複雑・ファジー小説
- Re: 心を鬼にして ( No.5 )
- 日時: 2016/06/14 16:22
- 名前: 凛太郎 (ID: CzRhDmzb)
第2話「冷静沈着?青鬼誕生」1
「くっそぉ!鬼であんなことができるなんて聞いてねえよ!」
キモンは眉間にしわを寄せながら、近くにあったゴミ箱を蹴飛ばした。
蹴られたゴミ箱は、中に入っていたゴミをまき散らしながら転がり、壁にぶつかる。
怒った様子で肩で息をする金髪の男に、赤い髪の男はあきれた様子でため息をついた。
「情報不足なんて、戦いじゃよくあることじゃないか。そんなことでたかが少年一人に負けるなんて・・・・・・ただの君の力不足だと思うのだけれど?」
「あーはいはい。俺は弱いですよーだ。でも、そんな風に偉そうに注意できるレベルなんですか?クドツさんはよぉ」
「あぁ。すでに次の作戦は立ててある」
クドツと呼ばれた男はにやりと笑い、とある学校の監視カメラの映像を眺めていた。
その映像には、靴を履き替える少年、蒼井 氷空の姿が映っていた。
−−−
「ふっかーつ!」
俺は病院を出て第一声で、そう叫んだ。
それを見た赤鬼のアカトは、俺の頭を軽く叩いた。
「桃太郎一行にばれたらどうするんだアカ!まだ怪我も治ったばかりで、また襲われるかもしれないんだぞ」
「そんなビクビク過ごしてたら人生つまんねーじゃん。嬉しい時も寂しい時も怒った時も、バーッと叫んだ方がスッキリするじゃんか」
「今お前は中の鬼を狙われている身なんだぞ!もっと自覚持てよ!」
アカトはそう言って頬を膨らませた。
そう言われてもなぁ。実感ないっつーか、やっぱりピンとこねーよ。
そんなことを考えていたとき、視界に右手の甲の紋様がチラッと入ってきた。
そういえば、これは一体何なんだろうか?
病院では気にならなかったから、聞き忘れていたんだよね。
「そういやさぁ、俺のこの手の甲の紋様みたいなのって・・・・・・一体何なんだ?健二とかは気にしてなかったっぽいけど」
「あぁ。それは鬼を覚醒できた人にだけ現れる痣みたいなものなのだ。他の人には見えなくて、次からはそこに力を込めれば自由に変身できるのだ」
「へぇ。便利なんだな」
なんとなく気になったから聞いてみたのだが、とりあえずこれが何なのかは分かって良かった。
つまり、この紋様はよくある変身ヒーローの変身道具的なものってことか。
町を歩きながらそんな感じでのんびり雑談したりしながら歩いていた。
家の近くの交差点に差し掛かった時、左側から氷空が出てきた。
「うお!?」
「あっ・・・・・・龍斗・・・・・・」
氷空は呟くように言うと目を逸らし、そのまま立ち去ろうとする。
俺は咄嗟に彼の前に立ちはだかり、両手を伸ばして進行を止める。
そんな俺を見た氷空は、ムッとした表情になる。
「だから何度も言ってるだろ?僕はサッカーはしない」
「せめてその理由が知りたいんだ。なんでサッカーしないのかっていう理由を」
俺の言葉に、氷空は一瞬を目を見開き、すぐに目を逸らす。
「別に・・・・・・なんだっていいだろ?僕がなんでサッカーしないのかなんて」
「よくねぇよ。お前、高校でもサッカーするって、言ってただろ?なんでやらな・・・・・・」
「やりたくてもできないんだよ!
突然放たれた一言に、俺は一瞬固まってしまう。
やりたくても、できない?それって・・・・・・つまり、どういうこと?
固まる俺をよそに、氷空はしばらく視線を彷徨わせた後で、「もういいだろ?どいてくれよ」と俺を押しのけた。
呆然とする俺を除けることは、簡単だっただろう。
俺はコンクリートの地面を見つめたまま、固まっていた。