッと顔の表情を引き締め、両手を構える。
 なるほど。強そうなキーパーだ。だがな、俺にはそんなこと関係ねぇんだよ!

「うおおおおおお!」

 俺は足を振り上げ、ボールを蹴る。
 ボールは凄まじい回転と共に飛んでいき、そして・・・・・・。

「赤桐、危ない!」

−−−

 どこからか聴こえた声に、俺は我に返る。
 目の前に迫ってきていたボールは、俺の顔面にぶつかる。

「ぐはぁッ・・・・・・」

 俺はのけ反り、ボールは後方に転がっていく。
 ボールの威力がかなり強かったせいで、俺は見事に尻餅をついた。

「いったたた・・・・・・」
「何やってんだよ龍斗。ま、どうせ龍斗のことだから、くだらないこと考えてたんだろうけどな」

 俺の前に立ち呆れた様子で笑うのは、同じ部活でチームメイトの小松 健二だった。
 くだらないことなんかじゃない。そう反論しようとしたが、よく考えればくだらないことだ。
 一年生の俺がレギュラーになって活躍する妄想なんて、他の人からすればくだらない。

「っるせーな!」
「はははっ!ホラ、ボール取ってこーい」
「人を犬みたいに扱うな!」

 俺は反論しつつ、ボールが転がった方向に走っていく。
 どうやらかなり遠くまで転がったらしく、グランド端の草むらまで走っていくことになった。
 その時、そこにはサッカーボールを持って立っている少年の姿があった。
 その少年の顔を見た瞬間、俺はさらに走って近寄った。

「氷空!」
「・・・・・・龍斗」

 氷空は一瞬パッと顔を輝かせたが、すぐにクールな表情になり、ボールを放って歩いてこうとする。
 俺はそのボールを片手で拾いつつ、彼の肩に手を置いた。

「おい、待てって!一回話を・・・・・・」
「どうせ、またサッカーしようぜ、とか言うんだろ?もう何度目だよ。答えは決まってる。嫌だ」
「なんでだよ!お前だって昔は・・・・・・」
「昔は昔。今は今、だ。いつまでもサッカー大好きな人間ばかりだと思うな」
「でも・・・・・・」
「龍斗〜。何やってるんだ〜?早く戻って来いよ〜」

 背後から声がする。流石に、時間を掛けすぎたか。
 チームメイトの声に困惑する俺を見て、氷空はわざとらしくため息を吐いた。

「ホラ、戻りなよ。僕もう帰るし」
「ぐぬぬ・・・・・・俺は、絶対あきらめないからな!」
「あっそう」

 俺の言葉を受け流すように彼は言い、手をヒラヒラと振った。
 なんで・・・・・・こうなっちまったんだよ・・・・・・。

「高校行ったらサッカーしようって・・・・・・言ったじゃんか・・・・・・」

 俺はボールを持つ手に力を入れた。
 とはいえ、このままボーッとしているわけにもいかない。
俺はボールを持って、みんなの元に戻った。